一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

メジャーデビューへ

〈奏太side〉

それぞれ瀬名さんが用意したアーティストにびしびしとしごかれる毎日は続いていた。
個々の演奏力、歌唱力はめきめきと上がり、ライブもかなりの本数をこなして来ていて、だいぶライブ慣れして来ていた。

蓮も瀬名さんの計らいで、知り合いのフォトグラファーに付いて勉強させてもらいながら付き人として仕事をさせてもらうようになっていた。
『Re Light』のライブの時は蓮がすべて撮り、Webの伊集院がSNSに上げ、躍動感溢れるフォトが話題になっている。

『Re Light』は未だデビューはせず、ライブハウス『LA.LA.LA.』でのライブを続けていたが、そのキャパはせいぜい250人で、チケットはプラチナチケット化してきていて、『Re Light』のライブの日は、チケットを手に出来なかったファンたちで溢れるようになり、もうこのキャパのハコではどうにもならなくなってきていた。

それでも尚デビューせずにいたのは、ただひとつ〈普通の高校生活を送りたい〉ということだけだったのだが...それも難しくなりつつあった...

俺たちの学校がファンに特定され、登下校時の校門で「入り待ち」「出待ち」するファンが来るようになってしまい、裏門から帰ったり、変装したり、自転車で駆け抜けたり、それぞれ毎日頭を悩ませた。


「そろそろもう限界じゃないか?」
優輝がこぼす

「メジャーデビューをして、マネジメントのこととかは瀬名さんを始めとしたコロラドミュージックの人に任せて、ライブのハコもデカくしてかないとまずいよ、チケット高額転売とか出始めてるたいだし...」
と陽介

「あたしはとにかく来蘭がまた危ない目に合うことが無いようにして欲しい...このままじゃ来蘭を守りきれない...」
加奈が来蘭の右手を握りながら言う。

「来蘭はどう思う?」
まだ意見を述べない来蘭を促した。

「わたしは...
寂しいとか、悲しいとか、そうやって苦しんでいる人をわたしたちの音楽で救いたいって思って歌い始めたのに、今の状況だとせっかくわたしたちの音楽を好きになってくれた人同士がいがみ合ったりしてしまってる...それが悲しい...
メジャーデビューすることで、みんなが幸せになるんなら、そうすることがいいのかなって思う」

来蘭は今朝、校門で入り待ちをしていたファンたちが、小競り合いをしていたのを目にしてしまって、心を痛めていた。

「よし、わかった。瀬名さんにメジャーデビューに向けて動いてもらおう」

「瀬名さんにコンタクト取るよ」
と優輝

「おぅ、頼むな優輝!」


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