ストレイ・ラム

Motoki-rhapsodos

第36話

「二週間前でしょ? これは三年の若松君、一年の近藤君。三年の瀬戸君に、小西君。二年の有村君に松田君。藤堂君。一年の佐藤君。二週間前から今日まで届いた荷物は、これだけよ」

その伝票を不満げに見ていた松岡は、肩を竦めながら口を尖らせた。

「ホントだ。じゃあ、あの宅配屋がいい加減な事しやがったのかも。ありがと、おばちゃん。後で電話してみる」

クルリとおばさんに背を向けた松岡の顔が、嬉しそうに破顔した。しかしそれも一瞬で消えて、松岡は何事もなかったようにスリッパを擦ってゆっくりと歩き出した。

「何? さっきのあの嘘」

「ああ、演技の練習。サ店では中々出来ないからさ。こーゆう場所でやっとかないとな」

ハハハッと高笑いする松岡に新田と武田が興味深げな目を向けた。

「演技の練習? 俳優か何か目指してんの?」

「いいや。俺が目指してんのは、依羅さんだぜ」

「依羅さん? ああ、昨日のマスターか!」

「え? 誰?」

「彼がバイトしてる喫茶店のマスターなんだけどさ。すごいんだ――」

少し興奮気味の新田が、昨日の依羅さんの話を武田に始めた。

「なんで練習なんかする必要があるんだ?」

前を歩く二人の後ろ姿を眺めていた松岡は、俺をチラリと見遣ると低く声を出した。

「勿論。一番いい結果を出す為だ」




          

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