一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

体育 2

〈奏太side〉

来蘭から唇を求められたのは初めてだった。
振り向いた来蘭の両手が、俺の両頬を挟み、そっと顔を引き寄せられて唇を重ねて来た...
唇を離した来蘭は、次体育だから!と、更衣室へ駆けてった。

取り残された俺は、戦っていた。
鎮まれ俺...鎮まるんだ...

そうか...
少しSっぽいのに来蘭は弱いのか...

あぁ、やばい、やっと鎮まってきたのにまた興奮してきた...
俺だってこの後体育なんだよ!
このままじゃ行けねーよ!
鎮まれ...鎮まってくれ...

やっとなんとか鎮まってくれて、更衣室へと急いだ。
ちょうど更衣室から出てきた陽介とすれ違う。体育は1、2組合同だから陽介も居る。

「あ、奏太!今から着替えんのかよ?遅刻するぞ?」

「のっぴきならない事情があったんだよ!ちょっとトイレ行ってるとかなんとか誤魔化しといて!」

「了解!」

急いで着替えて体育館へ行くと、向こう側の女子たちの中に来蘭が居た。
あ、見惚れてる場合じゃなかった!

「奏太ー!ウォーミングアップしよーぜー」

「おぅ!なんか久しぶりだなー、バレーボールするの」

「ほんとほんと」

「久しぶりに陽介のトス打ちたいなー!ちょっと上げてくれよ!」

「おお!まかしとけ!」

中学時代、俺はアタッカーで、陽介はセッターだった。あいつは俺のクセも良く知ってるから、絶妙なトスを上げてくれて、いつもスパイクを決めさせてくれた。
俺と陽介は、他の奴らがまだパス練をしてる中、ネット際でスパイク練習を始めた。

やっぱり陽介のトスは、いい所に上がる。
俺は思い切りストレートコースにスパイクを打った。コートに打ち付けられたボールの乾いた音が響く
向こう側の女子たちが騒ぎ始める...

「やばい!向こうの男子めちゃくちゃカッコイイ!スパイク打ってんの誰?」

「青木 奏太だよ!」

「来蘭ちゃん!青木くんがスパイク打ってるって!」

女子たちは、自分達の練習そっちのけで、男子の練習見たさに、真ん中にある仕切りのネットカーテンにかじりついてる...
さすがに体育の先生に怒られた女子たちは、渋々と自分達の練習を始めた。

女子も男子も、1組対2組でゲームをすることになった。
トスを上げてくれる陽介は1組だからなぁ...
うちのクラスでセッター出来そうなヤツはいるかなぁ...
うちのクラスのヤツを集めて一人づつトスを上げさせてみた。一人まぁまぁのヤツがいた!コイツのトスならなんとかなるかもな。
陽介の1組の方は、アタッカーが全く居ないみたいで、名セッター陽介はつまらなそうだった。

女子の方はどんな様子かなとちょっと気になってネットカーテン際で、少し向こう側を見てた。来蘭は大丈夫かな...
あ、いたいた...来蘭頑張ってんじゃん!
あいつちっちゃいからアタックやブロックは厳しいだろうとは思っていたんだけど、レシーブが予想外の良さで、目を奪われた。
気が付くと隣で陽介も一緒に見ていて
「来蘭ちゃんすごいじゃん!立派なリベロだよあれ!」

「うん!なかなかやるなぁ来蘭!」

「俺たちも負けてらんないな!」

男子のゲームが始まった。
セッターに抜擢した杉山が、案外いいトスを上げてくれて、俺もそのトスにタイミングが合ってくると、徐々にスパイクが決まり始めた。すると、俺を知り尽くしてる陽介のブロックも決まり出してくる。ネットの向こうで陽介がニヤリとしてやがる...
作戦タイムを要求し、チームメイトを集める。セッターをさせた杉山は実はバレー部だったと言う。そしてもう1人バレー部出身だという岡崎と言うやつが居た!クイックが打てるという!これはいける!と思った。

「杉山!何本か岡崎を使ってクイック打たせろ、そのうちに1組のセッターの陽介がブロックで止め始めるだろうから、そしたら俺がバックアタック打つからボールを上げてくれ!」
とお願いした。
よし!いくぞ!

杉山、岡崎のAクイックは、すぐにタイミングが合い出して決まり出した。
しかし、陽介もすぐに止め出す。
よし、今だ!!
杉山の絶妙なトスが上がった!
渾身のバックアタックが決まった!!

気が付くと、ネットカーテンの向こう側では女子たちがキャーキャーと騒いでいた。
その中の来蘭の姿を見つけるのは容易いことだった。
来蘭に向けてピースサインをすると、来蘭は口元で小さく手を叩いていた。

そのやり取りを見ていた女子たちが悲鳴を上げる...

俺のサーブの番だ!
これが決まればうちが勝つ!
なるべく高くトスを上げて、得意のジャンピングサーブを打った!
ボールは相手コートのエンドラインギリギリに決まった!
ゲームセット!
うちのクラスの勝ちだ!

すぐに来蘭の姿を目で探した。
来蘭はネットを両手で掴み、声は出さずに
「そうちゃんカッコイイ」
って口パクで言ってる。

あぁもうムリだ...
足は勝手に来蘭の元へと向かってた。
ネットカーテンを潜って、向こう側に居た来蘭をぎゅっとした。
女子たちの悲鳴がしばらく止まらなかった...



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