禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか?

ノベルバユーザー399768

第70話・賢者と聖騎士。

「遅い。遅過ぎる。何処かで寄り道でもしているんじゃないの?」

 エミィは本を読みながら、エッサの帰りを待っています。もう、お昼を過ぎて、午後1時になってしまいました。このまま待っているだけだと時間の無駄でした。

 エッサならベッドの中の本が無くなったいたら、すぐに私が本を持っている事に気がつくはずよね。ルナはいないし、ロックタが盗ったなんて疑いもしないでしょうね。だとしたら、私が本を持っているけど、中身は読んでいない風に思わせるのは、どうかしら?それとも、私には本の中身がエロ本に見えたから、絶対に返してあげないと言った方が信じるかしら?とにかく、返さないのは決定ね。

「問題があるとしたら、力尽くで私から本を奪おうと考えた時ね。ルナとロックタと比べてもそうだけど、私だけが戦闘能力が低過ぎるのよ。明らかにエッサよりも強くなったら困るから、回復しか出来ない職業にしたとしか思えないわね。」

『パラパラ。』とエミィは本のページをめくって、職業・僧侶の説明が書かれたページを読み始めました。何か強くなるヒントが書いてあるかもしれません。

 レベル5で攻撃魔法『トルネードショット』を覚えるじゃない!あのブタ野郎、戦力が欲しいなら、回復魔法よりも、こっちを教える方がダンジョンで100倍役に立つじゃない。他にも隠していそうな事が山程あるんじゃないの?

『パラパラ。パラパラ。』

 上級職は2つしかないのね。攻撃魔法と回復魔法の使い手の『賢者』と、剣技と回復魔法の使い手の『聖騎士』があるのね。賢者は今までとほとんどステータスは変わらないようだけど、聖騎士は魔力が極端に落ちるのね。

「強力な攻撃魔法は確かに魅力的だけど、MPがなくなったら終わりね。MP回復薬で補給すれば長期戦も可能だろうから、実際に問題は少ないだろうけど、沢山の魔法の詠唱文を覚えるのと結構大変そうね。」

 技名だけで剣技が使える聖騎士と、魔法詠唱文が必要な賢者、エミィがなれるのは片方だけです。エッサやルナと戦う事を考えると、魔法詠唱中に狙われるだけの賢者は恰好の的です。けれども、聖騎士でも勝負は互角とは言えません。エミィには助っ人が必要でした。

 ここは、エッサの戦力を奪いつつ、私の味方を増やした方が良さそうね。だとしたら、ロックタしかいないじゃない。アイツが今、喉から手が出るほど欲しかっているのは称号よね。エッサは気づいていないようだけど、称号を獲得する条件はだいたい分かっているのよ。ロックタは闘技場にいるだろうし、実験がてら、試してもらいましょう。

『ガサゴソ。ガサゴソ。』と洋服タンスから、ルナの私服を取り出して行きます。見るからに女の子っぽい、ヒラヒラしたスカートや可愛らしい上着だけを集めました。自分の服は汚れたり、破れるかもしれないので使いたくないようです。

「ちょっと、何でアイテムボックスに収納出来ないのよ!」

 ルナのアイテムは、エミィのアイテムボックスには入らないようです。紙袋に服を入れて、急いで闘技場に向かいます。途中で八百屋に寄って、買い物もしないといけません。

「残り時間は1時間ちょっと、ロックタを説得する時間も考えるとギリギリかもね。」

闘技場の試合に出場するには、午後3時までのエントリー締め切り時間までに登録した人だけです。間に合わなければ明日になってしまいます。そうなると、エッサが地下迷宮の探索に行くかもしれないので、ロックタと2人きりになる事が難しくなります。

「ねぇ、オジさん?大根とネギと人参なら、どれが一番、剣の代わりになる武器かしら?」

「エッ〜と、よく分からんが、持ちやすさならネギで、硬さなら人参かな?大根は剣というよりも棍棒に近い感じかな。一体、何に使うつもりか知らないが、ウチの野菜はオルベ村から直送しているから、どれも美味しいよ!嬢ちゃんの好きなの買って行ってよ。」

 エミィはネギと人参を買うと、闘技場に走って行きました。今日だけが、ロックタを自分の仲間に引き込む絶好のチャンスです。見逃す訳には行きませんでした。









コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品