兎と聖女、鬼と王女のぶらり旅〜チートだけどのんびり生きたい〜

みどりぃ

2 フィア

 え、自己紹介?えっと、私はフィアです。辺境の村にある孤児院に住んでて、今年で16歳になります。

 あ、実は昔聖女候補とか言われてたんですが、今の私には関係ないのでこの話は置いておきますね。
 
「フィア、洗濯物が終わったら保存食作るのを手伝ってくれ」
「はーい」

 孤児院の責任者――って言えばそうなんだけど、もうお父さんみたいに皆んな思ってるからお父さんって呼んでるロッソお父さん。
 今年の冬は早くから来てしまったから食料を少しでも作りたいって言ってたし、早速始めてるんだろうな。

「ねぇお父さん、今年はご飯足りなくなりそうなの?」
「そうだなぁ、正直厳しいだろうな。このままじゃオウガとレンは飯抜きの日も出そうだ」

 お父さんはオウガとレンに厳しい。っていうより男同士で遠慮がないって感じがするかな?なんだかんだですごく仲が良いしね。

「えー、かわいそうだよぉ」
「だったらあいつらがしっかり食糧とってこないとなぁ。でもどうせ今もサボってるんだろーけどなぁ」
「…………」

 うーん、フォロー出来ない…きっとサボってる。うん、私にもイメージ出来てしまう。

 オウガは皆んなのお兄さんみたいな人。強面もあって町の皆んなには怖がられてたりするけど、実はすごい良い人だって孤児院の家族は分かってる。
 
 でも、レンはよく分からない所がある。普段ふざけた事しか言わないし、優しい時も厳しい時もあるし、よくわからない。
 でもでも、本当はすごい優しいってことを私は知ってる。

 そして、あの2人は兄弟のように過ごしてきて、すごく仲良しなんだ。だからつい2人でふざけだして遊んじゃうんだろうけど。

「で、でも今日は大丈夫じゃないかな?ほら、リリアも行ってるし!」
「リリアの仕事が終われば心配はないけどなぁ」

 リリアはお姉ちゃんみたいな人かな。たまにお母さんみたいになるけど。
 あのオウガが頭が上がらない数少ない1人だし、今日はきっと大丈夫。
 
 でも確かに魔物避けの匂い付けをお願いしてるから、時間もかかるしそれまではあの2人はサボっちゃうかも。

 結局言い返せなくなった私にお父さんは吹き出して笑っていた。
 なんとなく膨れてしまう私を大雑把な感じで宥めつつ、作業を進めていく。


 結局、予定通りの時間には帰ってこない3人。
 ここらへんには魔物も少ないながら出たりする。万が一、なんて心配も当然してしまうけどーー実際のところ大丈夫だと思う。

「やっぱサボってたなぁ。まぁ夜までには戻るだろうし、夕飯でも作っておくか」
「魔物とかに出くわしてないかなぁ…」
「大丈夫だろ。むしろ見つかった方が食糧が増えて助かるぞお?」

 はっはっはと笑いながら言うお父さんに私もつられて笑っちゃった。確かにそうだなって。

 リリアはこの町1番の魔法師なの。火と風に適正が高く、その2つの魔法を自在に操る姿はとっても綺麗なんだ。
 オウガだって負けてない。この町で1番の格闘家だーー喧嘩屋とか言われてるけど。身体魔法の適正がすごく高い訳ではないけど、その体捌きや元々の力のおかげで負けなしって言ってた。
 レンはーーえっと、逃げ足が速いらしい。誰かに勝ったって話は聞いた事ないけど、誰も勝てないって話も聞いた事がある。だって誰も追いつけないから。

 だからきっと無事に帰ってきてくれる。そう思うと美味しい料理を作ろうと思えた。

 
 そしてやっぱり夕方、日が沈む前に3人は帰ってきた。あまり多くはないけど木の実やらを抱えている。

「あ、みんなおかえり!お仕事お疲れ様!」

 玄関あたりでわいわいやってる皆んな。今日はレンがいじられてるのかな?
 私が助け舟を出してもすぐにふざけちゃうから結局皆んなには一喝されちゃうレン。

「へーいすんませんでした。それよりフィア、飯出来てる?」
「え?うん、丁度出来たとこだよ」
「ふふーん、計算通りだな」
「ふふっ、ほんとにー?」
「もちろんだ。俺は毎日緻密な計算に基いて仕事をしてる」
「サボっちゃうのも計算の内?」

 ふふっと笑いながら聞くと、レンは左手の人差し指を口元に立てながら当てて、右手の親指を立てる仕草をした。

 しーっ、て左手でしてるレンに私は両手で口を押さえる。
 そんな様子を見てレンは優しく微笑んでテーブルへと歩き出した。

「フィアの飯は美味いしなー。帰ってすぐ食べたいんだよね」
「そ、そっか。それなら良かったよー」

 たまに見せる優しい笑顔と、珍しい褒め言葉に何故か気恥ずかしくなって目線を別の所に向けちゃう私。なんだろ、なんか顔が暑い?

 寒くなってきたし風邪かな?でも冬を前に寝込んでる場合じゃないっ!と内心で自分を叱咤してキッチンへと向かう。
 気付いたら皆んなもテーブルについてた。

 私はキッチンから料理を持ってテーブルに運ぶ。
 置いた瞬間に瞬く間に無くなっていく料理に、私は嬉しいやら味わって欲しいやらで苦笑いだ。

「うめェな!さすがフィアだわ」
「ほんとねぇ。あんた達に食べさせるのが勿体ないくらいだわ」
「そうだよなー、リリアはご飯作れないから余計もったいなく感じちゃうんじゃない?」
「なんですってぇ?」

 睨み付けるリリアに爆笑してるオウガ、左手を挙げて降参っぽくしつつ右手で食を進めるレンにふっかーい溜め息をつくお父さん。
 
 裕福なんて程遠いけど、こんな生活が好きなの。ずっとこうしていたいな。

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コメント

  • みどりぃ

    本当ですね。真面目に間違えました。修正します、ご指摘ありがとうございます!

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