絶対お兄ちゃん主義!
後日談、『サナダユキムラ』について
後日談。
青高の『サナダユキムラ』について。
特に理由もなく、ネットをしながらそんなのあったけなーという気軽な感じで検索をしてみると誰かのブログにヒットしたのであった。
タイトルは『武神サナダユキムラにマジ会ったわ』とかいうタイトルであった。
『サナダユキムラって真田裄村って書くみたいでサインももらったわ』とか書いてあり、画像のデータを読み込むと俺が書いた誤字色紙の画像が出てきた。
ブログのタイトルがポン酢の世界とかいうブログだったがこいつポンドとか名乗ってなかったか?
「これポンドのブログか?……コメント欄なんだこれ?」
偽物の俺なんかのサインに1万で譲れだのどこに行けば俺に会えるだのとても英雄扱いされてる奴なんだなぁと思った。
俺じゃない本物の武神がこれを見たらどう反応すんのか、俺に仕返しとかないよな?
もう面倒事は嫌だとページを閉じるのであった。
しかし、武神のファンとかいう奴が俺の知り合いにも居たのであった。
「おっす流亜」
「ちわーっす達裄先輩」
それは数日後の学校からの帰宅時の話である。
家まで直帰の俺は帰宅途中の金髪中学生の流亜を見かけそのまま一緒に話していた。
「実はお前に伝えなくてはいけない大事な話があるわ……」
「な、なんか今日は深刻そうですね」
「とっても大事な話なんだ。……多分お前が傷付くかもしれない」
「え……?」
どんな嫌な事が思い浮かんだがかはわからない。
ただ、何故か俺の制服の裾を握り覚悟した顔で目を瞑っていた。
「お前の事さ……」
「たつ、裄先輩……?」
「星丸が興味ないって。雨一筋だってさ」
「……」
「ごめんな力になれなくて。俺星丸も雨も親友だから無理言えなかった」
「だからその話は嘘って言ったじゃないですか!」
大声で怒られて、制服の裾から手を放していた。
「驚かさないでくださいよ。それにこないだ『サナダユキムラ』がサインもらったのをネットに挙げてる記事読んでショック受けているんですから。私も欲しいんですから」
「……あれは俺が書いた偽物だぜ?」
「知ってますよ。『裄』なんて字、達裄先輩と会うまで存在自体知らなかったんですから」
というかあの字って他にも使えるんか?
俺も短い人生の中であの字は母親の名前と俺の名前でしか見た事がないしな。
「あんなん欲しいなら今すぐ書いてやるっつーの」
どうせいらないとか来る前振りだろ?
そう考えて軽い気持ちで言ったのだが流亜は目をキラキラと輝かせていた。
何かを欲しがる子供、失礼ながら容姿からもそう思ってしまった。
「わたし『サナダユキムラ』のファンなんです。ぜひお願いします。でも色紙もペンもないです。コンビニ行きましょう」
あれ?
書いてやるとは言ったが、書くとは断言してない。
しかし、流亜は帰宅方向から変えてコンビニのある元来た道を戻りだした。
まぁ書かない選択肢はなさそうだ。
それならと流亜のコンビニに付き合うのであった。
しかしここからは少し遠い距離だ。
雑談するぐらいの時間はあるか。
しかし内容がない。
『サナダユキムラ』の事でも聞こうとしたら流亜から俺への雑談のネタを投げ出されたのであった。
「そういえば達裄先輩ってどうして青空高校に入学したんですか?」
学歴なんか必要なさそうなのにと失礼な一言が後ろにくっ付いた。
「別に理由はないよ。ただ家から近かっただけさ。底辺校が一番近かったらそっちに行ってたさ」
「確かにゆっくり出来ますもんねー。私も青高入りたいけど無理だしなー……」
俺の制服を見ながら羨ましそうに溜め息を付いた。
俺の短い付き合いの中でも流亜がこんな暗いテンションになるのもそうないとは思う。
「お前どこ目指してるんだ?」
「んー……。一応先生には秋風女子目指してはいるんですけど、青高から3ランクぐらい落としてもB評価なんですよ」
受験生の流亜と進路相談をするのはもしかして初めてかもしれない。
もし後輩になったらと考えた事もあったが青高は偏差値が高い、倍率も高い、人気も高い。
確かに入るのは困難な場所なのだ。
受験も1月の後半だから残り1ヶ月くらいか。
残り1ヶ月で進路を変える決断もまた大変だからな。
そういえば俺は今年入学して新入生の挨拶の代表になったっけな。
「先生から内申は良いけど学力が無いって言われたんですよ」
「いやお前金髪じゃん。内申悪いやろ」
「これは地毛です。私の両親どちら共ハーフですから。まぁもう完全に日本人ですけど」
「え、そうなん?ただの不良娘だと思ってたわ」
そう言われると人工的な色だと思っていた金髪が、とても自然な金髪に見えてくるので不思議だ。
血が出ていても、気が付くまで全く痛いと思わないあの錯覚の様な現象だろうか。
「俺は流亜が後輩になるかも、なんて考えてたけどそうか無理か……」
「…………」
流亜が俺から顔を背けて、どうやら指で頬を掻いているようだった。
なんか恥ずかしい事あったか?
「去年は星丸と光の3人で頑張れって応援し合って俺が家庭教師やったのも1年前か……。あいつら5個ランク落としてギリギリだったのによくやるよ」
あいつら俺が行くってだけで便乗しやがったからな。
思ってたよりバカで勉強が嫌で泣いてたあいつらと教えるのが嫌で泣いてた俺。
そこまでして行く価値もあったか?
「先輩、なら私にも頑張れって応援を下さい。それなら私受験頑張れる気がします」
「……頑張れ」
「全然気持ちが籠ってないんですけど……」
「よくわかったな正解だ。全然気持ちを込めてないからな。なんにも思ってないし想ってない。どうにでもなればって感じだからな」
「……え?」
俺の感情が籠っているかいないか。
こいつはそんな事がわかるくらい俺を理解してたんでなと少し関心した。
「心の籠めていない頑張れならいくらでも言えるぞ。おぅ頑張れ」
「……どうして星丸先輩達には言えて私には言ってくれないんですか?親友じゃないからってんですか?」
泣きそうになりながらも耐えている声が耳に響く。
少し流亜が歩くスピードを遅めたので、俺も一時停止してからその流亜の歩調に合わせた。
「そんなんじゃねーよ。つかお前も親友だとは思ってるよ。ただこれは俺の別問題なんだ」
ここからの説明がちょっと難しい。
5秒くらい言葉を作っては崩し、修正して口に出す。
「俺さ、……自分が見ているだけで全く干渉していないのに頑張っている人間に頑張れって応援するのに嫌気がさしたんだ。だから俺が心を籠めてする応援の時は俺がとことんまで干渉した時だ。俺も受験の時、あいつらには1回しか言えてないしな」
「そうなんですか。……ごめんなさい」
「いや、こっちが悪いよ。ごめん」
2人して頭を下げ合った。
こんな話、年下の後輩にする話じゃなかったな。
「私もあと1年早く生まれていればなー……」
「……おっ、着いたな」
コンビニの入口に付き、俺が先頭で自動ドアの前に立ち、開くと同時にコンビニ内に入店した。
雑誌売り場や小物売り場を脇目に文房具売り場へ辿り着き色紙とマジックペンを手に取りそのままレジに向かおうと方向転換するが、流亜が「待ってください」と引き留めた。
「私が書いてもらうんだから私が払いますよ」
「あ?出してやるよそんぐらい。その変わりお前あっちで表紙買いでいいからエロ本買って来い」
「ロリでよかと?」
「エロ本買った時点でお前とは縁を切るけどな」
「それじゃあやっぱりただのおごりじゃないですか!」
何故おごりで怒ってんのか。
こないだは俺おごりのデートだのATM等言っていたくせに。
というわけで消費税分だけの金額は受け取った。
「しかしコンビニって来るとテンション上がんないですか達裄先輩」
「うひょーってなるよな」
「いや、別になりませんよ」
「なんだお前!?」
合わせてやって否定がきた。
何考えているかよくわからん後輩だと思う。
「うひょー、新商品レモン味のオレンジジュースですって達裄先輩」
「本当にお前はなんなんだ流亜後輩」
というかレモン味のオレンジジュースって何?
果汁5パーセントってなってるけどどっちの?
謎の新商品は気にはなったのだが目的の2品のみを持ってお会計を済ませるのであった。
コンビニから出た2人は早速色紙とマジックペンの包装を破りゴミはきちんと近くのゴミ箱へと捨てた。
とりあえず近場のベンチへ腰かけ右手にマジックペン、左手に色紙を持った。
「これに『真田裄村』って書けば良いの?」
「はいそうですね」
偽物相手の俺に何故そんなにニコニコで居られるのか。
いまいちよく俺もわからない。
ただなんとなくだけど1つ確信している事はある。
こいつが青高に行きたいと言ったのはその『サナダユキムラ』が絡んでいるのではないかと思った。
なんとなく流亜の彼への反応はファンというより好意に見える。
俺でもなく、星丸でもない。
彼『サナダユキムラ』の為に彼女は青高に憧れるのであろう。
「……」
サラサラ~とポンドに書いてやったサインを思い出しながらそれに似たサインを描いてやった。
隣では「ありがとうございます」と、とても大喜びの流亜が笑顔になっていた。
「なんかメッセージでもいる?」
「是非。どんな事でも構いません」
「言ったな。どんなんでも良いと言ってしまったな」
俺はフフフと笑ってしまった。
悪ふざけのお時間だとばかりに嫌がらせのようなメッセージが次々と思い浮かんだ。
「ナスを喰えるようになりなさい。だから君はまだまだ体が幼いんだぜ!小さいなゲヘゲヘゲヘ」
「うわ、最低だこの先輩!」
「返品はご遠慮願いますお客様」
そのまま流亜に押し付ける様に色紙を渡した。
そして逃げる様に通学カバンを持ってベンチから立ち上がった。
「そういやせっかく寄り道したんだから本屋寄ってくわ。またどこかのお寺で会うか」
「私は達裄先輩とお寺で会った事はありません」
「突っ込むとこそこ?」
「他に突っ込む箇所がありません」
ではまたーと流亜に手を振って別れた。
さて今月はどんな本が売っているだろうか?
俺はスマホの本の発売日を閲覧出来るアプリを起動した。
―――――
「全く達裄先輩って完全にふざけてて異性として見てないよねー……って、なにこれ?達裄先輩が言ってた文章と違うようなー……」
『流亜へ
応援はしないけど一緒に頑張る事は出来るから本気で青高を目指すんなら俺に頼れ!』
「……た、達裄先輩……こんなのずるいよ……。少しくらい気付いてよ……、胸が痛いですよ……」
つーか『サナダユキムラ』って本当に誰だ?
本屋に入ったら加藤清正特集をしていた。
真田幸村じゃねーんかよ!
青高の『サナダユキムラ』について。
特に理由もなく、ネットをしながらそんなのあったけなーという気軽な感じで検索をしてみると誰かのブログにヒットしたのであった。
タイトルは『武神サナダユキムラにマジ会ったわ』とかいうタイトルであった。
『サナダユキムラって真田裄村って書くみたいでサインももらったわ』とか書いてあり、画像のデータを読み込むと俺が書いた誤字色紙の画像が出てきた。
ブログのタイトルがポン酢の世界とかいうブログだったがこいつポンドとか名乗ってなかったか?
「これポンドのブログか?……コメント欄なんだこれ?」
偽物の俺なんかのサインに1万で譲れだのどこに行けば俺に会えるだのとても英雄扱いされてる奴なんだなぁと思った。
俺じゃない本物の武神がこれを見たらどう反応すんのか、俺に仕返しとかないよな?
もう面倒事は嫌だとページを閉じるのであった。
しかし、武神のファンとかいう奴が俺の知り合いにも居たのであった。
「おっす流亜」
「ちわーっす達裄先輩」
それは数日後の学校からの帰宅時の話である。
家まで直帰の俺は帰宅途中の金髪中学生の流亜を見かけそのまま一緒に話していた。
「実はお前に伝えなくてはいけない大事な話があるわ……」
「な、なんか今日は深刻そうですね」
「とっても大事な話なんだ。……多分お前が傷付くかもしれない」
「え……?」
どんな嫌な事が思い浮かんだがかはわからない。
ただ、何故か俺の制服の裾を握り覚悟した顔で目を瞑っていた。
「お前の事さ……」
「たつ、裄先輩……?」
「星丸が興味ないって。雨一筋だってさ」
「……」
「ごめんな力になれなくて。俺星丸も雨も親友だから無理言えなかった」
「だからその話は嘘って言ったじゃないですか!」
大声で怒られて、制服の裾から手を放していた。
「驚かさないでくださいよ。それにこないだ『サナダユキムラ』がサインもらったのをネットに挙げてる記事読んでショック受けているんですから。私も欲しいんですから」
「……あれは俺が書いた偽物だぜ?」
「知ってますよ。『裄』なんて字、達裄先輩と会うまで存在自体知らなかったんですから」
というかあの字って他にも使えるんか?
俺も短い人生の中であの字は母親の名前と俺の名前でしか見た事がないしな。
「あんなん欲しいなら今すぐ書いてやるっつーの」
どうせいらないとか来る前振りだろ?
そう考えて軽い気持ちで言ったのだが流亜は目をキラキラと輝かせていた。
何かを欲しがる子供、失礼ながら容姿からもそう思ってしまった。
「わたし『サナダユキムラ』のファンなんです。ぜひお願いします。でも色紙もペンもないです。コンビニ行きましょう」
あれ?
書いてやるとは言ったが、書くとは断言してない。
しかし、流亜は帰宅方向から変えてコンビニのある元来た道を戻りだした。
まぁ書かない選択肢はなさそうだ。
それならと流亜のコンビニに付き合うのであった。
しかしここからは少し遠い距離だ。
雑談するぐらいの時間はあるか。
しかし内容がない。
『サナダユキムラ』の事でも聞こうとしたら流亜から俺への雑談のネタを投げ出されたのであった。
「そういえば達裄先輩ってどうして青空高校に入学したんですか?」
学歴なんか必要なさそうなのにと失礼な一言が後ろにくっ付いた。
「別に理由はないよ。ただ家から近かっただけさ。底辺校が一番近かったらそっちに行ってたさ」
「確かにゆっくり出来ますもんねー。私も青高入りたいけど無理だしなー……」
俺の制服を見ながら羨ましそうに溜め息を付いた。
俺の短い付き合いの中でも流亜がこんな暗いテンションになるのもそうないとは思う。
「お前どこ目指してるんだ?」
「んー……。一応先生には秋風女子目指してはいるんですけど、青高から3ランクぐらい落としてもB評価なんですよ」
受験生の流亜と進路相談をするのはもしかして初めてかもしれない。
もし後輩になったらと考えた事もあったが青高は偏差値が高い、倍率も高い、人気も高い。
確かに入るのは困難な場所なのだ。
受験も1月の後半だから残り1ヶ月くらいか。
残り1ヶ月で進路を変える決断もまた大変だからな。
そういえば俺は今年入学して新入生の挨拶の代表になったっけな。
「先生から内申は良いけど学力が無いって言われたんですよ」
「いやお前金髪じゃん。内申悪いやろ」
「これは地毛です。私の両親どちら共ハーフですから。まぁもう完全に日本人ですけど」
「え、そうなん?ただの不良娘だと思ってたわ」
そう言われると人工的な色だと思っていた金髪が、とても自然な金髪に見えてくるので不思議だ。
血が出ていても、気が付くまで全く痛いと思わないあの錯覚の様な現象だろうか。
「俺は流亜が後輩になるかも、なんて考えてたけどそうか無理か……」
「…………」
流亜が俺から顔を背けて、どうやら指で頬を掻いているようだった。
なんか恥ずかしい事あったか?
「去年は星丸と光の3人で頑張れって応援し合って俺が家庭教師やったのも1年前か……。あいつら5個ランク落としてギリギリだったのによくやるよ」
あいつら俺が行くってだけで便乗しやがったからな。
思ってたよりバカで勉強が嫌で泣いてたあいつらと教えるのが嫌で泣いてた俺。
そこまでして行く価値もあったか?
「先輩、なら私にも頑張れって応援を下さい。それなら私受験頑張れる気がします」
「……頑張れ」
「全然気持ちが籠ってないんですけど……」
「よくわかったな正解だ。全然気持ちを込めてないからな。なんにも思ってないし想ってない。どうにでもなればって感じだからな」
「……え?」
俺の感情が籠っているかいないか。
こいつはそんな事がわかるくらい俺を理解してたんでなと少し関心した。
「心の籠めていない頑張れならいくらでも言えるぞ。おぅ頑張れ」
「……どうして星丸先輩達には言えて私には言ってくれないんですか?親友じゃないからってんですか?」
泣きそうになりながらも耐えている声が耳に響く。
少し流亜が歩くスピードを遅めたので、俺も一時停止してからその流亜の歩調に合わせた。
「そんなんじゃねーよ。つかお前も親友だとは思ってるよ。ただこれは俺の別問題なんだ」
ここからの説明がちょっと難しい。
5秒くらい言葉を作っては崩し、修正して口に出す。
「俺さ、……自分が見ているだけで全く干渉していないのに頑張っている人間に頑張れって応援するのに嫌気がさしたんだ。だから俺が心を籠めてする応援の時は俺がとことんまで干渉した時だ。俺も受験の時、あいつらには1回しか言えてないしな」
「そうなんですか。……ごめんなさい」
「いや、こっちが悪いよ。ごめん」
2人して頭を下げ合った。
こんな話、年下の後輩にする話じゃなかったな。
「私もあと1年早く生まれていればなー……」
「……おっ、着いたな」
コンビニの入口に付き、俺が先頭で自動ドアの前に立ち、開くと同時にコンビニ内に入店した。
雑誌売り場や小物売り場を脇目に文房具売り場へ辿り着き色紙とマジックペンを手に取りそのままレジに向かおうと方向転換するが、流亜が「待ってください」と引き留めた。
「私が書いてもらうんだから私が払いますよ」
「あ?出してやるよそんぐらい。その変わりお前あっちで表紙買いでいいからエロ本買って来い」
「ロリでよかと?」
「エロ本買った時点でお前とは縁を切るけどな」
「それじゃあやっぱりただのおごりじゃないですか!」
何故おごりで怒ってんのか。
こないだは俺おごりのデートだのATM等言っていたくせに。
というわけで消費税分だけの金額は受け取った。
「しかしコンビニって来るとテンション上がんないですか達裄先輩」
「うひょーってなるよな」
「いや、別になりませんよ」
「なんだお前!?」
合わせてやって否定がきた。
何考えているかよくわからん後輩だと思う。
「うひょー、新商品レモン味のオレンジジュースですって達裄先輩」
「本当にお前はなんなんだ流亜後輩」
というかレモン味のオレンジジュースって何?
果汁5パーセントってなってるけどどっちの?
謎の新商品は気にはなったのだが目的の2品のみを持ってお会計を済ませるのであった。
コンビニから出た2人は早速色紙とマジックペンの包装を破りゴミはきちんと近くのゴミ箱へと捨てた。
とりあえず近場のベンチへ腰かけ右手にマジックペン、左手に色紙を持った。
「これに『真田裄村』って書けば良いの?」
「はいそうですね」
偽物相手の俺に何故そんなにニコニコで居られるのか。
いまいちよく俺もわからない。
ただなんとなくだけど1つ確信している事はある。
こいつが青高に行きたいと言ったのはその『サナダユキムラ』が絡んでいるのではないかと思った。
なんとなく流亜の彼への反応はファンというより好意に見える。
俺でもなく、星丸でもない。
彼『サナダユキムラ』の為に彼女は青高に憧れるのであろう。
「……」
サラサラ~とポンドに書いてやったサインを思い出しながらそれに似たサインを描いてやった。
隣では「ありがとうございます」と、とても大喜びの流亜が笑顔になっていた。
「なんかメッセージでもいる?」
「是非。どんな事でも構いません」
「言ったな。どんなんでも良いと言ってしまったな」
俺はフフフと笑ってしまった。
悪ふざけのお時間だとばかりに嫌がらせのようなメッセージが次々と思い浮かんだ。
「ナスを喰えるようになりなさい。だから君はまだまだ体が幼いんだぜ!小さいなゲヘゲヘゲヘ」
「うわ、最低だこの先輩!」
「返品はご遠慮願いますお客様」
そのまま流亜に押し付ける様に色紙を渡した。
そして逃げる様に通学カバンを持ってベンチから立ち上がった。
「そういやせっかく寄り道したんだから本屋寄ってくわ。またどこかのお寺で会うか」
「私は達裄先輩とお寺で会った事はありません」
「突っ込むとこそこ?」
「他に突っ込む箇所がありません」
ではまたーと流亜に手を振って別れた。
さて今月はどんな本が売っているだろうか?
俺はスマホの本の発売日を閲覧出来るアプリを起動した。
―――――
「全く達裄先輩って完全にふざけてて異性として見てないよねー……って、なにこれ?達裄先輩が言ってた文章と違うようなー……」
『流亜へ
応援はしないけど一緒に頑張る事は出来るから本気で青高を目指すんなら俺に頼れ!』
「……た、達裄先輩……こんなのずるいよ……。少しくらい気付いてよ……、胸が痛いですよ……」
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