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先輩が守ってあ・げ・る

葵 希帆

 ボッチ

 入学式が終わり一週間が経った。

「どうしよう、ボッチだ」

 一年一組の教室で、中村雄二は自分の席で頭を抱えながら唸っていた。



 入学式からの一週間。

 この一週間で今後の高校生活が大きく左右されると言っても過言ではない。
 大体この一週間で新しいコミュニティが完成されてしまう。
 教室ではリア充グループが大声で騒ぎ、その他のグループも楽しそうに談笑している。

 そして一度できたコミュニティに入るのは、なかなか難しい。

 理由は入りづらいというのもあるが、入った瞬間の『どうしてここに来るの』というような冷たい眼差しがきつい

「そうだよな。風邪で一週間も休んだもんな」

 今は授業と授業との間の休み時間。雄二は自分の机でため息をこぼす。
 風邪気味だったが入学式には出たのだが、無理がたたりその後一週間、風邪で寝込んでしまった。
 風邪が治って登校するともうすでにクラスでのコミュニティができており、どこにも入れない雰囲気が醸し出されていた。

 めでたくボッチの仲間入りである。

 中村雄二は藤ヶ崎高校に通うことになった高校一年生の男子である。
 身長は百五十半ばと男子にしては小さい。
 とても華奢で力は女子と同じぐらいしかないぐらい非力だ。
 黒髪の短髪でくせっ毛である。
 この高校は男子女子とともに紺色のブレザーで下は男子は紺のスラックスで女子はスカートである。
 首もとには男子はネクタイ、女子はリボンを締めている。
 色も学年ごとに違い、一年生は赤と黒のストライプ、二年生は黄色と黒のストライプ、三年生は青と黒のストライプと一目で学年が分かる仕様になっている。

 教室では相変わらず、新しくできた友達との会話を楽しんでいる。

 先月まではみな受験生だったのである。

 色々やりたいことを我慢して勉強を頑張ってきたのだ。
みんな受験のストレスから解放され楽しそうである。
 そんなクラスメイトを羨ましく眺めながら雄二は教室の外に出る。

 用はない。ただ、あの楽しそうな雰囲気に一人でいるのが辛かったからだ。

 一人で過ごすのも嫌ではない。

 でも友達と一緒にワイワイするのも好きである。
 だからこそ早い段階で友達を作り、自分のコミュニティを作りたかったのだ。
 でないと、日が経つにつれて他のクラスメイトはそれぞれのコミュニティを作り、入りづらくなるからである。



 雄二は当てもなく廊下を歩く。
 他のクラスを見ても新しく作った友達と楽しそうに談笑している。
 でも中には雄二と同じように一人でいる生徒もいる。
 その人は大抵勉強しているか、イヤホンを耳に付け音楽を聴きながら寝ている人が多い。

 雄二のように友達も作れず、一人で寂しく過ごしている人は少ない。

「……みんなどんだけコミュ力が高いんだよ」

 雄二は思わず悪態を吐く。
 友達を作っているみんなを見ていると改めて自分が惨めに思えてくる。
 高校は実家から遠いところを選んで受験した。
 それにあの家に居づらかったせいもある。

 別に父や母、妹と仲が悪いわけではない。
 むしろ雄二にとても優しくしてくれる。
 でも雄二はなかなかその優しさに甘えることはできなかった。

 雄二は養子なのだ。

 実の父と母は今頃刑務所の中だろう。
 雄二は小学生の頃まで実の父と母に虐待を受けていた。

 そのせいで、家族からの愛を知らない。

 だから雄二は素直に新しい父や母に甘えることができなかった。
 だが、施設の子供たちや大人たち、学校のクラスメイトは良い人たちだったので、グレルことなくここまで成長することができた。

 その点はみんなに感謝している。

 ちなみに雄二の身長は育児放棄のせいもあって伸びずに華奢な体型になってしまった。

 閑話休題。

それよりも今はどこで暇を潰そうか。

 雄二が考えごとをしながら廊下を左折すると、壁にぶつかってしまった。
 雄二は衝撃に吹き飛ばされ尻餅をつく。

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