兎と聖女、鬼と王女のぶらり旅〜チートだけどのんびり生きたい〜

みどりぃ

10 え、お前らも?

「ねぇ2人とも?レンはどこ?」
「え?うそ、あいつまだ帰ってないの?」

 その質問にすぐ反応したのはリリアだった。目を丸くして聞き返してくるリリアに、微かな不安が胸をよぎる。

「あー、まぁその内帰ってくるだろ」
「そうね、どうせそこらへんでサボってロクに集まってないんでしょ」

 投げやりな口調で言うオウガにリリアも頷いている。
 それよりこいつの処理をしないとなーってバイソンを見ている2人に、私はつい大声を出しちゃった。

「2人と一緒に居たんじゃないの?!」
「「え…」」

 それに目を丸くする2人。リリアは少し困ったように眉を下げている。

「1人で居て怪我とかしちゃってないかな?本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫……と思うんだけど」

 リリアの歯切れの悪い返事に胸によぎる不安が大きくなる。なんだか泣きそうになってきた。
 そんな時、頭にぽんと大きな手が乗せられる。

「大丈夫だフィア。あいつの事だ、どうせひょっこり帰ってくるって」
「そうだぞぉ。フィアは気にせず飯を作っとけばいい」

 珍しく優しげに言うオウガに、いつの間にか扉を開けて出てきたお父さんが言う。
 でも、やっぱり胸にある不安は消えてくれない。

「でも……」
「心配すんな。あいつが怪我して帰ってきた事があったか?」
「……ないけど」
「だろ?美味い飯の匂いでもさせてりゃひょっこり帰ってくんだよあいつは」

 そんな犬や猫じゃないんだから、と言おうと思ったけど、確かにいつも見ていたかのようにそのくらいに帰ってくる気がする。

「オウガの言う通りだぞぉ。あいつの昼飯少なくしといたから、むしろちょっと早めに帰ってくるかもなぁ」
「うわじじい、ひでェヤツだなおい」
「ふん、朝起きてこんかった罰だわい」
「そうね。むしろ飯抜きでも良かったんじゃないかしら」

 いつの間にかいつものように笑いだす皆んな。
 その表情があまりにいつも通りだったからか、気付けば不安はほとんどなくなっていた。

「そっ、そうだよね!よしっ、すぐに仕込み終わらせて晩ご飯にするね!」
「おー、楽しみだぜ」
「さっき部屋に入ったら肉の匂いがしたのよね。きっと肉料理だわ」
「さすがリリアだなぁ、目敏いな。正解だ」
「やったぜ!レンのやつが遅かったら俺が食っちまおっと!」
「あんた人のこと言えないくらいひどいヤツね!」

 豪快に笑うオウガと指をつきつけて叱るリリアに、私はキッチンに向かいながら言う。

「まぁバイソンなんて良い肉と比べたら物足りないと思うけどね。それより、その子達の処理はお願いねっ」
「うぇ、忘れてた」
「任せなさい!完璧にこなしてみせるわ!」
「やめろ、お前がやると肉がぐちゃぐちゃになりかねねェ」
「なんですってぇ?!」

 後ろから聞こえる喧騒につい笑いつつ、晩ご飯の準備を進めていく。早く作ってレンに帰ってきてもらわなきゃ。

 そしてあとは仕上げ、という所で外から音が聞こえてきた。
 私はすぐさま駆け出して扉を勢いよく開ける。

「うぉっ、どうしたフィア?そんな慌てて」
「レン!おかえり!」

 そこにはレンが居た。
 まるでこっちの心配をバカにするかのようないつも通りの態度だし、怪我もない姿だ。

「ん?おぉ、おかえりー」
「遅いよ!心配したんだからね!」
「そっかそっか、フィアだけだよ、心配してくれるのは」

 儚げに言うレン。…確かに誰も心配してなかったし、何もフォロー出来ないよ。
 ちょっと気まずくて視線を外すとそこには今日一日で見慣れたものがあった。

「……バイソン?」
「おぉ、レンお前バイソン捕まえてきたのか?」
「ウソっ?!あんたが倒したの?!これを!?」

 いつの間にかオウガとリリアも来ていた。オウガは笑いながら、リリアは珍しく驚きをあらわにしている。

「あー、うん、これなー…………いや、実は拾ったんだ」
「ぶふっ!」
「……はぁ?」

 明らかにウソっぽく頬をかきつつ目線を斜め上に放りながら言うレン。
 そんなレンにオウガは吹き出して、リリアは胡散臭そうに睨みつけていた。

「だっはっはっは!拾ったのか!これを!」
「ウソおっしゃい!そんなワケないじゃない!」
「いやいや、ホントだって。山菜探してたら落ちてたんだよ。ほんと今日はツイてるなー」

 真顔で話すレンに爆笑するオウガ、怒鳴るリリア。そんないつもの光景に私は思わず微笑みながら言う。

「とにかく無事て良かった。レン、今日からしばらくはバイソン祭だよ?」
「ん?保存しとかなくていいんか?」
「ふふっ、三体もいるからね。今年の冬はもう全然足りると思うよ?」
「……え?」

 思わずといった感じにオウガとリリアを見るレン。
 視線を受けた2人もなんとも言えない表情を浮かべてるし。

「仲が良いなぁ、お前らぁ」

 沈黙する3人に向けて言ったお父さんの言葉が妙に響き渡ったのでした。

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