ストレイ・ラム

Motoki-rhapsodos

第49話

「いくつか方法は考えられるが、よく見慣れている筈のサッカー部員が間違いないと言った点から、『よく似たユニフォームを使った』という可能性は一番に消した。『番号の部分だけを換える』というのも、自転車で追い抜いたのなら一瞬にしろ、近くで見られているから余程上手く作っても違和感ぐらいは感じられた筈だ。――だから、新田の話を聞いた時。俺も依羅さんと同じく、センターフォワードのユニフォームが本物である事は『疑いようがない』と思った。では『武田のユニフォームを拝借した』という可能性ならどうだ? これも新田と武田、二人にバレないようにこんなに頻繁にやるには無理がある」

「じゃあ、どうやって?」

「簡単さ。武田のユニフォームじゃない、『本物』を使えばいいんだ」

「はぁ?」

眉を寄せる俺に、松岡はコーヒーを一口飲んでから、ニヤリと唇の端を上げてみせた。

「何言ってるんだ? 武田しか持ってないんだぜ。本物のユニフォームなんて」

「今はな」

「――……えっ?」

「今は、確かに武田しか持っていないよ。では去年は? 一昨年は? その前のレギュラーのセンターフォワードならどうだ?」

「あっ……」

「持ってるだろう? つまり、そういう事だ」

俺は一瞬にして目の前の靄が晴れた気がした。それと同時に、どうしてこんな簡単な事に気付かなかったのかと、自分が情けなくなる。

「ここまで絞れたら、後は簡単だ。まず俺がしなければいけなかった事は、新田の疑っている通り、サッカー部内に犯人がいるかどうかの確証を得る事。――後ろ姿が武田にそっくりなサッカー部員を見つける事と、そのユニフォームをどうやってそいつが手にいれたのかを調べるという事だったんだ。もしサッカー部員に怪しい奴がいなかったら、次の行動を起こさなくっちゃならないからな」

「じゃあ、あのおばさんにした演技も……」

「そう。寮に住んでるからには、誰かに持ってきてもらうか、送ってもらうかしか手に入れる方法はない筈だ。――全ては小西って先輩を指していたぜ。武田にそっくりな後ろ姿も、亨って兄さんからの宅配伝票もな」

「――あ! だからか、亨さんって名を出したのは」

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