異能学園 ~異能がクズなんじゃない。使用者がクズなんだ~

1:本当に居るキモい名無し

No.003 何て事ない日常さ

「浅利 海渡です。異能力は【S-500-358-JP-超頑丈-Lv2】。怪我をしない異能力です。ボンゴレって呼んでください、どうぞよろぴく」

 つまらない自己紹介を早口で終え、席に着き、思考する。

 まず、保立は男にもなれる。つまり、メインヒロイン枠には居ないだろう。まずあり得ない。男の娘属性をもつヒロインをメインに持ってくるとかナイナイ。 じゃあ誰だ? もう出会っている? 出会っている女子……既に知っている女子……。

 ―――B D G ト リ オ か!?

 嘘だろ? あいつ等がメインヒロインとか、俺、不登校になるぞ? 駄目だろ、事故物件をメインヒロインにしちゃあ。

氷川ひかわ勝雄かつおだ。異能力は【S-200-357-JP-超鋭利】だ。よろしくな」

 んー? 豆腐を無駄に力いれて取りそうな名字だな。

 はー……。それにしても、わからんなあ。
 俺のクラスは「1-F」。クラスも男子23人に対して女子17人の30人+担任の31人だ。クラスの女子の顔面偏差値は大体平凡。保立の方が可愛い。

 悶々と悩んでいると、チャイムがキーンコーンカーンコーンと鳴き、HRの終了を告げる。

「さーてと……帰るかあ…」
「あ、アサリ君」
「ん? あー……保立…どうした?」
「君の妹って、どんな娘なの?」

 俺ほどのイケメンの妹だもんな。美形だろうとふんだのか。顔は女でも心は男か。ふふん、良いだろう。連れていってやろう・・・・・・・・・

「実物を見た方が早いな」
「うん」
「じゃあ、行くぞ」
「えっ?」
「―――A組教室にな」

 最近妹からハブられて悲しい兄貴こと、浅利 海渡だ。小学五年の頃に【S-100-358-超怪力-Lv2】という異能力に覚醒し、双子の兄である俺をよく「ただれろ!」と罵りながら卍固めで折檻してくる愛すべき妹・浅利あさり海結みゆうはA組にいる。

 いつもの海結ならば帰っているが、今日は海結に勉強の手伝いしてもらう約束だ。

「やあ、海結! 居るか!?」
『あ、浅利さんのお兄さんだ。浅利さんなら帰りましたよ!』
「ふむ! ことごとく裏切る愛妹だ!!」
「涙が…浅利君……」
「……てことだ…今日は無理だ。また明日だ。残念だったな」
「う、うん……?」



「おー、バカ兄貴。遅かったな」
「なぜ裏切った!?」
「あ? あー。忘れてた」
「酷くないか!?」
「日々女の事しか考えてないようなクソ兄貴よりは酷くないかと」
「……」

 このロングヘアーの減らず口が俺の妹、浅利 海結である。

「お前だって時々、いや、毎日男の事を考えるだろう? それと同じだ!」
「うるさい。やる事は考えていない。そこが私とお前の違いだ」
「とうとうお前って……兄だぞ?」
「だから?」
「……明日…美形の友人を紹介してやろう…」
「……っ!?」
「ふふふふ。驚きだろう」
「そ、そんな……このクズ兄貴に友人だなんて……仏か!?」
「しまいにゃ泣くぞ。男泣きをするぞ」
「でも、お前だよ!? あの、人類性愛者の!!」
「おう。俺だ」
「……黙ってたら好青年だもんな…無口キャラを貫いているのか」
「いや? 今朝お前が置いていってくれたお陰でついさっきまで一緒だった。ちなみにすごい喋った」
「っ!? その人……仏だな…ナチュラルクズの相手をするなんて…下手をすれば掘られるというに……」
「在学中は掘らねぇよ」
「危険な予防線を敷くな」
「冗談だよ。ラインも交換して―――」

ピロン!
『保立:こんばんは! 今日は助けてくれてありがとう。面と向かっては言えないけど。美少女っていってくれてありがと。少しうれしかったかも』

「「………………」」
「フッ…」
「チッ……」
「あっ…」

 スマホを奪われた。何をする気だこいつ。下手に手を出したらスマホが高野豆腐がごとく握り潰されてしまう。なにもできない。

『どうも、アホの妹です。たまたまアホのスマホを見てしまい、ちょっと気になったことがあるので奪い取った所存です。『今日は助けてくれて』ってどう言うことですか?』

ヒュポッ!
『保立:不良の元同級生に絡まれていて、それを助けてくれたんです!かっこ良かったですよ!』

『眼科への受診をおすすめします。あと、アホは人類性愛者です。男女見境無く気に入れば食べるような人ですよ?』

ヒュポッ!
『保立:聞かされました』

『思うところはないんですか?』

ヒュポッ!
『保立:僕に彼の性癖をどうこう言う資格は無いです』

「この人、謙虚と言うより内気だね」
「それが保立だ」
「お? 否定的なネガティブクズのお前が珍しい。擁護なんてする奴だっけ?」
「それが海渡さんだ」

『本当に無いんですか?』

 少し時間を開けて。

ヒュポッ!
『保立:強いて言うなれば、もったいないな、です 女の子に集中すれば、モテるのにって思います』

『本人に聞かせたい言葉ですね』

ヒュポッ!
『保立:そんな浅利君も好きですけどね』

「……なぁ、クソ兄貴」
「んぁ? なんだ?」
「好きだってよ」
「……ほぉ?」

 まぁ、友人としてだろ。すぐに惚れるような尻軽は好かん。

「お前はこの好青年を大事にすべきだな……襲うなよ?」
「襲わないわ。それより勉強は?」
「手間のかかる兄だ」

――――――

「兄妹揃って……楽しそうな人だな、この人たち」

 僕は、スマートフォンに笑みをこぼした。
 画面の奥では兄妹が賑やかにしているのだろうな、と勝手な妄想を抱いてしまう。 少し残念な朴念仁な兄と、その兄に少々キツく当たる妹。コメディ漫画の兄妹みたいだ。

「嬉しそうね、お友達が出来たの?」

 母さんがそんな事を訊いてくる。

「うん」
「どんな子?」
「少し、アホっぽいところがあって、朴念仁で……一日目だけど、いっしょにいると、楽しい人」
「ふぅ~ん……」
「どうしたの?」
「なんでも」
「???」

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