神業(マリオネット)

tantan

1ー74★従属のトゥリング

『足の中指は従属の効果があると言われています』


トラボンは、ごく普通のことのように話した。


『え?いや、トラボンさん…従属の効果って言っても…その…トゥリング自体が何処にも…』


(というかトーレには両足の中指自体がない…)


『はい、確かに無いです。でもそれは、トーレが従属のトゥリングから逃げた結果だからです』
『従属のトゥリングから逃げた?え?前に話したときは、そんなこと言ってなかったですよ…』


俺は自分の記憶が間違っているのかと思いトーレの顔を見た。


『トーレ、そうなのか?』


トラボンがトーレに聞いてきた。


『あまり聞きたくないようでしたので、詳しくは話していません』
『そうなのか?ん~…』


ここでトラボンが少し困ったというような表情をしている。


『あー、トラボンさん、重要なことが分かれば…』


俺はすかさずトラボンに話しかける。
正直、トーレにとっては触りだけなのかもしれないが…
あの話は俺の中でこたえた…
出来るのであれば、あの話を深く掘り下げたくはないと思ったからだ。


『分かりました。ではご説明します。と…その前に…ナカノ様は奴隷というものを持ったことはありますか?』
『いえ…、というか…俺の故郷では、奴隷制度自体が廃止されていましたからサッパリ』
『それは何とも良い故郷なのでしょう!』


トラボンが非常に感激した表情で声を大きくあげた。
トーレの方は、自身に合った過去と照らし合わせているのだろう。
全く信じられないという様子で俺を見ている。


『あっ…とは言っても…奴隷についての知識などはあるつもりですから、その辺りはご心配なく』
『はい。今回、ご自分から話を聞きにきたわけですから、その辺りの知識はあると私も思っています。ちょうど良いのでトーレを例にして、このまま話していこうと思いますが、宜しいでしょうか?』


トーレのこと…
触りではあるが過去を知っている俺にとっては嫌な予感がするのだが…
他にいい例というものを俺の方で提示できる自信がない。


『はい、いいですよ』
『では、ナカノ様の方でも今までの話から、両足の中指にトゥリングをつけると従属のトゥリングとして成立するというのは予想がつくと思います。ただ、それとトーレの両足の中指が無いのがどう関係あるのか?ということだと思いますが、お間違いないでしょうか?』
『そうですね』
『トーレの両足の中指に誰かがトゥリングをはめ従属のトゥリングを成立させると、トーレは奴隷になってしまいます。とは言っても、これは善からぬことを研究した者が発見したやり方なので方法が特殊です。そのために、ある程度特殊なトゥリングというのが必要です。ここまでは大丈夫でしょうか?』
『大丈夫です』
『次に、これは足だけではなく手の指輪の方にも言えることです。思いを伝えるために指輪やトゥリングを相手に送り指定の指につけることで効果を高める。では効果というのは、どのくらいの間続くと思いますか?』
『え?それは指輪をしている間じゃないのですか?』
『はい、おっしゃる通りでございます。では話をトーレが奴隷になったときに戻しましょう。ここで奴隷になったトーレはいつまで奴隷だと思いますか?言い方を変えると、トゥリングをはめる方はトーレのことをいつまで奴隷にするつもりではめると思いますか?』
『えっ…いつまでって…あっ…、そういうことか……。ん……。でも…、ちょっと待って…』


ここでトラボンが、ある程度特殊なトゥリングといった意味が理解できた。
もし従属のトゥリングの成立がトゥリングをはめている間しか効果を発揮しないものであるならば…
誰にでも簡単に取り外しができるものであるとすれば、従属の成立というのは何の意味もない。
単なる飾りでしかない。
でもそうすると…
考えたくないことが頭の中に浮かんでくる。


『恐らく、ナカノ様の頭の中では徐々に分かってきたようですね。トゥリングをはめる方は期限なんて考えません。というか寧ろ、ずっと奴隷にしようと考えます』


(やっぱり…)


『外せないということですか…』
『その通りです。これが従属のトゥリングに関する大まかな流れと言えます』
『従属のトゥリングで奴隷になると、どんなことが出来るとか出来ないとかはあるんですか?』
『それについては、トーレに説明させても宜しいですか?』


俺は迷った…
トーレのリミッターが切れるような話しはしたくないからだ。
だが聞いておかないといけないような感じがする。
どうしようかなと思いながら、トーレの方をふと見た。


『大丈夫ですよ、ナカノ様。前回のようにはなりません。感情はコントロールできていますから』


彼女はニッコリと笑いながら言ってきた。


『今のトーレであれば私も大丈夫だと思います』


トラボンもトーレの表情を見ながら言ってくれる。
今のトーレ・・・・・
トラボンのこの言葉がやけに頭の中に残った…
違う場面のトーレというのがあるのだろうか?
そう思ったのだが話を聞く分には問題なさそうなので、彼女の話を聞くことにした。

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