栴檀少女礼賛

マウスウォッシュ

明日も元気で居る為に

 僕はアミを保健室に連れて行った後、自分の荷物を取りに教室に戻った。そして荷物をまとめて廊下に出ると、クイズ男テツと出会った。


「怎麼生。」


「説破。」


「明日もまた、今日と同じように元気で居られる確率は100%である。この文言は正しいか?」


「否、正しくない。いつ何時、自分に雷が落ちてくるか、車に撥ねられるか、分かったもんじゃないからな。」


「そういう事だ。死ぬ危険性なんて、理由のない悪意と同じくらい、そこら辺にゴロゴロ転がってる。俺らが死なない程度に日常を送れてるのは、無意識のうちに気をつけてるからだ。」


「そうだな。だからタイミング悪くフッと気を抜けば、死ぬ危険性なんてビュンビュン上がる。」


「逆に、死のう死のうと気を引き締めてるヤツほど、死ねんもんになってるっつーのが、世の中のヘンテコリンな仕組みなんだな。」


「今日は何しに来たんだよ。」


「俺だってアキバ先輩とは何回か話したし、図書室でマキ先輩を通じて話すくらいの仲は持ってた。」


「それで?」


「いい人だなって思ったんだ、アキバ先輩のこと。だから分かんないんだ、いい人ほど辛い目に遭わなきゃならないっつー、この世の中の変な仕組みが。」


「僕に聞けば分かるかもってか?」


「いや、お前には聞くつもりは無かった。アミに聞こうと思ってたんだ。だけどアミはどうやら今話せるような感じじゃないらしいな。」


「あぁ、今はそっとしといてやって欲しい。」


「アミだってそうだ。アイツもいいヤツだ、だから例に漏れず辛い目に遭ってる。なんなんだろうな、こんなクソみたいな仕組み。」


「誰が作ったわけでも無いだろうさ。強引かつ簡単に『神様のせい』だって片付けることも出来るけど、それじゃ何も変わらない。」


「ハヤテ......お前なんか変わったな。」


「え?」


「ちょっと前までのお前なら、きっと『神様のせいだ』で片付けてたと思う。でも今、それを客観的に捉えて、それじゃいけないと切り捨てた。」


「......アミのお陰かもな。」


「なら、お前は返さなくちゃな。」


「何を?」


「お前は彼女から知恵の光を授かった。それに対してお前は何を返すんだ?」


「僕なんかに彼女に返せるものなんて無いよ。アミは全てを持ってるし、全てを知ってる。僕が持ってなくて彼女が持ってるものは沢山あるけど、その逆は無いよ。」


「お前がそう思ってる内はそうだろうな。」


「どういうこと?」


「バカ、答えは自分で見つけろ。」

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