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高森陽菜はいつも空回り

葵 希帆

 みんなコミョ力 ぱない

 高校生一年生にとって一番大事な日はいつか分かるだろうか。

 中間テスト。

 いいや違う。

 体育祭。

 いいや違う。

 文化祭。

 いいや違う。

 夏休み。

 いいや違う。


 入学初日さ。


 クラスの人間関係の九割以上が、入学初日に決まってしまう。
 つまり、入学初日にスタートダッシュを失敗すれば、クラスカーストの底辺、もしくはボッチで高校生活を過ごさなければならなくなる。

 そんなのは嫌だ。

 だって、高校生になったからには誰だって青春を謳歌したい。
 それはもちろん、佐藤大雅も同じことだった。
 佐藤大雅は四葉高校に通う高校一年生の男子生徒だ。
 身長百七十前半と平均的な大きさで、顔も平凡な顔で目立つところがない。
 簡単に言えば、ラノベで言うモブである。
 黒髪の短髪で、染めているわけでもなければ丸刈りでもない。
 大雅は少しオタクなどこにでもいるような男子高校生だった。
 だからこそ、高校ではリア充になろうとワックスで髪をまとめるが鏡で見た自分はなんかいまいちだった。

「髪がまとまらない」
「大雅、いつまで洗面所にいるの。朝ごはん冷めるわよ」
「はーい。今行く」

 洗面所で悪戦苦闘している大雅の気持ちも知らずに母が怒鳴ってくる。
 高校初日は本当に勝負なんだ。ここで自分のクラスでの立ち位置が決まってしまう。
 大雅は生返事をしながら無理矢理髪をまとめて朝食を取る。
 あまり母を待たせると、もっと凄い雷が落とされてしまうからだ。

 母、怖い。



「おはよう田中さん」
「おはよう村上君」
「田中さんと隣の席だね。今年一年よろしくね」
「今日は天気が良いな村上君。村上君はなんの部活に入るの」

 これは昨日の夜、鏡に向かって大雅が明日のイメトレをしていた光景である。
 今思うとあまりの恥ずかしさに、早くも黒歴史確定である。
 高校生にもなって、一人でなにをしているのだろう。
 今思い出すとあまりにも滑稽すぎて涙が出てきてしまう。
 だからこそ、この練習を無駄にしないためにも今日は勝負の日である。

 あぁ~太陽が眩しい。太陽ってこんなにも眩しかったっけ。

 家を出て早くも現実逃避する大雅だった。



 学校に到着すると、すぐさまクラス表を確認する。
 一年一組。これから一年間過ごす教室だ。
 昇降口から入り、上履きに履き替える。
 この時まで、誰も大雅に話しかけてきた生徒はいない。
 まだだ、まだ大丈夫。
 大雅は一人廊下を歩きながら自己暗示をかける。
 今廊下で、駄弁っている生徒はきっと在校生だ。そうに違いない。
 高校生になってすぐ友達ができるわけがない。

「お前、どこ中」
「俺、南中。お前は」
「俺は遠山中」
「ねぇ、ライン交換しない」
「するする~。ならせっかくだからクラスライン作らない」
「良いね。一年二組で作ろうよ」

 違かった。
 こいつら一年生じゃん。

 廊下で話している生徒が在校生ではなく、新入生だということを知った大我は敗北感に包まれる。
 お前らどんだけコミュ力あるんだよ。
 思わず歯ぎしりをする大雅。
 大雅はそんなコミュ力の塊をしり目に、教室の前まで辿り着く。
 この間、大雅に話しかけてきた生徒はゼロ。
 あまりにも予想通りで言葉も出ない。
 教室の中では、すでに小さなコミュニティができていた。
 それを見た大雅は慄いていた。

「……今日初めて会ったばかりだろ」

 どうして今日初めて会ったばかりの人とすぐに仲良くなれるんだ。
 昨日の夜、友達に話しかける練習をしている大雅である。
 自分からすでに出来上がっているコミュニティに入っていけるほど、コミュ力も行動力も度胸もなかった。
 大雅は途方にくれながら自分の席に座る。
 窓側の後ろの席。
 ここからだとクラスの様子が良く見える。
 まだ大雅のようにクラスに馴染めていない生徒もちらほら見かける。
 その瞬間、親近感をわいたことに自己嫌悪を覚える。
 そんな自己嫌悪に陥っていた大雅のもとに声が届く。

「わ、わたち、高森陽菜でちゅ。よろちくおねがいちまちゅ」

 緊張してカミカミの声が聞こえた方に振り向いた大雅に衝撃が襲う。

 くっそ、頭がいて~。

 高森陽菜という女子が思いっきり頭を下げた瞬間、大雅は陽菜の頭突きを喰らったのだ。

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