遠未来でアラサー女剣士の弟子になりました
別れの時
――機械皇帝カルナの部屋――
皇帝の母艦≪クッスエ≫では機械皇帝カルナと二人の側近が戦争の近況について話していた。
「皇帝陛下。共存軍の宇宙艦隊を大気圏で撃破しました」
「よくやったぞ、コザラ総督」
皇帝はにっこり微笑んで部下の健闘を称えた。コザラ提督は短く切った黒髪に凛々しい顔の人間の男性だ。もう一人の側近、ウイング総督は気まずそうな顔をした。
「南方戦線はどうだ? ウイング総督」
「皇帝陛下、大変申し上げにくいのですが」
「なんだ?」
「その……我々の軍が全滅しました」
ウイングは顔を青くして言った。茶髪の長髪にこけた頬のウイングは狡猾な男で、部下をうまく利用して今の地位を築き上げた。しかし戦術には疎く、戦争では敗走してばかりだった。
「コザラ提督に例を言うんだなウイング。しかし次、失敗したらどうなるか分かっているな」
「はは」
「報告は終わりか? では下がれ」
コザラ提督とウイング総督と頭を下げて皇帝の部屋を後にした。皇帝軍はロボット優位の世界を作ることを目的としている。しかし人間の軍人も多く在籍していた。彼らの多くが既存の世界に不満を持つ若者たちだった。
「人間も時には役に立つ。使える駒は使わないとな」
皇帝は不気味に笑った。
☆☆☆
――ダゴヤ・共存軍作戦司令部――
ゴツマがお祭り騒ぎの一方で、ダゴヤの共存軍司令部は沈んでいた。薄暗く広い司令部のホールで、先日の戦いで犠牲になった隊員たちの葬儀が執り行われていたのだ。アロスは参列の席で下を向いて座っていた。
「勇敢な戦士たちだった。安らかに」
メコ将軍が代表して弔辞を述べる。その間、アロスは顔をあげることができなかった。自分の慢心が部下を死なせた。その重い責任が体に圧し掛かる。静かなホールの中に誰かのすすり泣く声が響く。家族を失った者。恋人を失った者。多くの悲しみが会場を包んでいた。
しばらくして雨が降り出した。葬儀が終わっても、アロスは席を立てなかった。下を向いたままどれくらいの時間が経っただろうか。気づくと彼以外誰もいなくなっていた。
「アロス。まだいたのか」
心配したメコ将軍が戻ってきた。乾いた声がホールに響く。
「アロス、君の部下たちはよく戦った。もちろん君もだ。君に責任はない」
「……俺はあいつらを、あいつらは俺を信じていました。俺たちは一心同体だったんです。死ぬのならまず俺が死ぬべきでした」
「何を言うんだアロス。君が生きてくれただけで十分だ。少し休むといい。君はひどく疲れている」
「……もういいんです」
そう言うとアロスは立ち上がった。
「除隊させてください」
静まり返ったホールで、アロスの嗚咽だけが聞こえる。メコ将軍もう何もいえなかった。アロスは将軍の返事を待つことなく、そのままホールを後にした。
「今まで、ありがとうございました」
メコ将軍はその言葉を返すこともアロスを見ることもなかった。
皇帝の母艦≪クッスエ≫では機械皇帝カルナと二人の側近が戦争の近況について話していた。
「皇帝陛下。共存軍の宇宙艦隊を大気圏で撃破しました」
「よくやったぞ、コザラ総督」
皇帝はにっこり微笑んで部下の健闘を称えた。コザラ提督は短く切った黒髪に凛々しい顔の人間の男性だ。もう一人の側近、ウイング総督は気まずそうな顔をした。
「南方戦線はどうだ? ウイング総督」
「皇帝陛下、大変申し上げにくいのですが」
「なんだ?」
「その……我々の軍が全滅しました」
ウイングは顔を青くして言った。茶髪の長髪にこけた頬のウイングは狡猾な男で、部下をうまく利用して今の地位を築き上げた。しかし戦術には疎く、戦争では敗走してばかりだった。
「コザラ提督に例を言うんだなウイング。しかし次、失敗したらどうなるか分かっているな」
「はは」
「報告は終わりか? では下がれ」
コザラ提督とウイング総督と頭を下げて皇帝の部屋を後にした。皇帝軍はロボット優位の世界を作ることを目的としている。しかし人間の軍人も多く在籍していた。彼らの多くが既存の世界に不満を持つ若者たちだった。
「人間も時には役に立つ。使える駒は使わないとな」
皇帝は不気味に笑った。
☆☆☆
――ダゴヤ・共存軍作戦司令部――
ゴツマがお祭り騒ぎの一方で、ダゴヤの共存軍司令部は沈んでいた。薄暗く広い司令部のホールで、先日の戦いで犠牲になった隊員たちの葬儀が執り行われていたのだ。アロスは参列の席で下を向いて座っていた。
「勇敢な戦士たちだった。安らかに」
メコ将軍が代表して弔辞を述べる。その間、アロスは顔をあげることができなかった。自分の慢心が部下を死なせた。その重い責任が体に圧し掛かる。静かなホールの中に誰かのすすり泣く声が響く。家族を失った者。恋人を失った者。多くの悲しみが会場を包んでいた。
しばらくして雨が降り出した。葬儀が終わっても、アロスは席を立てなかった。下を向いたままどれくらいの時間が経っただろうか。気づくと彼以外誰もいなくなっていた。
「アロス。まだいたのか」
心配したメコ将軍が戻ってきた。乾いた声がホールに響く。
「アロス、君の部下たちはよく戦った。もちろん君もだ。君に責任はない」
「……俺はあいつらを、あいつらは俺を信じていました。俺たちは一心同体だったんです。死ぬのならまず俺が死ぬべきでした」
「何を言うんだアロス。君が生きてくれただけで十分だ。少し休むといい。君はひどく疲れている」
「……もういいんです」
そう言うとアロスは立ち上がった。
「除隊させてください」
静まり返ったホールで、アロスの嗚咽だけが聞こえる。メコ将軍もう何もいえなかった。アロスは将軍の返事を待つことなく、そのままホールを後にした。
「今まで、ありがとうございました」
メコ将軍はその言葉を返すこともアロスを見ることもなかった。
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