一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

動かぬ右手 2

「リハビリ行く気にならなかったか...」
春子さんが優しく言った。

「ただ深く切れただけかと思ったの...傷さえ治れば元通りになると思ったの...動かなくなってしまったなんて思わなかったから、ちょっと受け止めきれなくて...」

「うん...そうだよね...」

「わたし、そうちゃんと一緒にバンドやってるんです。そうちゃんはドラムで、わたしはベース弾きながらボーカルやってて...このバンドでてっぺん目指そう!って約束したんです。それなのに、この手じゃ、ベース弾けなくなっちゃった...」
大粒の涙が、膝に置いた手の甲にぽたぽた落ちた...
「涙の感触も、右手には感じないや...」
更に涙は溢れて落ちた。

「でも、歌は歌えるんじゃない?」
春子さんが言う

「え?」
そうか、私には歌があった。

「声は、奪われてはいないでしょう?」
そうちゃんと同じ目をして、春子さんは微笑んだ。

「来蘭!」
そうちゃんが、血相を変えて探しに来た。
「春子さんと一緒に居たのか...良かった...」

「邪魔者は退散しまーす」
おどけてみせながら春子さんは去って行った。


「そうちゃんのパーカー借りた...」

「うん」

「そうちゃんのだからダボダボ...」

「うん、ちょっと萌える」

「そうちゃん...わたしの右手、動かないんだって...ごめん、多分もうベース弾けないや...」
言い終わる前にそうちゃんはわたしを抱きしめた...
「でも今春子さんに言われたの...あなたには歌があるじゃない  って...」

抱きしめた手を離してそうちゃんは、わたしの目を黙って見つめた。

「わたし、ベース弾けなくなっちゃったけど、このバンドで歌ってもいい?」

「当たり前だろ!!みんなそのつもりで待ってるよ!!」
そう言ってまたわたしを抱きしめた。

「来蘭の右手には、俺がなるから心配するな!でもリハビリはしよう?な?」

涙でぐちゃぐちゃの顔でわたしは、コクんと頷いた。

それから、そうちゃんと一緒にリハビリルームに向かった。

「遅くなってすいません、赤井来蘭をよろしくお願いします。」
そうちゃんが紫音先生に頭を下げた。

コメント

  • 来亜子

    来蘭も加奈も頑張って欲しいね!
    紫音先生の登場がちょっと気になる...
    (´∀`*)ウフフ

    0
  • ノベルバユーザー427233

    さぁ〜ここからリハビリが始まるね!未蘭fight

    1
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