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僕の従者

葵 希帆

 僕の従者

「起きてください文哉様。朝ですよ」

 十五年間聞き馴染んだ声。この声を聞くと、どんなに熟睡していても脳が覚醒する。

「おはよう、静香ちゃん」
「おはようございます、文哉様」

 文哉はベッドの横にいる女性に向かって挨拶をすると、その女性も微笑みながらも慇懃に礼をして挨拶を行う。

「今日から学校ですね、文哉様」
「そうだね、今日から高校生か。あまり実感がないな」
「だけど今日から文哉様は高校生です。あんなに小さかった文哉様が高校生なんて。私も年を取りました」
「そんなことないよ静香ちゃん。静香ちゃんもますます魅力的になったよ」
「まぁ~、文哉様にそんなことを言われるなんて恐悦至極でございます」

 文哉に褒められた静香ははにかみながら、慇懃にお礼を述べる。
 湊文哉は、今年高校一年生になる男の子だ。
 身長百五十前半と小さく、よく小学生に間違われてしまう。
 黒髪のストレートの短髪で、耳などは隠れている。
 顔も童顔ということもあり、幼さがまだ残っている。

 そして文哉の隣にいる彼女は牧野静香。文哉の従者である。
 身長百七十後半と女性にしてはかなり高い。
 歳も二十歳でもう成人を向かえている。
 黒曜石のように美しい黒髪で、腰まで長いロングヘアーだ。髪質もくせっ毛ではなくストレートなので、しっかりとまとまりがある。
 柔らかい目に、モチモチとした肌。
 街に出かければほとんどの男性が二度見するぐらい美しい容姿である。
 胸も大きく、制服越しからもわかるGカップ。

 ……制服?

「静香ちゃん。どうして制服を着ているの」
「これは失礼しました。文哉様にはまだお知らせしていませんでしたね。私、今日から高校に通います」
「……えっ―――――――」

 思考が一瞬停止した後、脳が急激に活発になり、静香の言った意味を理解した瞬間文哉は驚きの声を上げる。

 今日から、僕の従者は女子高生になるらしいです。



 静香は文哉が生まれてすぐ、この家に来た。
 代々、文哉の湊家と静香の牧野家は主従関係にあり、文哉には静香が割り振られた。
 静香は文哉の隣の部屋に住んでいるのだが、なぜか分からないがほとんどの時間を静香は文哉と過ごしている。
 親たちは少し異常と感じながらも仲睦まじそうに遊んでいる文哉と静香を引き離すことができずに、放って置かれている。
 文哉にとって静香は従者であるまえに、姉のような存在で慕っていた。



「静香ちゃんって今、二十歳だよね」
「はい」
「それで今年から高校に通うの」

 静香は今、二十歳で今年二十一歳をむかえる。
 静香の容姿はとても美しいが、高校生にしてはかなり大人びている。
 文哉から見れば少し無理があるように思えた。
「私、中学を卒業してから本格的に従者の仕事を始めました。そのため、高校には通ったことがないのです。しかし、お父様からはせめて高校は卒業しろと命じられたので、せっかくなので文哉様が高校生になるのを待って高校に入学いたしました。これで文哉様と同級生ですね」

 静香はニコニコと嬉しそうに、高校生になった経緯を話した。
 高校は中学を卒業していれば誰でも入れるらしい。実際、二十歳を超えてから高校に入学した人もいる。
 それに、今の話を聞いて文哉にも負い目があった。
 静香が高校に通えなかったのは従者としての仕事があったからだ。
 もし、静香が牧野家でなかったら、普通の高校生活を満喫し、今大学生活を謳歌していただろう。

「静香ちゃんと一緒に学校に通うなんて九年ぶりだね」
「そうですね。私とても楽しみです」
「僕もだよ。僕もまた静香ちゃんと一緒に学校に通えて嬉しい」

 文哉も静香もお互い、一緒に学校に通えることが嬉しくて視線が合った瞬間、恥ずかしくて視線をそらしてしまう。

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