キミと紡ぐ【BL編】

Motoki-rhapsodos

第1話


「もうすぐバレンタインか……」

屋上の金網にもたれた俺は、青空の下でひとり呟く。

――んで、それが終わったら卒業式で。

『あの人』も、もうすぐ居なくなる。

「つまんねぇのー」

膝に顔を埋めて、吐き出した。

「バレンタインが何だって?」

驚いて、顔を上げる。

俺の屋上でのサボり仲間。里見敬先輩が、俺を覗き込んでいた。

「ビッ…くり、したぁ……。いつから居たんスか」

「何だ? 恋ワズライか?」

言って、揶揄うように笑うサマが何だかムカつく。

「そうッスよ。だから何?」

反抗的に睨み返すと、「べっつにぃー」と俺の隣に腰を下ろした。

「ちょっとナマイキーって思っただけ」

フェンスにもたれながら頭の後ろで手を組むと、「それで?」と促す。

「何がッスか」

「バレンタインの話だろ? もらえそうなのか?」

「皆無」

端的な俺の返事に、先輩が「アッハ」と笑った。

ゴロンと寝転んで、俺の膝に頭を乗せてくる。

「フランス人みたいに、お前から贈れば? チョコレート」

瞼を閉じたままの先輩が、ぼんやりと言う。

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