兎と聖女、鬼と王女のぶらり旅〜チートだけどのんびり生きたい〜

みどりぃ

11 とある冬の朝

 冬も本番だ。外では雪が降り積もり、屋根からは氷柱が伸びている。

 うちは農家だ。秋の収穫以降は仕事も落ち着いており、ゆっくりとした日々を過ごしている。
 とは言え何もしないワケにはいかない。この時期に活発になる魔物も居るので、それらの対策なり討伐なりをしなくちゃいけない。

「それじゃ父さん、行ってくるね」
「おう、気をつけるんだぞ」

 暖炉近くのテーブルでお茶を飲んでる父さんに一声掛けて外に出る。
 外は雪は弱まっているものの、寒さは厳しい。家にUターンしたくなるのを堪えて足を進める。

「おぉ、来たか」
「ごめんごめん、遅れちまった」

 町内の友人と合流して町の表口に向かおうとする。表口の外に魔除けの匂いをつける為だ。

 その時、視界の端にうつる姿に2人とも足を止める。

「ちょっとオウガ、私達の分もさくっとやっちゃいなさいよ」
「え、マジすかオウガさーん。ありがとうございまーす」
「お前らもちゃんとやれや!」
「お、重いです…!」

 そこには町でも有名な4人組が居た。孤児院に居るやつらだ。

「おー、朝からリリアさんは綺麗だなー」
「はぁ?それを言うならフィアさんだろ」

 金髪に青い眼のスレンダーな体型のリリアさん。少し吊り目はきつい印象よりも美人という印象に変わる整った顔。口調はきついながらもそれが良いと街の男達からは人気がある。

 リリアさんも美人だがやはり俺としてはフィアさんだ。
 かわいらしい顔立ち。珍しい銀髪の長い髪をなびかせ、薄紫の瞳は大きな目に収まっており小動物のような印象さえ与えている。小柄ながら出るとこが出ているのもポイントが高いと思う。

「なんであのお二人はあんなヤツらと仲良くしてんのかな」
「それなー」

 対して町の男達から嫌われている男2人。

 やはり1番の嫌われ者は鬼のオウガだ。大柄な体型に赤い髪と赤い眼はとにかく威圧感がある。町の腕に覚えがある若者が何度も喧嘩を売ってるようだがすべて返り討ちにされているらしい。マジ怖い。

 そして近頃はオウガの印象に隠れてるけど、昔は1番いじめの対象だったレン。
 と言っても別に本人が何かしたワケではない。しかし、昔から不吉とされていた黒髪であり、それを溶かしたかのように瞳まで真っ黒だからだ。
 今ではすぐ逃げる上にめちゃくちゃ速いから脱兎で兎とか言ってバカにしてるけど。意気地なしすぎて絡む気も起きない。

 そんな2人と、麗しのお2人はとても仲が良い。もちろん孤児院で一緒だからだろうけどさ。

「さて、あとは屋根の上の雪だけだな」
「うーん、リリアの風魔法で落とすとかどーよ?」
「いいわよ?でもその後片付けるのが面倒だし、あんたらキャッチしてそのまま運びなさい」
「リリア、それは難しいんじゃ…」

 ぼーっと見てる内に孤児院周りの雪かきを終えたみたいだ。何やら話してるけど、どうしたのかな?

「問題ないわよフィア。確かここらへんに丁度良い板が…」
「ってそれウチの看板じゃない?」
「おまけになんか焦げてるし」
「リリア、やりやがったな。じじいに言おっと」
「ちょっ、なんで私のせいになるのよ!」
「リリアしかいないしー」
「あーもううるさいわねレン!ほら行くわよ、構えなさい!」
「はァ?っておいマジかこいつ!レン早く待てこれ!」

 何かモメてるなーと思ってたら今度はいきなり屋根から雪が勢いよく男の子2人に向かって落ちてきた。オウガが慌てて孤児院の看板を盾にして受け止めようとしてる。

「頑張れオウガ!」
「手伝えやァあ!」

 うわ、やっぱすげぇわオウガ。あんな大量の雪を1人で受け止めやがった。レンもある意味さすがーーなのか?一瞬で安全地帯まで逃げてる。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお「あーもううるさいわね!」

 鳴り響く雄叫びとそれに負けない罵声。リリアさんおっかねぇ。

「レン早く手伝えこれ無理ィい!」
「今ここで限界を越えろおお!」
「マジかこいつ後で覚えてやがれェ!フィア、レンを説得しろォ!」
「えっと、レン?これはさすがに「フィア、手が冷えてる。俺が温めてやるから貸して?」

 あ!あいつフィアさんの手を握ってやがる!しかもフィアさんもなんか嬉しそうだし!

「はえ?え、あの、レン…?」
「あったまってきたねー。そしたら一緒にオウガを応援しよ?」
「え、あ、はい、えっと…オウガ頑張って!」
「だァーっ、このクソヤロぉ!」

 あ、ついにオウガが潰れた。雪も地面にざばーっと広がってる。

「ちょっとオウガ、しっかりやんなさいよ」
「お前目ェ見えないのか?!さすがに俺のせいじゃないだろォが!」
「限界を越える難しさたるや」
「てめェは後でどつき回す」
「いいから雪をどけるわよ」
「つーかリリアの火魔法で溶かせばよくねェか?」
「バカね。こーゆー気温がマイナスの時に溶かしたりしたら今度は氷になって余計に危ないのよ?滑ってコケるのがあんたならまだしもフィアが「だぁーもううるせェ!」

 すげぇ騒がしいなあいつら。でもまぁ、なんかこの騒音にも慣れてきてしまったな。横の友人を見るとこいつもなんだかんだ楽しんで見てたのか、少し頬が緩んでる。

 変なやつらだけど、なんだかんだ町の一員だとは思ってる。いつかあいつらとも仲良く出来たらいいな。

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