遠未来でアラサー女剣士の弟子になりました

藤 夏燦

サンガオー

「さあ、行くぜ!」


 レッドはサンガオーに向かって斬りかかる。


「遅いな」


 サンガオーはぎりぎりでかわすと、反撃の姿勢に入る。しかし剣をかわしたにも関わらず、彼の体に切り傷が入る。


「なにぃ?!」


レッドは自慢の剣を構え笑った。


「風の刃は、二度斬る!」


 サンガオーは胸から血を流しながら、魔法使いの箒を剣のように構える。


「なるほど、そういうことか」


 レッドの愛刀≪風の刃≫ 刀の周りを強い風が吹くことにより二重攻撃ができる。思ったよりも大した剣じゃないなとサンガオーは思った。二重攻撃になるなら二度受け止めればいい。


「では俺も始めるかな」


 サンガオーは箒を天に掲げると


「青い玉!」


と叫んだ。次の瞬間、先ほどの青い球が箒の先から現れ、レッド目掛けてとんできた。


「それはさっき見させてもらった。もう通用しない」


 レッドは青い玉を交わしながらサンガオーへ近づく。


「ではこれはどうだ。青い雨」
「何?!」


 サンガオーの箒の先にあった青い玉がまるで雨雲のように広がると、こんどは光の雨のようにレッドに襲い掛かった。


(これは避けきれない!)


 青い光はレッドの体に当たり、彼は瓦礫の床に飛ばされた。


「うっ、ぐう」
「今度は俺様の番だ。黄色い光の束!」


 そう叫んで箒を掲げたサンガオーから、黄色い光の槍が飛び出しレッドを襲った。レッドはなんとかよけようとしたが、背中に光の槍が突き刺さった。


「ああああっ」


 レッドはあまりの痛さに悲鳴を上げた。


(こいつは、強い……)


 レッドは赤い刃で槍を振り払うと、剣を構えて立ち上がった。背中から流れた血が瓦礫に染みる。


「いやいや、よくやってくれたよ。だがお前じゃ勝てない。もう勝負はついた。死ぬまで遊んでやろう」


 そういうとサンガオーの箒の先端が魔法でナイフに変わった。レッドはめげずに斬りかかったがやすやすとサンガオーに跳ね返されてしまった。瓦礫に倒れこみ、背中が痛む。


「はっはっはっはっは。俺様に逆らうからだ」


 レッドの鼻には血の匂いが、耳にはサンガオーを高笑いは届く。


(ちくしょう。僕の実力はこんなもんかよ)


「もうくたばったのか。つまらないなあ」


 悔しさが滲むレッドの瞳にホージロやシャクー、スケリドやゴツマの商人の顔が浮かんだ。そうだ。まだ負けられない。待っている人々のためにも、こんなところで負けるわけにはいかないんだ。


「まだだ……」


 小さくうめくレッドにサンガオーは箒を構えた。


「終わりだよ」
「うおおおおおおお」


 レッドは最後の力を振り絞ると、風の力を受けてバク転しサンガオーの顔を蹴り飛ばした。


「まだそんな力が、うぉっ」


 さらにひるんだサンガオーの腹を蹴ると、再び必殺技の構えを見せる。


「まっ、待て。は、早まるな」


 鼻血を出すサンガオーをよそにレッドの周りに風が集まる。


「赤竜巻斬り!!」
「ぎゃあああああああああ」


サンガオーの断末魔は彼の体が半分に斬れたあとも続き、風にあおられた死体は崖の下に落ちていった。
 その姿を見てから、レッドは胸を撫でおろした。


「魔法使い、強い相手だった」


☆☆☆


 サンガオーのアジト跡。崖の下では不気味な影が動いていた。


「よくも俺様を一度殺してくれたな。もうここにはいられなくなった。また会おう風の刃の剣士とやらよ……」



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