栴檀少女礼賛

マウスウォッシュ

約束のジッポライター

 ケンジは棒立ちのアキバに向かって全力疾走し、その勢いを全て活かしたまま全力でブン殴った。


「ぐっ、何すんだよ!」


「テメェこそ何してんだよ! この前オレにあんだけ言っておいて、テメェだけノコノコさぼってんのか?」


「別にサボってたワケじゃない......」


「じゃあ何だ!?」


 ケンジが声を荒らげた瞬間、近くのトイレからマキが出てきた。そして殴られて地面にケツを付けてるアキバと、怒りで顔を真っ赤にしているケンジを見て、大体のことを把握した。


「こんにちはケンジくん。」


「あぁ? 何だマキ、お前には用はねぇ。」


「貴方が私に用は無くても、タイヨウには用があるんでしょ?」


「そうだ。」


「なら残念、先約は私よ。」


「どーいうことだよ。」


「タイヨウから聞けば?」


「おいアキバ、どーいうことだ?」


「俺は......マキに勉強を教えてもらう。」


「はぁ?」


「マキが、他の女から俺が勉強を教えてもらう事が気に食わねぇって......だから俺はマキから勉強を教えてもらう。」


「てめぇ......一人だけ別で教えてもらうってか? 俺らとは勉強できねぇってか?」


「そうは言ってない! 再テストはキチンと合格してみせる! ちゃんと甲子園行けるようにしてもらう!」


「そーいう事じゃねぇだろ?」


「あぁ? 何が違ぇんだよ?」


「俺らは野球やるんだろ? チームで戦うんだろ? だったらテメェだけスタンドプレーするってのは違くねぇか? あぁん?」


「別に勉強と野球はカンケーねぇだろ。」


「勉強もマトモに一緒に出来ねぇような奴とな、野球を一緒にやれるとは思えねぇな。」


「かっ......抜かせ。」


「お前は知らないだろうけどな、アミから『今回から理解度の高い人がミニ先生になって、理解できてない人に分かりやすく教えてもらう事にします。』って言われたんだよ。」


「は?」


「どういうことか分かるか? 協力プレーだよ協力プレー、野球の同じで皆の力合わせて敵をブッ倒してやろうって事だよ。」


「......」


「テメェが誰から教えてもらおうが構わねぇが、ダチ取るのかオンナ取るのか、よォーく考えてから明日こいよ。」


 ケンジは胸ポケットに入ってたジッポライターをアキバに投げつけ、その場を後にした。


「タイヨウ、行こう?」


「あぁ......」


 アキバは、ただただ投げつけられたジッポライターを見つめ、マキと共にその場を後にした。

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