ストレイ・ラム
第26話
そこで言葉を切った新田は、コーヒーを口へと運んだ。そのカップにコーヒーを足してくれた依羅さんに、頭を下げる。
「ありがとうございます。それでその内、俺達気付いたんです。この二週間の内に、『ドッペルゲンガー』が近付いて来てるって事に。――最初は、映画館。続いて駅のホーム。そして商店街脇の道路。俺達が聞いた話だけでも、段々と武田本人に近付いて来ています。そして遂に昨日。昨日は寮の窓に目撃されたんです。
あいつはまだグラウンドの整備をやってる筈の時間帯で、寮になんかいる筈ないんです。それを見たのはサッカー部の先輩達だったんですけど、すぐに走ってグラウンドに戻ってみたら当然あいつはグラウンドの整備をしていて。その場にずっといた事は、他の一年の部員が証言しています。さすがに昨日のは大騒ぎになって、本人もかなりショックをうけています」
その話を黙って聞いていた依羅さんが、一呼吸置いてから口を開いた。
「その何人かいる目撃者っていうのは、全員サッカー部員?」
「いえ、色々です。でも駅のプラットホームで見たってのは、二人共サッカー部員でした」
「目撃した人達はどんな状況だったか知ってる?」
「直接聞いたのは、あまりいないんですけど。映画館で見たっていう先輩は、映画館ですれ違ったって言ってました。『おい武田』って振り返って声をかけたそうなんですけど、相手は振り返りもせずに行ってしまったそうです。駅のプラットホームで見たって先輩達は、線路の向こう側にこちらに背を向けて立ってるのを見たとかで、特急電車が通過している間に消えていたそうです。道路で見かけたっていう一年の生徒の話では、自転車で追い抜いて行ったって言ってました。あと何人か見た生徒もいるようなんですけど、今学校でもすごい噂になってて、誰が見たのかははっきり判りません」
「今更だけど、他の人と見間違えたって事はない?」
「……それが、絶対にあり得ないんです」
「え?」
依羅さん以外の三人が、新田のこの確信を持った言い方に驚きの声をあげた。俺達を見回した新田が、真剣な面持ちで続ける。
「だって、あいつしか持っていない筈の、試合用のユニフォームを着ていたんですから」
「……――どういう事?」
少し低い声を出した依羅さんは、鋭い視線を真っ直ぐに新田に向けた。
「ありがとうございます。それでその内、俺達気付いたんです。この二週間の内に、『ドッペルゲンガー』が近付いて来てるって事に。――最初は、映画館。続いて駅のホーム。そして商店街脇の道路。俺達が聞いた話だけでも、段々と武田本人に近付いて来ています。そして遂に昨日。昨日は寮の窓に目撃されたんです。
あいつはまだグラウンドの整備をやってる筈の時間帯で、寮になんかいる筈ないんです。それを見たのはサッカー部の先輩達だったんですけど、すぐに走ってグラウンドに戻ってみたら当然あいつはグラウンドの整備をしていて。その場にずっといた事は、他の一年の部員が証言しています。さすがに昨日のは大騒ぎになって、本人もかなりショックをうけています」
その話を黙って聞いていた依羅さんが、一呼吸置いてから口を開いた。
「その何人かいる目撃者っていうのは、全員サッカー部員?」
「いえ、色々です。でも駅のプラットホームで見たってのは、二人共サッカー部員でした」
「目撃した人達はどんな状況だったか知ってる?」
「直接聞いたのは、あまりいないんですけど。映画館で見たっていう先輩は、映画館ですれ違ったって言ってました。『おい武田』って振り返って声をかけたそうなんですけど、相手は振り返りもせずに行ってしまったそうです。駅のプラットホームで見たって先輩達は、線路の向こう側にこちらに背を向けて立ってるのを見たとかで、特急電車が通過している間に消えていたそうです。道路で見かけたっていう一年の生徒の話では、自転車で追い抜いて行ったって言ってました。あと何人か見た生徒もいるようなんですけど、今学校でもすごい噂になってて、誰が見たのかははっきり判りません」
「今更だけど、他の人と見間違えたって事はない?」
「……それが、絶対にあり得ないんです」
「え?」
依羅さん以外の三人が、新田のこの確信を持った言い方に驚きの声をあげた。俺達を見回した新田が、真剣な面持ちで続ける。
「だって、あいつしか持っていない筈の、試合用のユニフォームを着ていたんですから」
「……――どういう事?」
少し低い声を出した依羅さんは、鋭い視線を真っ直ぐに新田に向けた。
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