祈れ!シスター戦士

若葉さくと

第1話 姿見の書の中には

 私たちは返品のために、もう一度列に並びました。
一日に二度この長蛇の列に並ぶことになるなんて、なんということでしょう。
相変わらず受付の適当なお役所仕事のおかげで、凄い速さで列が進んでいます。
あっという間に最前列まで来てしまいました。

「はいはい!次次!・・・なんだ姉ちゃん!?
あんたはさっき並んでたんじゃないか!何の用だ!?」
「何の用だもこんな用だもありません。
この職業おかしくないですか?」

先ほどの本2冊を渡すと、受付はまじまじと見つめました。

「戦士に僧侶、いい組み合わせじゃないか!」
「その組み合わせには異議なしですが『シスターの私が戦士』で『ガイコツの彼が僧侶』なんですよ。
不向きにもほどがあります。今すぐ交換してください」
「と言われてもなぁ、一度儀式をしてしまったらもう無理なんだよ」
「どうしても?今なら特別に私のお祈り付けときますよ?」
「どうしても!ってか祈りなんていらん!まぁでも条件を満たせば上位職になら転職できるぞ!
上位職は選択肢がたくさんあるぞ!『狂戦士』とか強いぞ!」
「神に仕える身の私に狂うように暴れろと?そろそろ私の気が狂いそうなんですけど?」
「もうなっちまったモンは仕方ねぇだろ?暴れシスターとか新しいからいいじゃないか!
後ろがつっかえてるんだからもう話は終わりだ!帰った帰った!」

 あらあら。追い返されてしまいました。
どうやら儀式は一度きり。上位職になるしか私が戦士から転職する道はないようです。
なんて融通が利かないシステムなんでしょう。そんな重要なことなのに流れ作業で適当に済ませているなんて。
魔王の討伐より先に、この冒険者ギルドを何とかすべきではないでしょうか。

「これからどうしましょう・・・とりあえず姿見の書を詳しく読んでみましょうか。
何か解決の方法が書いてあるかもしれません」
「オ、俺も、ヨ、読んでみるとするか」


 姿見の書の表紙を開くと、1ページ目には目次が書かれており、いくつかの項目に分かれています。
前に冒険者の方から聞いた話によると、最初は項目もページも少ないけれど、冒険を続け成長していくと徐々に増えていくそうです。
自分自身の能力を確認したり、アドバイスがかかれていたり、自らの成長記録としても活用できる便利な道具です。
自らの内面を映し出す鏡のような役割を果たしてくれるようです。
『姿見の書を制すものは冒険を制する!』という名言があるくらいです。
転職の儀でもらうこの本は、冒険者たちにとって欠かせない大事な本なのです。

『目次』

クラウディアへ・1
ステータス・・・2
スキル・・・・・3

 なるほど最初は3ページだけなんですね。
無駄に分厚い表紙のせいでもっとたくさんページがあるかと思いました。
では早速『クラウディアへ』を読みましょうか。

『クラウディアへ。今、文字であなたに語り掛けている私はこの本そのものです。
まさに鏡に映るあなた自身のようなもの。大切にしてくださいね。
このページには必要が生じた時、私からのアドバイスを書き記していきますね。
これからあなたを全力でサポートしてまいりますので、よろしくお願いしますね』

 なんとまぁ。本から私に向けてのメッセージですね。私と同じくとても丁寧で優しい文章です。
私のことが写し出されこれから書き足されていく本ですから、大事にするのは当然です。
続きを読みましょう。

 『話は変わりますが、なぜあなたは戦士なんて最も合わない職業を選んだのですか?とても愚かですね。
もしかして泥酔状態でギルドに行ったのですか?「酒は飲んでも飲まれるな」肝に銘じておきなさい。
考えてみてごらんなさい。シスターと戦士、神父様の私服レベルの絶望的センスの組み合わせですよ?
あなたは今、正気ですか?』

 燃やしてしまいましょうかこの本。

 心を落ち着けましょう。
気にしない。気にしない。
残りのページも読んでしまいましょう

『ステータス』

 戦士

 レベル1

 HP100 MP400

 攻撃力3 防御力5 素早さ5 魔力20 精神力50

 耐性 光〇 闇×

 装備可能武器 全近接武器〇

 予想通りどう見ても僧侶タイプのステータスです。
戦士になっても力が上がったりあがりやすくなるわけではありません。
でも装備可能武器の欄にはちゃんと全近接武器に〇が付いています。
『スキル』のページにはまだ何も書かれていませんでした。
これではMPの持ち腐れではありませんか。

「オーウェルさんの方はどうですか?」
「読んでみるか?」

 あれあれ?このちょっとした間に心なしか話すのが上手くなっているような・・・。
とにかく読んでみましょう。
 
 『目次』

オーウェルへ・・1
ステータス・・・2
スキル・・・・・3

 目次は私と同じですね。
ではでは早速。

『オーウェルよ。俺はお前だ。
あごの骨を意識しながら話すと上手く話せるはずだ。
これからよろしく』

 なんとまぁ。ぶっきらぼうながらもしっかりアドバイスが書かれていますね
どこかの本と違い、とても良い本ですね。

『ステータス』
 
 僧侶

 レベル1

 HP500 MP0

 攻撃力50 防御力40 素早さ30 魔力10 精神力0

 耐性 光× 闇〇

 装備可能武器 杖〇

『スキル』

 ヒール(光属性)

 こちらも予想通りどう見ても戦士タイプのステータスです。
攻撃力が高くても魔力が上がる杖しか使えないのなら、攻撃力の持ち腐れです。
『スキル』のページには『ヒール』の文字が・・・それ私が欲しいです。
例えヒールがあっても肝心のMPが0では使えません。
それにガイコツという闇の種族が、光属性のヒールを使ったとしたら・・・何が起こるのか想像できません。
傷を浄化する前にオーウェルさんが浄化されてしまいそうです。
私の方も含めこのミスマッチな状況、どうすればいいんでしょうか?

「「はぁ」」

 あれあれ?私がため息をつく前に、近くから二人分のため息が聞こえてきました。
ため息が聞こえた方に目を向けると、男女が膝を抱えて座っていました。
一人はガタイが良く髭の濃い男性、もう一人は女の子の姿をした・・・スライムですね。
なにかあったんでしょうか。なんとなく私たちと同じ匂いを感じます。

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