一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

メジャーデビューへ 3

〈来蘭side〉

「来蘭ー?あたし今日日直だからもう出るよー?戸締り頼むねー!」

バタバタと加奈は出掛けて行った。


昨日の歌録りは最悪だった...
録り直しすればするほど声は出なくなっていった...昨日のうちに録り終わるはずだった曲は、翌日に持ち越しになって夜中にやっと終わった。

家に着くと、加奈はもう眠っていた。
音を立てないように気を使いながら、バスルームの扉を閉めた。
洗面台の鏡に映るのは、目の下にクマができて酷い顔をしたわたしだった。

シャワーを浴びながら、今日録り終わらなかった曲を声に出してみる...

「......」

え?

もう一度...

「......」

声が...出ない...

(「加奈!」)
(「助けて!」)

ただ空気だけが漏れて言葉にならない...

これは声が枯れたとかではない...

どうしよう...

シャワーに打たれながら泣いても、泣く声すら出ない...

翌朝わたしは、レコーディングスタジオへは11時の予定だったから、先に学校へと出掛ける加奈の様子をベッドの中で伺いながら、まだ寝てるフリをしていた。加奈が出掛けてしまってから、重い身体を起こした。

声を出してみる...

やはり声は出ない...

10時にはマネージャーさんが迎えに来てしまう...
その前に逃げないと!

だけど逃げるってどこへ...



「一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く