兎と聖女、鬼と王女のぶらり旅〜チートだけどのんびり生きたい〜

みどりぃ

8 リリアは爆破か斬り裂きの狩人

「はいはい、また後でね」

 そう言って森へと入る私。レンが何か言ってるけど、一緒に来たらどうせ私にやらせてサボるつもりだろうから無視よ無視。

 もちろんオウガは結構腕も立つし心配してないわ。 まぁレンは心配じゃないと言えばウソになるけど、あいつには逃げ足がある。あいつったらいつも気付いたら居ないってくらい足は速い。
 例え手に負えない魔物に遭遇しても逃げるだけなら大丈夫のはず。

 それに、たまに考える事があるの。あいつ、実は少し戦えるんじゃないかって。
 だって結構お手伝いで森へと入るのに、怪我の一つもしたことがないのよ?いくら逃げ足が速いって言ってもおかしいと思うじゃない。

 まぁだとしたら今日は良い機会だわ。もし魔物なんかを捕まえてきたら今度からレンにも狩りをさせてやるんだから。

 そんな事を考えつつ昨日私が撒いた魔除けの区域を越えて歩く。寒くなってきたからここに残る魔物達は脂が乗ってる頃よ。

 旨味たっぷりの脂の肉なんて考えただけでもテンション上がるわ。
 昔の王宮では食べれなかった野性味溢れる味にハマってるのよね。

 言ってる側から豚みたいな魔物アグゥが見えてきたわ。こいつも脂が乗る魔物よ。結構臆病な魔物だから、さくっと仕留めないと。

「火よ、『火球』」

 顔面だけ吹き飛ばしてやるわ。
 そう思って放った火球は狙い通りに顔面へと着弾してーー狙いとは裏腹に体ごと吹き飛ばした。

 脂が乗ってるせいか吹き飛んだ肉片が良く燃えているのがなんとも虚しい。あまりの虚しさにちょっと涙が出そうになる。

「……つ、次こそは仕留めてみせるわよ」

 誰に言うでもなく呟き、足を進める。

 弱肉強食の魔物の世界で、アグゥは弱い方。だから住める縄張りみたいなのも狭いから、ここらへんを重点に探せばまだいるはず。

 その予想通りちらほらと現れるアグゥ達。そして健闘虚しく肉片へと変わるアグゥ達。

 そろそろ本気で泣きたくなってきたわ。諦めて風魔法にするしかないか、と肩を落としてアグゥを探す。
 が、ムキになって火魔法で暴れたせいで逃げたのか、それとも全滅したのか。一向に姿が見えなくなってしまった。

「もう!なんなのよ!」

 思わず叫ぶ。その声に反応したのか、茂みから大きめな影が姿を現した。

「……うーん、バイソンかぁ…」

 全長4メートルくらいのバイソン。標準サイズくらいかしらね。
 それよりこいつの肉は赤身が多い。クセも少なく市場では良い値段で出回っているけど、王宮でもちょくちょく出てたこいつは飽きちゃってるのよね。

 でも、さっきまでの狩りで時間も魔力も使っちゃったしーーやむを得ないわ。こいつを今日の獲物にしましょ。

「ブオオオッ!」
「風よ、刃となれ…『風刃』!」

 放った風刃は襲い掛かるバイソンの足に命中する。両断とまではいかないが、硬い毛や皮膚を切り裂いて傷を与えた。

 でもやっぱり魔物だけあって根性あるわ、この程度では止まらなかった。勢いそのままに突っ込んでくる巨体を横に飛んで躱し、バックステップで距離をとりつつ再び風刃を放つ。

 バイソンはバカだから基本突進しかしてこない。脅威度の割に美味しい魔物で有名だ。二重の意味で。

 なのでしばらく同じやりとりを繰り返していけば簡単に倒せる。途中に焦ったくなり火魔法を使いたくなるのを堪えながら、ついにバイソンを倒した。

「全く、手間取らせてくれたわね……」

 やっと倒れたバイソン。風刃による傷が全身至る所に出来ており、血抜きはしなくてもいいんじゃない?ってくらい血が全身から流れている。
 むしろ、ボロボロにしすぎた感はあるわね。

「……ま、まぁフィアなら上手く調理してくれるわよね?うん、大丈夫よきっと」

 冷や汗を一筋流しつつ、私はまた誰にでもなく言い訳をする。
 
 しばらく血が流れるのを眺める。これからこれを持って帰らないといけないという現実から目を逸らしながら。

「はぁ……身体強化魔法は苦手なのよね」

 レンじゃないけどこれは避けて通りたくなるわ。とは言え、そうも言ってられない。
 血抜きを待つ間に魔力の回復に勤しみ、あとは休み休みで戻るしかないわね。

 それからしばらくして、バイソンの後ろ脚を掴んで私は孤児院へと歩きだした。

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