日常【BL】

Motoki-rhapsodos

心も知らず 12

早く歩きたいのに、隣を歩く祐志は窓の外を見遣りながらのんびりと足を進めている。

試しに早く歩いてみても、祐志がペースを変えないもんだから、結局は足を止めて待つ事になった。

しばらくは歩調を合わせて歩いていたが、我慢出来なくなって、俺は祐志に言った。

「なんで、そんなゆっくりなんだよ!」

へ? という顔で祐志がこちらを振り返る。

「ああ。――いや、こんな遅くまで学校残ってるなんて、中学ん時じゃ考えらんなかったと思ってさ」

「思い出してたんだ、中学ん時のコト」

先程のイラ立ちが甦る。何に不機嫌になってんのかなんて、自分でも判りゃしない。

「ん。まあ」

そう言って歩くスピードを上げた祐志は、突然クスクスと笑いだした。

「それともう1コ」

「なんだよ」

「お前がさっき言ってた、俺等が初めてしゃべった時の事も、思い出してた」

「え?」

驚いて足を止めた俺に、祐志が振り返る。

「偶然だな。お前が美術部入るって決めた日、俺も入ろうって決めた日だったんだ」

「えっ。それって」

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