一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

メジャーデビューへ 8

〈奏太side〉

エレベーターの扉が開くと同時に聞こえてきた来蘭の歌声に、もう身体は勝手に走り出していた。
歌声の漏れ聞こえる部屋に、無我夢中で駆け込んだ。
来蘭の姿しか目に入らなかった...もうそれしか、それだけしか見えなかった。
ギターを奪い、膝を着き、抱きしめた。

「良かった...無事で良かった...」

「そうちゃん...ごめんなさい...声が出なくなって、怖くなってわたし...」

「ばか...謝るな...来蘭1人にいろんな重圧を背負わせてしまった俺たちがいけないんだから」

来蘭の頭に手を置き、髪を撫でる。


「なんだよー!せっかく来蘭ねーちゃんの歌聞いてたのによー!じゃますんなよーもー」

なんかちっちぇー吉井先輩みたいなガキが、ブーブー文句言ってる...

「こらっ!和人!まったくもぅ...
あの...今、来蘭ちゃんが歌ってくれた曲ってもしかして『Re Light』ってバンドの曲じゃ...
最近SNSで仲良くなった子がRe Lightのこと大好きで、少し聞かせてくれた曲に似ていたような...」

そう話す女の子の背後から優輝が
「いかにも!今来蘭ちゃんが歌ったのは、僕ら『Re Light』の曲だよ!」 

「僕ら?」

「ボーカルの来蘭、ギターの陽介、ベースの加奈、ドラムの奏太、そして僕がキーボードの優輝。」

優輝が順番に紹介をすると

「えっ?! 今目の前に『Re Light』のメンバー全員が居るってこと?」

驚く彼女に向かって全員で頷いた。

「信じられない...」


「私...来蘭ちゃんの歌、すき...
来蘭ちゃんがすき...」

パジャマの裾から義足を覗かせる女の子が、来蘭に歩み寄り呟いた。

「来蘭ねーちゃんは、オレのなのっ!」
チビ吉井がどさくさに紛れて、来蘭のおっぱいに顔をうずめる...

「うぉいっっ!!なにやってんだよっ!!そんなこと俺だってしたことねーのにっ!!」

来蘭は苦笑いしながら、おっぱいにぐりぐりしてるチビ吉井をよしよししてる...

「和人ずるい...私も来蘭ちゃんのおっぱいもふもふしたい」
義足の女の子がむくれてる。

「はい、ほら芽衣ちゃんもおいで」

来蘭はそう言って右側のおっぱいに迎え入れ、左側にはチビ吉井を抱いてやった。

「うわ...あんなんパラダイスじゃん...」
思わず呟いた陽介の後頭部を叩く。

「痛って」

「生乳の迫力なんかあんなもんじゃないよね?青木?」

「あんなもんじゃないよ!っておい!加奈!見た事あんのかよ!」

「あるに決まってんじゃん、一緒に住んでる女同士なんだから」

と言って、不敵な笑みを浮かべた。

「来蘭ちゃんって子はほんとに、老若男女を虜にさせちゃうよなぁ...あの魅力に堕ちないヤツは居ないもんなぁ...本人全く自覚ないけど...」
と言う優輝に

「優輝さんも来蘭ちゃんに?」
と聞く一番お姉さんの女の子

「ん?僕?もちろん堕ちたよ、あの歌声にね...
僕があの歌声を見つけたんだ...だから来蘭ちゃんを『歌姫』に導くのは僕の使命なんだよ...」

と言って来蘭を見る横顔を、隣で刹那に見つめる女の子の視線には、優輝はまだ気が付かずにいた...

「Re Lightのライブ、いつか見に行ってみたいなぁ...」
と言う女の子に、始めて視線を向けて優輝は

「おいでよ!えっと...君の名前は...」

「あたしは由香。行ってみたいけど...まだこれから抗がん剤の治療があるの...白血病なんだ、あたし」

「.....よし、わかった、僕らがこれからやるライブには、必ず由香ちゃんの席を用意しておくから!由香ちゃんが病気を克服したら、必ず見においで!僕たち待ってるから!」

「ほんとに?あたしの席を?」

「ああ!いつ来たっていいようにしとく!だから治療がんばれ、由香」

由香と言われた彼女の頬が、ほんのりと桜色に染まった。

優輝と由香ちゃんの間に生まれた恋を、僕らは微笑ましく見守っていた...

コメント

  • 来亜子

    ありがとうね、読んでくれてありがとうね.˚‧º·(´ฅдฅ`)‧º·˚.

    1
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