ストレイ・ラム

Motoki-rhapsodos

第30話

パンパンッと手を打った依羅さんを、松岡は拗ねたような目でジトリと見遣った。

「ひでぇな、依羅さん。なんか気付いてんだろ? 封印されてんのは、鎧武者じゃないのか?」

「いいや。私も鎧武者だと思うよ。でも私の意見より、お前達の意見を聞かせておくれ」

頬杖をついて、「さあ、どうぞ」と手を振る。

「ちぇっ。じゃあ山下。お前はどう思うよ?」

「俺? そう……だな。俺があの話で疑問に思った事と言えば、鎧武者を封印するのにどうしてわざわざ屋敷を取り壊して学園を建てたんだろって事かなぁ。それこそ松岡の言う通り、鎧武者を封印した鏡とそのお宝っていうのをまとめて、祠でも建てた方がそれらしいじゃん」

「だよなぁ? あとあの『大時計』。針じゃなく、灯りが消えただけで大騒ぎになったんだぜ。『時間を刻む』事じゃなく、『灯りを燈す』って事に意味があんのか? どーいうこった?」

唸った松岡の横で、依羅さんが眺めるように俺達を見つめていた。その態度はまさしく、弟子に難題を与えてその悩む姿を見守るお師匠様、という感じだった。

「そういや彼女、あの油絵も曾爺さんが持ち込んだって言ってたな。後、資料室を気に入って使ってたとかって……」

「もしかしたらそれも、『封印』に何か関係あるのかも――」

「おおっ」と松岡はパチンと指を鳴らし、勢い込んだ様子で俺を指差した。――が、そのままで止まり、次の言葉が出てこなかった。それは俺も同様で、俺達にはそれ以上の答えは導き出せそうになかった。

両手を上げて「降参」を表した松岡に、依羅さんは微笑んで「おしいね」と呟いた。

「私もその理事長のお嬢さんの話を聞いた時、お前達と同じ疑問を持ったよ。でも保、やはり知識は必要だ。読書の時間を大切にする事だね。お前と私の大きな違い。それは、知っているか、知らないかという処だ。私はね、保。その魔鏡、それ自体も封印の一部だと思うよ」

「封印の一部? ――その、根拠は?」

「そうだね。私の考えでは鎧武者はその魔鏡にではなく、校舎全体に封印されている。何故なら、封印されてるのにまだ徘徊しているんだろう? 校舎内を。後は、私の知り得る封印の方法に当てはまるから……かな? それを導き出した着目点は、お前と一緒だよ。あの大時計の『針』ではなく『灯り』に封印の力があるという処だ」

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