神業(マリオネット)
1ー55★それぞれの思惑
『そのネバネバは、まだあるの?』
セアラがアンテロに訪ねる。
俺とエルメダが根の密集地帯から抜け出した後、エルメダとセアラを交代することにした。
氷鳥の攻撃を受けるだけであれば、セアラとソフィアでも全く問題はない。
だが攻撃面と言うことを考えるのであれば、遠隔攻撃の手段を持っていないセアラだと決め手に欠いていた。
本来なら俺とエルメダ、アンテロ、ソフィア、セアラの5人で氷鳥に一斉攻撃と言うのが早いかもしれない。
だが、ヘンリーとラゴスの安否を一刻も早く確かめる必要があるために、氷鳥の処理はエルメダとソフィアの二人に任せることにした。
『はい、ネバネバというか…単なるスライムの粘液なんですけど、まだまだ十分にあります』
アンテロは軽い感じで答えるとアイテムボックスを出現させた。
アイテムボックスを見てみると、ぎっしりとスライムの粘液入りの試験管が敷き詰められている。
『えっ…それって、スライムの粘液だったの?』
スライムは貿易都市のみならず、この大陸であればどこにでもいると言われる珍しくもないモンスター。
どろどろとした粘着性のある液体のようなものが固まった外見のモンスターで、決まった形はないと言われている。
液状の外見のために攻撃力も防御力も低く特別なスキルもない。
そのために遭遇時には戦いに慣れていない者でも押し潰すような攻撃を加えることにより一撃で倒すことができる。
ただし、攻撃後は体を形成している粘着性の物質が武器に付着するので、戦いたくない場合は追い払うことが殆ど。
また外見を形成する粘着性の物質は、乾燥前は水で簡単に洗い流せる。
洗い流す水がない場合や大量の粘液にさらされると鳥もちのように絡み付く。
乾燥すると接着作用があり最近では家の建設などの際に利用されることが多い。
なぜアンテロがわざわざそんなものを用意していたのかは気になるところだが、今はそんな小さなことを責める暇はない。
俺とセアラ、アンテロの3人は打ち合わせも、そこそこにヘンリーとラゴスがいるであろう黒い霧の方へ歩みを進める。
恐らくスライムの粘液を大量に黒い霧へぶつければ虫を撃退できるはずだ。
そんな俺たちの浅い考えに敵も当然、気づくはず。
悪魔の樹の方も俺とエルメダが根から脱出したのに気づいた様子で、体を捻らせこちらをじっと見つめてきた。
だが先程まで俺とエルメダを苦しめていた根は、アンテロの活躍によってスライムの粘液により固められている状態だ。
悪魔の樹がまだ何か奥の手を隠しているのか。
俺は不安と緊張を極限まで高めて悪魔の樹を睨み付ける。
一瞬、悪魔の樹が笑った…
その瞬間、悪魔の樹が何かを落とした?
悪魔の樹が何かしてくると思い睨み付けていた。
位置は悪魔の樹と俺の睨み合いの直線から少し離れた位置。
俺たちが黒い霧の方へ向かおうとする直線距離の少し手前に位置する。
落ちたものを注意深く見てみると大きさは30cm位で茶色い楕円の形をしていた。
ラグビーボール?
形は確かににているが地面に落ちたときに弾んだ形跡などはなかった…
『気を付けて!来るよ!』
俺の後ろからセアラが言ってきた。
何かやって来るつもりなのだろう。
俺はセアラの言う通りに地面に落ちた茶色い物体から目をそらさずにいたのだが…
茶色い物体はいつのまにやら形を変えていた。
ちょうど真ん中から割れていて、中から黄色い粘液が地面に染みている。
最初はラグビーボールとかヤシの実のような物だと思っていたものが…
えっ…ヤシの実?
もしかして…あれは悪魔の樹の実なのか?
実だとしたら…
俺がやっと理解が追い付いた頃、地面から直径10cm位のスイカのような緑と黒の縞模様の球体が現れた。
その物体は細かく震えながら何かを出している。
色は二種類で一方は緑もう一方は薄い黄土色といった感じで、どちらも糸状のものだ。
緑の方は蔦で、黄土色の方は根のように見える。
本数は最初は数本だが細かく震えていく内に徐々に本数は増えていった。
本数が増えていくと蔦は蔦で、根は根で塊を作っているように見える。
不思議な動きを注意深く見ていくと、ある一つの形を作ったところで動きを止めた。
緑と黒の縞模様の球体は胴体となり、根は二ヶ所に纏まり左足と右足。
蔦は三ヶ所に纏まり左手と右手、そして首から顔を形成していた。
特に形成された顔の先は目を表しているのか黄色く不気味に光っているのが何とも恐ろしい感じがする。
『おい、あれは何だよ…聞いてないよ…』
見た目からして明らかに敵だ。
黄色の光が鋭く俺を睨んでいる気がする。
残る敵は二体いるとは覚悟はしていた。
だが今現れたモンスターは、その二体とは関係がない気がする…
『従属モンスターだね』
セアラが教えてくれた。
『マジか…ヘンリーとラゴスって、あの先にいると思うんだけど…』
『あー、その通りだよ』
『邪魔する気満々なのかな…?』
『じゃないと出てこないでしょ』
『ですよねー。あいつって…強いの?できれば短期決戦にしたいんだけど…』
『この辺のモンスターじゃないから詳しくは分かんないよ。でもあちらの望みは長期かもね』
『なんとかアンテロを逃がして黒い霧の方を対処させようかね』
『とりあず、それが最優先だね』
俺とセアラの考えが一致したところで、アンテロを後ろに下がらせて一気にケリを付けるべく走り出した。
セアラがアンテロに訪ねる。
俺とエルメダが根の密集地帯から抜け出した後、エルメダとセアラを交代することにした。
氷鳥の攻撃を受けるだけであれば、セアラとソフィアでも全く問題はない。
だが攻撃面と言うことを考えるのであれば、遠隔攻撃の手段を持っていないセアラだと決め手に欠いていた。
本来なら俺とエルメダ、アンテロ、ソフィア、セアラの5人で氷鳥に一斉攻撃と言うのが早いかもしれない。
だが、ヘンリーとラゴスの安否を一刻も早く確かめる必要があるために、氷鳥の処理はエルメダとソフィアの二人に任せることにした。
『はい、ネバネバというか…単なるスライムの粘液なんですけど、まだまだ十分にあります』
アンテロは軽い感じで答えるとアイテムボックスを出現させた。
アイテムボックスを見てみると、ぎっしりとスライムの粘液入りの試験管が敷き詰められている。
『えっ…それって、スライムの粘液だったの?』
スライムは貿易都市のみならず、この大陸であればどこにでもいると言われる珍しくもないモンスター。
どろどろとした粘着性のある液体のようなものが固まった外見のモンスターで、決まった形はないと言われている。
液状の外見のために攻撃力も防御力も低く特別なスキルもない。
そのために遭遇時には戦いに慣れていない者でも押し潰すような攻撃を加えることにより一撃で倒すことができる。
ただし、攻撃後は体を形成している粘着性の物質が武器に付着するので、戦いたくない場合は追い払うことが殆ど。
また外見を形成する粘着性の物質は、乾燥前は水で簡単に洗い流せる。
洗い流す水がない場合や大量の粘液にさらされると鳥もちのように絡み付く。
乾燥すると接着作用があり最近では家の建設などの際に利用されることが多い。
なぜアンテロがわざわざそんなものを用意していたのかは気になるところだが、今はそんな小さなことを責める暇はない。
俺とセアラ、アンテロの3人は打ち合わせも、そこそこにヘンリーとラゴスがいるであろう黒い霧の方へ歩みを進める。
恐らくスライムの粘液を大量に黒い霧へぶつければ虫を撃退できるはずだ。
そんな俺たちの浅い考えに敵も当然、気づくはず。
悪魔の樹の方も俺とエルメダが根から脱出したのに気づいた様子で、体を捻らせこちらをじっと見つめてきた。
だが先程まで俺とエルメダを苦しめていた根は、アンテロの活躍によってスライムの粘液により固められている状態だ。
悪魔の樹がまだ何か奥の手を隠しているのか。
俺は不安と緊張を極限まで高めて悪魔の樹を睨み付ける。
一瞬、悪魔の樹が笑った…
その瞬間、悪魔の樹が何かを落とした?
悪魔の樹が何かしてくると思い睨み付けていた。
位置は悪魔の樹と俺の睨み合いの直線から少し離れた位置。
俺たちが黒い霧の方へ向かおうとする直線距離の少し手前に位置する。
落ちたものを注意深く見てみると大きさは30cm位で茶色い楕円の形をしていた。
ラグビーボール?
形は確かににているが地面に落ちたときに弾んだ形跡などはなかった…
『気を付けて!来るよ!』
俺の後ろからセアラが言ってきた。
何かやって来るつもりなのだろう。
俺はセアラの言う通りに地面に落ちた茶色い物体から目をそらさずにいたのだが…
茶色い物体はいつのまにやら形を変えていた。
ちょうど真ん中から割れていて、中から黄色い粘液が地面に染みている。
最初はラグビーボールとかヤシの実のような物だと思っていたものが…
えっ…ヤシの実?
もしかして…あれは悪魔の樹の実なのか?
実だとしたら…
俺がやっと理解が追い付いた頃、地面から直径10cm位のスイカのような緑と黒の縞模様の球体が現れた。
その物体は細かく震えながら何かを出している。
色は二種類で一方は緑もう一方は薄い黄土色といった感じで、どちらも糸状のものだ。
緑の方は蔦で、黄土色の方は根のように見える。
本数は最初は数本だが細かく震えていく内に徐々に本数は増えていった。
本数が増えていくと蔦は蔦で、根は根で塊を作っているように見える。
不思議な動きを注意深く見ていくと、ある一つの形を作ったところで動きを止めた。
緑と黒の縞模様の球体は胴体となり、根は二ヶ所に纏まり左足と右足。
蔦は三ヶ所に纏まり左手と右手、そして首から顔を形成していた。
特に形成された顔の先は目を表しているのか黄色く不気味に光っているのが何とも恐ろしい感じがする。
『おい、あれは何だよ…聞いてないよ…』
見た目からして明らかに敵だ。
黄色の光が鋭く俺を睨んでいる気がする。
残る敵は二体いるとは覚悟はしていた。
だが今現れたモンスターは、その二体とは関係がない気がする…
『従属モンスターだね』
セアラが教えてくれた。
『マジか…ヘンリーとラゴスって、あの先にいると思うんだけど…』
『あー、その通りだよ』
『邪魔する気満々なのかな…?』
『じゃないと出てこないでしょ』
『ですよねー。あいつって…強いの?できれば短期決戦にしたいんだけど…』
『この辺のモンスターじゃないから詳しくは分かんないよ。でもあちらの望みは長期かもね』
『なんとかアンテロを逃がして黒い霧の方を対処させようかね』
『とりあず、それが最優先だね』
俺とセアラの考えが一致したところで、アンテロを後ろに下がらせて一気にケリを付けるべく走り出した。
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