話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

先輩が守ってあ・げ・る

葵 希帆

 雄二の友達 画面の中の女の子

 放課後。

 まだ四月中旬ということもあり、日中は穏やかで過ごしやすい気温だが、日が暮れていくにつれて少しずつ寒くなってくる。

 西の空は夕日が雲まで茜色に染めているが、東の空は月が藍色の世界をつれてくる。

 雄二は一人、駅前にあるゲームショップで買い物をしていた。

 一人でゲームを買いに来た理由は、買うゲームを見られるのが恥ずかしかったわけではなくただ単に友達がいないからである。

 自分で説明して悲しくなる。

 この時間帯は帰宅ラッシュのせいで、たくさんの通行人が歩いている。

 営業回りでくたびれているサラリーマン。

 仲の良さそうな女子高生。

 今夜の献立を考えている四十代ぐらいの主婦。

 雄二と同じ制服を着た学生も歩いている。

 雄二はさっき買ったばかりのゲームのパッケージを見て、思わず頬が緩む。

 雄二が買ったゲームは俗に言うギャルゲーというゲームだ。

 簡単に言えば、ゲームの中に出てくる女の子をフラグを立てながら攻略していくゲームだ。

 雄二だって年頃の男の子だ。

 可愛い女の子に興味を持つのはごく自然なことだ。

 だが、人見知りで気弱な性格ゆえに異性どころか同性にも話しかけられない雄二にとっては三次元の彼女を作るなんて至難の業だった。

 だからこそのギャルゲーである。

 ギャルゲーに出てくる女子は、みんな可愛くこんな地味な自分でも好きになってくれる。
 例え画面越しでも可愛い女の子から告白されると、胸が高鳴りドキドキする。

 その快感が忘れられず、気づくと雄二はギャルゲーオタクになっていた。

「今日はどの女の子を攻略しようかな~」

 雄二はパッケージを眺めながら楽しそうに妄想する。
 この画面越しで女の子と話している時間が雄二にとっては至福の時だった。
 パッケージを見て歩いている雄二は当然、前を見ていない。
 そのせいで、誰かと肩と肩がぶつかってしまう。

「すみません」

 雄二は礼儀正しく、頭を下げて謝る。

 これが優しい通行人だったお互いに頭を下げて解決していたに違いない。
 だが、雄二がぶつかった相手がまずかった。

「いった~、なにぶつかってんの、あぁ~」

 雄二がぶつかってしまったのは、ガングロのどう見ても怖いギャルだった。
しかも一人じゃない。

 そのギャルは他にも二人連れていた。

 つまり、三人組のギャルとぶつかってしまったのだ。

 三人とも制服を着ているため高校生だと分かる。
 三人に睨まれた雄二は怖くて体が震える。

「すみませんでした」

 雄二はもう一度ギャル三人に向かって謝る。
 もう一度言うが雄二は人見知りで気弱な性格の男の子だ。
 争いごとは嫌いだし、明らかに好戦的な女子と関わりたくない。
 だから穏便に済ませようと頭を下げて謝罪する。

「はぁー世の中謝って許されるなら警察なんていらねーんだぞ」
「分かるー」
「受けるー」

 ギャルが三人がかりで言いがかりを付けてくる。
 回りの通行人は、関わりたくないのかこちらに視線は寄こすものの、誰も助けてくれようとはしない。

「おい、こいつオタクだよ」
「オタク、マジキモッ」
「こんな二次元の女の子しか話せないなんて可哀想―」
「きっとこいつ童貞だよ」
「童貞キモッ」

 ギャル三人が次々、雄二に向かって悪口を吐き出す。
 雄二は散々罵られてもなにも言い返すことをしなかった。
 こういったギャルにとってオタクはキモく写るのだろう。

 二次元の女の子としか恋ができないオタク。
 彼女たちはそうやってオタクを見下し、自分の優位性を誇示するのだろう。
 別にギャルゲーが好きなオタクだからといって彼女たちに迷惑をかけているわけでもないし、そもそも人の趣味嗜好に口を出すこと自体間違っている。

 雄二はそう反論したいが、反論したらしたらで何倍返しにも返ってくるので黙って堪える。 

「本当にすみませんでした」

 雄二は三回も謝り、ギャルたちから距離を取って逃げようとした時、リーダー格のギャルに胸倉を掴まれ、顔を近づけさせられる。

 女の子の口臭だから良い匂いだと思ったが、顔と同じで生臭い臭いがする。

「てめー謝っただけで帰れると思うなよ」
「マジ受けるー」
「童貞死ね」

 他のギャルたちも悪乗りをし、雄二を責め立てる。

 いくら相手が女子でも雄二の腕力では勝てない。

 雄二はそれぐらい非力だった。

 結局、そのまま引きずられるように連行され、人通りの少ない路地裏に連れて行かれる。

「先輩が守ってあ・げ・る」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く