禁断のアイテム『攻略本』を拾った村人は、プロデューサーのシナリオを壊せるのだろうか?

ノベルバユーザー399768

第55話・王都の牢獄。

 王都の地下には、暗くて一年中冷んやり冷たい牢獄がありました。多くの罪人がここに連れて来られては、数週間で奴隷市に売られるか、軽い罰を行なって解放するか、決められていました。

『ガァンガァンガァン!』

「出せ!出せ!出さないとぶっ殺すわよ!」

 エミィは履いていた靴で鉄の檻を激しく叩いています。靴が壊れるのが先か、やって来た看守に怒られるのが先か、今回はそれ以外だったようです。

「エミィ、何やっているべぇ。そんな事をしてたら、いつまで経っても、ここから出してもらえないべぇよぉ?」

「この野盗め!私を変態の貴族に売るつもり。それとも、王様の慰めてものに使うつもりねぇ。許さない、絶対に許さないんだから!」

 こんな凶暴な女を外に連れ出しても意味がありません。このまま牢屋の中に入れて置く方がいいかもしれません。でも、戦力的には僧侶がいると安心して戦えます。何とか説得して大人しくさせるしかありません。

「エミィ、オラの事を覚えているけろか?オラはエッサだべぇ。信じられないと思うけろ、これが真実なんだべぇ。」

「私が知っているエッサと顔が全然違うわ。信じられる訳がないでしょう。それよりも私をどうするつもり?このまま牢屋に閉じ込めて置くつもりじゃないんでしょう?」

 大人しくなったフリをしているけろが、まだまだ油断出来ないべぇ。あの女は平気でオラに石ころを投げつけて来た悪魔だべぇ。騙されたら駄目だべぇ。

「簡単にオラの事を信じてもらえるとは思ってないべぇ。エミィが望むなら、オルベ村まで送って行くべぇ。どうするかはエミィの好きにしていいんだべぇ。」

「私がそんな手に騙されると思ってるの?人がいない場所まで連れて行って何かするつもりなんでしょう?はっ、残念でした。あんたと2人きりで一緒に行く訳ないでしょう。」

 ここまでオラの事を信用しないなんて、流石に引いてしまうベェ。昨日の夜の所為で今のおかしな状態になってるべぇな。だとしたら、もう一度同じ事をやれば元に戻るかもしれねぇ。でも、無理矢理にやってしまって戻らなかったら、今度はオラが牢獄行きになってしまうべぇなぁ。困ったべぇ。

「エミィがオラの事を信じてないのは、よ〜く分かったべぇさぁ。だったら、お城の兵士さんにオラの兵士長権限でお願いしてみるべぇさぁ。それだったら村に帰るんだな?」

「あんたの仲間の兵士と一緒に行けって言ってるの?田舎の女だと思って騙されると思わないでよね。やっぱり、他にも仲間がいたのね!この悪党共め、地獄に落ちればいいのよ。」

 あぁぁぁぁ〜〜、何もかも疑い過ぎだべぇ!もう、どうしたらいいかオラ分かんないんだべぇ!はぁ〜。でも、このままエミィをこんな場所に放って置く事は出来ないべぇ。だってオラのパーティーの戦力増強には必要不可欠な存在だべぇ。エミィがオラの事を悪党だと思っているんなら、悪党になるしかないべぇ。

「ふぅ〜、騙されねぇべぇか。あぁ、そうだべぇ。あんたを他国の変態貴族に50万Gで売るつもりだったんべぇよ。でも、あんたに僧侶としての才能があったから、オラが組織に隠れて連れ出したんだべぇよ。家に閉じ込めてちょっとずつ洗脳して、オラの僧侶で伴侶にしようとしてたのに、薬の量を間違えてしまって、こんな厄介な事態になってしまったべぇ。」

「やっぱり、そう言う事だったのね。そうだと思っていたのよ。この人でなし!」

 エミィはエッサが本当の事を言っても全く信じてくれませんが、エミィの考えている悪党が言いそうな言葉は簡単に信じてくれました。

「さてさてだべぇ。ここからが本題だべぇ。エミィに残された選択肢は3つしかないべぇ。1つめはオラのパーティーメンバーに入って僧侶として働いてもらうべぇ。もちろん酷い事はしないべぇ。でも、週一で伴侶としても、しっかり働いてもらうべぇよ。」

「お断りよ!あんたと一緒に生活したいとは思わないわ。」

 何処で覚えたのか、エミィは右手の中指だけを立てて、エッサに絶対に嫌だと教えています。

「くっくくく。2つめは奴隷市で売られて、変態の金持ちに買われるんだべぇ。エミィは美少女だから高値がつくのは分かっているべぇ。オラの手持ちの金じゃ絶対に買えないべぇ。変態貴族に1ヶ月ぐらいボロ雑巾のように弄ばれて、飽きて殺されて埋められるべぇなぁ。」

「やっぱり、私が可愛いから。私は小さな村で、そっと暮らしていたかっただけなのに、オーディン様はそれさえも許してくれないのね。」

 オーディン様はいたとしても、最高神じゃないべぇ。本物の最高神は小太りの岩田だべぇ。

「そして、3つめは今すぐにお前を殺して口封じするんだべぇ。オラが組織の商品を黙って盗った事がバレたら、オラの命が危なくなるんだべぇ。さあ、選ぶんだべぇ!オラの僧侶で伴侶になるか、今すぐ剣で滅多刺しにあって死ぬか、早く選ぶんだべぇ。10・9・8、おっと騒いだらその瞬間に殺すんだべぇ!7・6」

 エッサのカウントダウンが始まりました。もう手には剣を持っています。エミィは震えるだけで何も喋りません。

「0だべぇ。昨日の夜は楽しかったべぇ。死んでもらうべぇよ。」

 ガァチャガァチャと牢屋の鍵を使って、エミィが閉じ込められている牢屋の中に入って行きました。

「なぁります。伴侶になぁります。」

 震えるような小さな声でエミィは何とか口を開くことに成功しました。けれども、エッサには届いていなかったようです。

「なんだべぇさぁ?小さな声で聞こえないべぇ。もっとはっきり言って欲しいべぇ。」

「僧侶にも伴侶にもなりますから、助けてください。お願いします。助けてください。」

 地面に頭をつけて、涙を流しながらエミィはエッサにお願いしています。強気な態度や発言が嘘だったように、大人しくて従順な女性になってしまいました。

「最初からそうすればいいんだべぇ。それと王都から1人で出る事は出来ないべぇよ。門番も、船着き場も、オルべ村にも、オラの手下を配備したべぇ。一生、オラから逃げられないべぇ。」

「チッ。」

 エミィは大人しいフリをして、オラの隙を見つけて必ず逃げ出そうとするはずだべぇ。先に無駄だと思わせねぇとな。エミィとは、そういう女だべぇ。うんだぁ。











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