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運命に刃向かえますか?神様に歯向かえますか? 。

白海

1、転生


… 今日も 残業か。

 心の中で、つい溜息を漏らした。三日くらいろくに寝れていないから、頭がぐらぐらする。気を抜いたら、意識が途絶えてしまいそうだ。

朦朧もうろうな頭を覚まそうと、近くに置いてある珈琲を口に含む。苦い。ざらりとした感触に、思わず顔を歪めた。ゆっくり珈琲を作る暇すらないのだ。
 
向けた視線に映るのは、星一つ無い 夜空。窓が白くぼやけていた。

ふと、笑みを零す。何だか、冬っぽいなぁなんて 感じて。しかし、直ぐに 現実に戻されるように パソコンの光が 瞳に映る。暗闇に並ぶデスクは、何だか 冷たく思えて。

滲むブルーライトだけが、異様に 綺麗にすら見えてきた。


何で、私は今 此処に居るんだろう … 。


学生の頃はもっと、大きな夢を持っていた覚えがある。ずっと小説が大好きだったから、編集者になってみたい、だなんて 言ってたっけ。頬杖を付きながら、少し昔の自分を思い出していた。

 小中高、私は 結構 "いい子"だった。成績は良い方だったし、運動神経も褒められていたし。友達関係も順調で、所謂 順風満帆な 日々 。恋人何かは 興味が無かったから、お付き合いのお誘いが合っても断っていた。

 今思えば、私は青春を謳歌はしていなかったのかもしれない。否、自分が拒んでいたのだ。青春と云う一時の夢に、浸りたくない気がしたから。


 "可愛いのに"、親友だった彩奈は、口を尖らせて常々 口癖のように言っていた。まぁ、確かに 容姿は悪い方では無かったのだと思う。白い肌に、睫毛で飾られた大きな目、腰まで伸びた長髪は、艶ややかで 綺麗だった。けれど、私は 、鏡を見て自分を 美しいと思った事は一度もない。

 容姿を褒められても、成績を褒められても、愛してると愛を伝えられても、私はいつも満たされないまま。もしかしたら、心に穴が空いているのかもしれないとすら思っていた。幸せを、私は理解出来なかったのだ。

 楽しいと云う感情を抱いても、直ぐに そんな自分が馬鹿らしく思える。好きかも、と異性を意識しても そんな自分に酔っているんじゃないかと 熱が冷める。私の感情は、等しくは無に返っていくのだ。

今でも、そんな可愛くない性格は変わっていない。

 だから、夢を見失って こんなブラック企業に務めているんだろう。大人になんて、なりたくなかったなぁ。ぐらつくような眠気に、頬を 叩く。

その音だけが響いて、それがやけに虚しく感じて。自然に、涙が零れていた。気付いた時には溢れて、抑えられない。肩を震わせて、声を押し殺して泣く。でも、寄り添ってくれる人は誰も居ない。
 喪失感、無力感。言葉には当てはまらない感情だった。只、悔しさに近い感情。

ちくしょう … !! 


 私は必死に生きた。生きてきた。どんなに苦しい時も、踏ん張って生きてきた。誰よりも、誰よりも 踏ん張って … 踏ん張って … なのに … 

何で、こんなに惨めなんだ 。


 神様なんて、信じていない。けれど、恨まずにはいられなかった。幸せのひとつやふたつ、くれても良かったんじゃないかと。

憎たらしくて、憎たらしくて 。そんな自分が馬鹿らしくて、苦しくて。うつ伏せに なって、暫く 涙を流していた。順風満帆な日々なものか。私は、何時も苦しかった。

今を生きることに精一杯で、明日を願うくせに怯えていた。また辛い1日が始まるのが、怖かったから。逃げられない明日から、背を背けようとしていたのだ。


___ ゆっくり、瞼を閉じる。事故で死んだ両親の顔や、何故か自ら命を絶った彩奈の顔が、死ぬ訳でも無いはずなのに走馬灯の様に頭を駆け抜けていく。もう、どうなってもいいや … この世界に 私を必要としてくれる人なんて、もう誰も居ないんだから。
 

知らぬ間に、朦朧とした意識は薄れ、やがて 消えていった … 。 

 


「 … ょうさま。お嬢様!」

_  何だか 煩い。やけにふわふわな感触に縋るように、私の身体がまだ 起きたくない
と拒んでいる。


あともう少しだけ寝させて… 。


 ふわふわのものに包まりながらも、起こす声から逃れるように 身を隠した。しかし、何とも 残酷な事に、ふわふわのものは ゆっくり奪われた。じわじわとした寒気が温かかった身体を蝕んでいく。寒っ … 。


慌てて 手探りで ふわふわのものを探すが、もう無くなっていて。


久しぶりに ゆっくり寝てたのに … 
 そんな事を考えていたら、ふと 気付いた。私、確か 残業中 … だったよね?
 心臓が縮まる。大変だ!、残業分の仕事、まだ 沢山 終わってないのに … !! 

 ばっと身体を起こせば、眠気のせいか ぼんやりしていた 目を、ぱっちり開く。

しかし ______   


 飛び込んできたのは、私の知らない、あまりにも煌びやかな一室であった。金で統一された装飾品、汚れ一つない 真っ白な床に、税の限りを尽くしたような シャンデリア。きらきらし過ぎて、目がチカチカしてきた。


 非日常的な光景に戸惑っている私に、"  お嬢様 、気分が優れないのなら直ぐにお医者様をお呼びしますが … ? " 、所謂 侍女、と呼ばれる者の格好をした者が、心配そうに声を掛けてきた。


お嬢様って何 ?! 此処は何処?! この人誰よ?! 
  疑問が多すぎて、頭がくらくらしてきた。余りにも、理解すべきことが多過ぎる。頭がぐわんぐわん揺れて、気付いた時には 倒れていた。

「お嬢様?!」

 激しく動揺した侍女さんの声を最後に、私は 再び 意識を失うのであった。

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