夢中

川嶋マサヤ

2.突然

 

 普通免許を取りに行っていたのではない。普通免許は高校三年生の時に取っていたので大学1年生になった今回は普通二輪免許を取りに行っていた。

 貴人が原付を持っていて、1回乗らしてくれたことがあった。原付だったけれど今まで感じたことの無いような風の感覚がそこにあった。50cc以上のバイクはどんな風が待っているのだろうと思い、普通二輪免許を取りに行くとことにした。
  
 俺はよく貴人に、
「免許取ったら一番にドラスタで迎えに行くからな!」
 と言っていた。

 ドラスタとはYAMAHAのバイクでドラックスターのことだ。
 
 普通二輪免許を取ってから1年の間は後ろに人を乗せては行けないのだけれど、俺は早く貴人に250ccの爽快な風を体感して欲しかった。

  免許センターで教官の説明が終わり、トイレ休憩している時だった。

 トイレから戻り、スマホをいじっていると、一通のLINEが届いた。
 
 内容を確認してみると、

 「先日、山川 貴人くんが亡くなりました。」
 
 10時16分、クラスLINEのグループで当時学級委員だった人が理解不能な文書を送信していた。

 最初は何の冗談だよと、心の底から思っていたけれど、冷静に考えてみれば貴人からのLINEが昨日から来ていない。そもそも、こんな冗談を言う必要があるのか、いや必要ない。

  真っ先に貴人にLINEした。
 
 「おい生きてるよな?」

  既読がつかない。

  うそだろ?

  教官が戻ってきてトイレ休憩が終了した。

 そこから色々免許の説明されたが、次は免許の写真撮影ということ以外覚えていない。

  正直、目の前に提示されている情報に頭が追いつかない。至ってシンプルなはずなのに。

 「貴人が死んだ。」

 学級委員の悪質なドッキリではない限りこの情報は至ってシンプルなはずだ。

 なのに、細胞レベルで自分の体が、心が、その情報を受け付けない。

 この教室はクーラーがかかっているのにも関わらず、体全身が熱い、脳が沸騰しそうだ。

 全身の熱さに耐えながら、説明が終わり、写真撮影が始まるまで再び休憩に入ったのでスマホをもう一度確認した。

 貴人からのLINEは来てない。貴人のトークルームを開き、既読ついてるか見てみた。そしたらなんと、既読がついていた。

 「え?生きてるのか?」

  もしかしたら生きてるかもしれない。1パーセントでも可能性があるならそれを信じたかった。

「なんだ生きているじゃん!驚かせんなよー」

「ごめんごめん、ちょっとドッキリしようぜってなってふざけちゃったわ」

 心の底からこういった会話をしたかった。

 だが現実は違った。

 既読が付いているが一向に返信がない貴人へもう一度LINEをした。

 「頼むから嘘って言ってくれ。」

 貴人にもう一度LINEをして約2分後に貴人から電話が来た。

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