禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか?

ノベルバユーザー399768

第90話・テロリストエッサ。

(んんっ〜?目の前が一度真っ暗になったけろ、もうコンティニューは終わったんだべぇか?)

 エッサは恐る恐るも、ゆっくりと閉じていた目を開けて行きました。目の前に広がる景色には見覚えがありました。紛れもなくエッサが殺された霊峰ミルドの山道です。

(どうやら、戻って来れたんだべぇな。あのオバちゃんはオラが殺されてから、2週間後ぐらいだと言ってたべぇ。さっさとエミィの領地からは逃げるんだべぇな。)

 今でも地下迷宮の入り口には沢山のエミィの兵隊が配置されています。地下迷宮を手に入れたい隣国や他国からの敵兵がやって来ては、レベル50を超えるエミィの兵隊に返り討ちにあって逃げて行きます。こんな危険な場所からは出来るだけ早く、逃げ出したいです。

(オラは地下迷宮探索初期の探索隊長だべぇ。多少は隣国にも顔が知られているはずだべぇ。まあ、今でも知っている人がいる方がビックリだべぇがな。)

 エッサが生きている事は、エミィのミルド国にも、隣国のエプト国にも知られてはいけません。エミィ側に捕まれば死刑、エプト国側に捕まれば捕虜か、有力な情報を吐くまで拷問です。どっちにしろ捕まれば、マトモな目には遭いません。

 エッサはタッタッタッタッと小走りでエプト国を目指して走り出しました。ちょうど目的の物もエプト国にあるので都合がいいです。元々は地下迷宮が発見されなければ、空の上に浮かぶラスボスの城に向かうはずでした。

(くっふふふ。昨日の敵は今日の友というだべぇ。未来の敵とお友達になれれば、オラの逆転勝利だべぇ。もう愛とか正義とかどうでもいいべぇ!オラはラスボス側について、恐怖と暴力で世界を支配してやるべぇ。)

 エッサに限って大量虐殺とか人類抹殺とかは考えていないようですが、それでもメインシナリオにも、世界にも大きな影響を与えてしまう事は確かです。それが良い事か悪い事か分かりませんが、どうなるか分からないからこそ危険なのです。

「ふぅふぅ。体力が上がった訳じゃないべぇが、お腹の贅肉がなくなるだけで走りやすいべぇな。これからは経験値でアップするステータスだけでなくて、体重や見た目も考えないとダメだべぇ。」

 エプト国の王都は目の前です。ミルド王国の王都の印象は山のような城ですが、エプト国の王都は湖畔の水上要塞です。大きな湖の真ん中に王都が1つ浮かんでいました。

 ◆

『ガヤガヤ、ガヤガヤ。』と王都の中は賑やかです。沢山の果物と花が売られています。こちらでは果物の栽培が盛んなようです。

(さてと、金も武器もアイテムもないべぇ。そもそも飛行船が買えるお金があっても操縦できないべぇ。やるしかないべぇな。オラはこれから悪の道を歩くんだべぇ。うんだぁ。)

 エッサはエプト国の王都にすんなりと入る事が出来ました。定期的に王都と湖の端を往復する船に乗り込むと、チェックもなしに入れました。どうやら、エッサの顔を覚えている人はいないようです。

 キョロキョロと目的の飛行船乗り場を探します。料金は少し高いですが、船では直接行けないような、陸地のど真ん中にある都市に向かう事が出来ます。

(あっ!あったべぇ。あったべぇ。さてと、今のオラには拳と魔法しかないべぇが、レベル差で乗り切るんだな。)

 エッサが空中に浮かぶ飛行船に乗る為に高くて長い階段を上って行きます。小さな搭乗口には乗船料金を受け取っている男性船員がいました。

「ようこそ飛行船へ。お一人様ですか?」

「お一人様だべぇ!これは挨拶がわりだべぇよ!」

ブン右ストレートバァギィダメージ138サァーーー消滅。』

 エッサにいきなり殴られた、爽やかな笑顔の船員は、灰になって消えてしまいました。この世界のレベル1の住民はだいたいHP100程度しかありません。エッサが殴ると死にます。

「「「きゃあ〜〜〜!人殺しよ〜〜〜!」」」

「………はっ!違うべぇ、軽く殴っただけだべぇ!殺すつもりはなかったべぇ!そこのお前!動くと殺すべぇよ!」

 エッサもパニックですが、飛行船の乗客達もパニックです。大抵の乗客達はレベル1です。中には冒険者もいますが、下手に動いてエッサを刺激すると、被害者が増えてしまうので軽はずみには動けません。

「私が船長だ。頼むから乗客達だけは下ろさせて欲しい。金ならすぐに用意するから、乗客達には手を出さないでくれ。」

 勇敢な船長さんですが、エッサは金目的の犯罪者ではありません。低級犯罪者だと思われてエッサは怒っています。

「オラの事を犯罪者だと思ってるべぇな!巫山戯んじゃないべぇ!オラは世界を救う英雄だべぇよ。金なんかいらないから、さっさと船を上に飛ばせばいいんだべぇ。早くしないと1秒毎に乗客を殺して行くべぇよ!」

(何を言ってるんだ?酒に酔っているのか?だが、これ以上、下手に刺激したら何をするか分からん。とりあえずは要求通りに船を飛ばして、説得を続けてみよう。)

 エッサの要求通りに飛行船は出発しました。目指すは上空にあるラスボスの居城です。エッサと共に乗客、船員52名がラスボスの城に向かいます。








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