遠未来でアラサー女剣士の弟子になりました

藤 夏燦

暗殺部隊

 ザイガードはシャドゥーとデスを連れて、ダゴヤの外れにあるクラブを訪れた。賞金稼ぎがよく集まるこのクラブに古くからの知人がいた。ザイガードはその男を暗殺部隊に引き入れようと考えたのだ。クラブの受付に顔を出すと、すぐにオーナーが出てきてVIPルームに案内された。


「ザイガード様、お久しぶりです。今日はいかがされましたか?」
「ゲルラ・メロクに会いたい」


 禿げた頭の中年オーナーはその名を聞いて寂しそうな顔をした。


「申し訳ございません。ゲルラはもう何か月も行方不明でして。代わりの者なら手配できます」
「行方不明だと? 残念だ。奴には地獄樹海創設時に随分と世話になったが」


 ザイガードはゲルラが死んでいるだろうと確信した。殺人衝動のある男が何日も姿を隠せるわけがない。


「で、代わりの者とは?」
「影の王とアルトという賞金稼ぎです。ご存知ないですか?」
「いや」
「まあまだ名前は売れてないかもしれませんが、腕は一流ですよ」
「会わせろ」


 ザイガードは語気を強めて言った。ゲルラ以下の雑魚ならオーナーもろとも殺してやる。
 しばらくすると二人のロボットが入ってきた。一人は頭から触手を生やした人間型のロボット。そしてもう一人は宙に浮いた一つ目のロボットだった。


「俺はアルト。こいつは影の王」


 触手のロボットが言った。


「どんな野郎が来るかと思ったらヒョロヒョロじゃねーか」


後ろにいたデスが笑いながら二人を馬鹿にした。確かにシャドゥーやデスと比べると二人は少々小柄だ。


「黙ってろ、デス」


ザイガードがデスを咎めた瞬間、影の王の姿が一瞬で消え去った。


「また殺しすぎちまう……」


そう声がした。影の王はデスの背後に音もなく立っていた。と同時にデス、シャドゥー、アルトが刀の鞘に手を付けた。誰かが動けば皆一斉に剣を抜く。まさに一触即発だ。


「ほう。少しはやるらしいな」


 そんな事態にもザイガードは冷静だった。


「俺たちに何の用だ?」


 前に立つアルトが言った。


「邪気の王様からの勅命で、ある男の暗殺を頼みたい。報酬は多く出す」
「誰だそいつは?」


 影の王は身動き一つできないデスの背後で言った。


「機械皇帝、カルナだ」


ザイガードの回答に影の王は続けた。


「断る。弱い奴をこっそり殺すのは好きじゃない」
「俺たちは強い奴と戦いたい。それだけだ」


とアルトが付け加えた。


「強い奴と戦いたいのか。その機会はあるぞ。しばらくは皇帝の信頼を得るため皇帝軍で戦ってもらう。共存軍の奴らとも戦える」
「南方戦線にも行けるか?」
「ああ」


影の王は声もなく笑った。


「それなら引き受けてやる」


そしてデスの背後から消え去り、アルトの横に戻ってきた。


(こいつ足がないせいか気配すら感じねえ。危うく殺されるところだった)


デスは鞘から手を離すと心でそう呟いた。額のお札に汗が滲む。


「南方戦線で殺し損ねた女がいてな。また戦場に戻れるなら大歓迎だ」
「では決まりだな」


ザイガードは静かにそういうと立ち上がって4人を回し見た。忠実な神官シャドゥー。残忍な修行僧のデス。そして影の王とアルト。素晴らしいメンバーが出揃った。これなら邪気の王様もお喜びになるだろう。さて地獄樹海へ戻るとしよう――。



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