神業(マリオネット)

tantan

1ー84★手がかり…

今はトラボン、トーレとの話し合いが終わった翌日でフェンと話し合いをしている。
本当は三人での話し合いの後、直ぐにロスロー商会に向かったのだが…
さすがに当日は無理だと言われて翌日の夕方ならということでアポをとり今に至った。


『あー、そのマークはミモザ支店のものですよ』


昨日、トーレが書いたマークと言うのをフェンに見せると、フェンがアッサリと教えてくれた。


『へー、ミモザ支店なんだー。特殊な商品とかにつける特別なマークとかじゃないんだ』
『他所は分からないですけど、うちの商会ではお店ごとにマークを統一していますよ。でも、それが何かあるんですか?』


昨日トーレの話を聞いてミモザのお店と言うのは可能性の一つとしては考えていた。
だが彼女の話と地図で位置を確かめると、ミモザのお店である場合は山を一つ越えることになる。
地形的には、この都市の方で取引をした方が楽なはずなのだが…


『えーっと…老人の足でこことミモザを往復するのって、どのくらいの日数かかる??』
『はぁいぃ?老人の足って…えっ…?どういうことなんですか?』


突然の俺の質問内容にフェンは、困惑しているようだ。
確かに自分でも何を話の本筋に出せばいいのか分かっていない。
恐らく、なるべく情報を隠しながらフェンから情報を引き出したいなどと都合よく考えた結果なのだろう。


『なー、この部屋大丈夫だよね?』


このままだと話が纏まらないと考えた俺は、フェンにはある程度本当のことを話すことにした。


『はい、情報に関しての対策はしているので大丈夫ですよ』
『実は、ある老婆がリエン山の近くで、このマークのついた袋を持って歩いてたらしくて…』
『山の近くですか?一人で??』
『そうらしい…あの辺りってモンスターとか獣とかで結構、危ないところだろ?』
『確かに危ないですね。老婆が一人ですか?』


フェンが腕を組みながら信じられないと言うような顔をしている。
彼がミモザまで行く時は護衛まで雇っているだけに、老婆が一人と言うのはよっぽど信じられないのだろう。
俺も一度、その道のりには途中からだが同行した経験がある。
時間的にも数日かかるのはもちろん、途中数回に渡ってモンスターと戦闘になった。
老婆が一人でと言われて、納得できないのは同感だ。


『それに数日前に、さぁ…』
『数日前ですかぁ?んー…、あー…、大変だったようですね…』


やっぱり、フェンの方にも情報は入っていたようだ。
あえて触れてこなかったのは、彼なりの気遣いだったのかもしれない…。


『あー、まー、その辺は怪我とかも魔法で治る程度だったから何ともないんだけどね』
『聞いてきたということは…アタルさん、その老婆が関係あると考えているんですか?』
『分からないんだけど…探るところが今のところは、そこしかないんだよね…』
『なるほど…怪しいと言うのであれば、力にはなってあげたいんですけど…。ただ…、一口に探すって言っても…不可能に近いような気もしますよ』
『そうなの?』
『はい、恐らくミモザの支店に行って帳簿を見てという感じになると思います。老婆が持っていた袋ってことは…例えば買ったのがポーションとかだとして、何日も前に一人の老婆がポーションを買ったかどうかなんて誰も覚えていないですよ』
『あー、言われてみれば…確かにね…』
『あのー、因みになんですが…その老婆って…誰の情報なんですか?』
『トラボンさんだよ』
『へー、アタルさんって、あの方と情報交換するんですね!ビックリです!』
『いやぁ、情報交換というほどでも無いと思う…話したの二回目だし』
『後アタルさん、もう一つ聞いてもいいですか?』
『えっ?何?いいよ!』
『都市の外って大丈夫そうですか?そろそろミモザに行かなきゃなと思ってたのですが…今回の事件ですからね』


一般的に今回の事件ではモンスターと火事が合わさった偶然の結果ということになっている。
詳しい情報についてはロスロー商会にも入ってきていないらしい。
と言うか調査員の方には正直に話したのだが…
何にしろ悪魔の石像ガーゴイルについては証明できるものがないので、あまり深くは情報が公開されていないようだ。


『火事の方は大丈夫じゃないかな?外壁から結構離れたところだったし、モンスターは追い払っているしね』
『なるほど、ありがとうございます。後は、トラボンさんにも直接話を聞いてみましょうかね』
『え?トラボンさんに?なんで?』
『その老婆って、リエン山の所にいるんですよね?一応、近々ミモザまで行く身としては用心のために仕入れられる情報は多い方がいいですからね。もちろん、ミモザまで行ったら帳簿見たり最低限出来ることはやりますよ。分かることがあれば、もちろんアタルさんにも報告しますから』
『ありがとう。でも確信ってほどの情報でもないから、頭の隅に入れておく程度で十分だよ』


出来ることであれば、フェンには頼りたいとは思う。
だが彼にも彼なりの都合というのがあるはずだ。
あまり迷惑はかけられないので、気にしないようにと言うことにした。

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