ストレイ・ラム
第18話
「佐藤はさ、歩道を走っていた筈だよな? なのに何故急に、向きを変えて車道に飛び出したんだ? いくら動揺してたからって、普通に逃げてたら車になんて轢かれないよな?」
「――そう。彼女は自分の行く手に見つけたんだ。それまで自分を追いかけていた筈の人物を」
「え?」
驚いて顔を上げた俺に、依羅さんはチラリと視線を向けた。
「だって、それしか考えられないだろう? 後ろから追いかけて来ている筈の人物が前にいたら、お前達ならどうする? 心理として、後ろから追われていると思い込んでいた彼女が頭を回転させて後ろに逃げるとは考え難い。動揺していただろうしね。後、一人ではなく数人に追われていたという可能性もあるが、目撃証言を考えればね。――兎に角、彼女には前にも後ろにも逃げる場所はなかった。となると、残るは横だ」
「……なるほど。――んで? そん時なんだろうな。綾香に電話したのは」
「そのようだね」
暫く黙ったまま、指でコツコツと肘を叩いていた依羅さんは、チラリと時計を見上げて組んでいた腕をほどいた。
「しかし二人共、今日はもう遅い。明日も学校がある事だし、もうお帰り。――保。明日学園で調べてもらいたい事が少なくとも二つあるんだが、それが何か判ってるだろうね?」
確認するように言った依羅さんに、松岡は「んー」と唸って顔を顰めた。
「一つは判るよ。佐藤の傘だろ? 謎の追跡者が回収してなけりゃ、彼女が逃げ出しただろう場所の近くに落ちてるだろうからさ」
「それは何処?」
「勿論、学園の周りだ。それも、彼女が鎧武者を見た場所を中心に」
「よし。もう一つの方は?」
頭を抱えるようにした松岡が、困ったような表情を浮かべる。
「それが、よく判んねぇ」
「――そう。彼女は自分の行く手に見つけたんだ。それまで自分を追いかけていた筈の人物を」
「え?」
驚いて顔を上げた俺に、依羅さんはチラリと視線を向けた。
「だって、それしか考えられないだろう? 後ろから追いかけて来ている筈の人物が前にいたら、お前達ならどうする? 心理として、後ろから追われていると思い込んでいた彼女が頭を回転させて後ろに逃げるとは考え難い。動揺していただろうしね。後、一人ではなく数人に追われていたという可能性もあるが、目撃証言を考えればね。――兎に角、彼女には前にも後ろにも逃げる場所はなかった。となると、残るは横だ」
「……なるほど。――んで? そん時なんだろうな。綾香に電話したのは」
「そのようだね」
暫く黙ったまま、指でコツコツと肘を叩いていた依羅さんは、チラリと時計を見上げて組んでいた腕をほどいた。
「しかし二人共、今日はもう遅い。明日も学校がある事だし、もうお帰り。――保。明日学園で調べてもらいたい事が少なくとも二つあるんだが、それが何か判ってるだろうね?」
確認するように言った依羅さんに、松岡は「んー」と唸って顔を顰めた。
「一つは判るよ。佐藤の傘だろ? 謎の追跡者が回収してなけりゃ、彼女が逃げ出しただろう場所の近くに落ちてるだろうからさ」
「それは何処?」
「勿論、学園の周りだ。それも、彼女が鎧武者を見た場所を中心に」
「よし。もう一つの方は?」
頭を抱えるようにした松岡が、困ったような表情を浮かべる。
「それが、よく判んねぇ」
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