一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

文化祭 14

機材の搬入作業がひと段落し、あの頃を思い出しながら、文化祭で賑わう校舎内を歩いていた。

タピオカミルクティーとか、飲んだことねーけど飲んじゃおっかなーなんて呟きながら歩いてると、人混みの中に見覚えのある後ろ姿を見つけた…気が付くと俺は必死になってその後ろ姿を追いかけていた。
追いかけても、追いかけても、なかなか距離は縮まらない…
廊下の突き当たりを曲がってしまう所で、たまらずに俺は名を呼んだ。

「咲!」

走って追いかけ角を曲ると、もう咲の姿はなかった…

いや…咲なわけないよな…
ってかここどこよ?
完全に迷子だ…

「ねえ君?」
メイド服を着た子に声を掛けた。

「はい、なんですか?」
振り返った彼女に、息が止まりそうになった。
咲にとても似ている子だったのだ…

体育館への行き方を聞いて、彼女にお礼を言い、体育館に向かって歩いていた…
なんだ?ここは…パラレルワールドか?
んなわけないか…

ステージの音響の方も、もうリハーサルを待つのみとなっていた。

控え室へと向かう。
優輝くん以外のメンバーと会うのは、やっとだな。

音楽室の防音扉を開ける。
あ…さっきの咲に似たメイド服の子…
まさかこの子が来蘭ちゃん?






開場となり、客が次々と入って来て、フロアを埋め始めた。

「なぁ山ちゃん…前に飲みながら話した、亡くなってしまった俺の初恋の子の話し覚えてるか?…」

「あぁ…もちろん覚えてるよ…」

「咲に似てるんだよなぁ…来蘭ちゃん…不思議なことってあるんだなぁ…」

「咲ちゃんが、導いてくれたのかもしれないね…『縁』というものは繋がっているんだよ瀬名ちゃん」

「そうかもしれないな…よし!本番頼むよ?山ちゃん!」


気がつけば、フロアに入り切らない程の客が入り口付近に溢れていた。
生配信の方も、すごいアクセスだ!

さぁ本番だ!!


『Re Light』のステージパフォーマンスは、凄まじかった…
生配信は、アクセス集中でサーバーダウンしたと、Webスタッフが騒いでる…

一度照明が落ちる。
来蘭ちゃんの弾き語りを見るためにフロアに出た。

学生に紛れてステージに見入る背の高い男…
「紫音?…」

「瀬名?…」

2人で並んで来蘭ちゃんの弾き語りを聞いた。
いい歳したオッサン2人して、嗚咽するほどに泣いた…

そうか、咲…そうゆうことか…
想い残して逝ったんだもんな…
俺たちをまた繋げたかったんだな…
そして、俺たちが果たせなかった夢を、あの子に託したかったんだな…



ライブの終わった体育館の隅に、紫音と2人で座っていた。
「お前が理学療法士になれたなんて奇跡だな。お前一番バカだったじゃん」

「うるせーよ!」

「そうか…やっぱりあのギターは紫音のだったか…あのGibsonのビンテージギターに見覚えがあったんだよな…」

「お前に殴られた時にぶっ飛んで、あのギターに突っ込んでな、すごい傷が付いたんだよあのギター」

「知るかよ!」

学生の時みたいに、紫音と掛け合いの会話をして、あの頃みたいに笑った。

「咲、喜んでそうだな…」
と俺が言うと

「その辺に居て、一緒に笑ってんじゃないか?」 
って、紫音は笑った。

「瀬名…来蘭たちのこと頼むな…」

「おう!任しとけ!」

近いうちに咲の墓参りに行こうと、連絡先を交換して、俺たちは別れた。

コメント

  • 来亜子

    コメントありがとー

    0
  • (´・ω・)

    恋愛のお話はやはり良いですね!

    1
  • 来亜子

    オッサントリオ(笑)
    文化祭編は、ここまでです。
    次のエピソードはどんなのにしようかなぁ...ちょっと来蘭と奏太を(。••。)⸝ෆ⃛⸜(。••。)ラブラブさせたいなぁ

    1
  • ノベルバユーザー427233

    瀬名紫音山ちゃんの3人トリオ良さげ( ´꒳​` )

    1
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