一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...

来亜子

僕の歌姫 2

「今日、吉井の声不調だなぁ」
廣瀬先輩が言う

「ごめん。昨日泊まった女んちでヤリすぎてそのまんま寝落ちしちゃって、朝起きたら全裸でさ...ちょっと風邪ぎみなんだよ...」
先輩たち3人は
「またかよー」
と呆れ顔...

陽介くんは爆笑してる...
そしてわたしの後ろに居たそうちゃんは、わたしの肩を掴み、クルっと身体を自分の方に向けさせ、少し屈んでわたしと目線を合わせると
「来蘭?今の吉井先輩の話しは忘れろ!」
とわたしに言い聞かせた。

すると廣瀬先輩が
「じゃー今日はもう、来蘭に歌わせるか!」
と言い出した。

「悪いーそうしてー」
と吉井先輩

えー!?

「俺たちの練習にもなるからさ、今日は来蘭ちゃん歌ってよ」
と英二先輩

「わ、わかりました...わたしでいいなら歌います...」
おずおずと答えた。

「来蘭ちゃん歌い出すと豹変するからね」
英昭先輩がクスクス笑う

「俺たちの曲は無理だもんなぁ...なんの曲やるかー」
廣瀬先輩が、歌詞とコードが載ってる歌本をパラパラとめくる

「あのぅ...さっき先輩たちやってた曲、歌詞見せてくれたら歌えると思います。すごくいい曲だったからメロディ覚えちゃった」

先輩たちも、そうちゃんも陽介くんも目が点...

「すごいな!?今1回聞いただけだよね?俺たちの曲歌えそうなの?!」
と英昭先輩

「はい...多分歌えると思います。」

「よし!やってみよ!」
廣瀬先輩が嬉しそうに言う。
吉井先輩が歌詞が書かれた紙をわたしに差し出す。

「よし!じゃあ行くよ!」
英二先輩のカウントが響くと、わたしの身体は浮遊する

このギターのイントロ好き...
さっき聞いた吉井先輩の歌ったメロディが頭の中で鳴り出し、そのメロディにユニゾンするように歌った。
先輩たちの演奏が音の塊のようにうねって、わたしの声と重なってすごく気持ち良かった。

その時だった。
閉まりきってなかった防音扉が、勢いよく開き、目を見開いて驚いた様子の男の子が飛び込んできた。

あまりにも唐突に飛び込んできたから、わたしたちは演奏を止めた。

すると彼が言った
「居た!僕の歌姫が...」

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