夢中

川嶋マサヤ

3.みおちゃん

  貴人本人もまさか本当に自分が死ぬとは思っていなくて、冗談で言ったのだろうか?
 それとも本当に自分はもう死んでしまうかもしれないと思ったのだろうか?

 後者だった場合、普通は感謝のメッセージを送ると思う。
        
 「ありがとう」や「好きだ」とか俺が貴人の立場だったら彼女に対してそう送ると思う。

 俺と貴人の思考はよく似ていた。だから貴人もきっと感謝のメッセージを送ると思っていた。

 しかし、貴人は違うメッセージを送っていた。

 相当苦しくて、辛くて、そこまで頭が回らないほど必死でみおちゃんに人生最後のメッセージを送ったのだと思う。

 貴人は俺に3年付き合っていた彼女がいた時、よく相談に乗ってくれた。決して俺と彼女は円満な付き合いではなかったので、何回も修羅場をくぐり抜けてきた。そのほとんどが、貴人のアドバイスのおかげと言ってもいい。俺たちの恋に真剣に向き合ってくれた。

 貴人の恋をこのままで終わらせてしまっていいのだろうか。俺は貴人に何もしてあげられてない。

 最後のメッセージが

 「死にそう」

 で終わってしまっていいのだろうか?いやよくない。

 貴人が俺を助けてくれたように俺も貴人を助けたい。みおちゃんとしっかりお別れをして欲しい。心の底からそう思った。

 しかし、たかとはもうこの世にいない。

 そんなことを思いながら、あまり長居をしては迷惑だと思い、今日のところは帰ることにした。

 帰り際に丁度、貴人の母親が帰って来たので挨拶をした。そこには、いつもの明るく挨拶をしてくれる貴人の母ではなく、目が少し腫れており、目の下のクマも酷い状態にある母親が居た。昨日から寝れていないのだろうか。

 「身体には充分に気を使ってください…、貴人も心配してしまいます。」

 気休めにもならない言葉しか思いつかなかったが、ありがとう。と元気の無い笑顔で対応してくれた。それと最後に、

 「お葬式までの二日間、貴人はこの部屋にいるから良かったら会いに来てやってね。」

 もちろんです。と伝え、車の止めてある駐車場に向かった。


 





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