みち

papiko184

To.Chika Izumo

Dear  千花
まずは、この便箋を開いてくれてありがとう。

ここには、俺の失踪期間にあった出来事のすべてを書こうと思います。

試験期間と被った俺の失踪期間ーー俺、谷崎健は自殺未遂をしたのではなく、キーケと呼ばれる魔女に、無理矢理過去の世界にタイムスリップさせられていました。
そして、行先は……

君の妹、水穂さんが心臓病で亡くなり、不登校になっていた冬の11月末。

ちょうど、千花。君が不登校になっていた頃の貴女に、俺は会った。

外に放り出された俺に優しく手を差し伸べてくれた君は、俺が失踪する直前の千花そのものだった。
なんていったって、君の妹の部屋を借りて何泊かしてしまったんだからね。

ありがとう。

この言葉しか、やっぱり出てこない。

そして、タイムスリップした先ではルールがあった。
タイムスリップした先で住む自分自身に会ってはならない、ということ。

でも、俺はそのルールを守れず、過去の君を混乱させ、小さな喧嘩になってしまった。仲直りはできたけれど、現在の世界に戻ってくる直前だったから、喧嘩別れしなくてよかった、と安堵しています(笑)


その、喧嘩別れをしてしまう直前の仲直りは、なんと千花、君からの愛の告白が理由だったんだよ!
俺はそんなにモテる男でもないし、第一お世話になりっぱなしで、君の親友から借りていたノートを写す手伝いくらいしかやってあげたことなんてなかったのに……

流石にびっくりしたなぁ、あれには(笑)
だって、こっちの世界では俺から告白しているだろう? ……て、恥ずかしくなってきたから、これ以上は書かないけど。

第一、父親を失った俺がしっかりしないと、母さんが可哀想だろ? いくら君を失うからって、自殺未遂なんてしないよ。

そして、過去からこの世界に帰って来るときには、シーセという魔女に会った。この世の中にファンタジーが存在することに、改めて驚きだったよ。

シーセには、このようなことを言われたな。
「生きて。たとえ何があろうとも、それが貴方の生きる道だから」

今後、千花ーー君が居ない人生を歩むのは、どうしても辛い。

そして、もう一つ言っていなかった俺の夢をここに書きます。

「将来お金に困らない人生を送り、千花に恩返しをする。たとえ、その時、千花や俺自身に何が起こっていようとも」

この手紙の返事は必要ありません。
ていうか、LINE知ってたよな?(笑)

俺からは絶対に消さないから、オランダでの生活が落ち着いたら、連絡をくれると嬉しいです。


それでは、今後の未知なる世界に平和が訪れることを祈って。


2021.12.23
谷崎 健

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