ロマン兵器ヲ愛シ者、彼方ナル世界ヘト転生ス

ELDIAN

第11話:ヤバそうなのが生まれた




 閃光が晴れ、繋は目をゆっくりと開く。

 「——おぉっ!!!」

 そこには、繋の眼前にはずらっと2列に並んだ兵士たちが鎮座していたのだ。誰もが微動だにせず、胸を張って『休め』の姿勢で立っている。やったね! 実験は成功だ!!!
 それらを繋が嬉しみの表情で見ていると、その中の代表者だろうか、一人が前に出て、繋の前へと移動する。そうして繋の前に立つと、固く閉ざした口をゆっくりと開き——

 「……貴殿が、私たちを《実体化》した“多田野 繋”ですね。我ら30名、《実体化》の命に従い、馳せ参じました」

 右腕を繋へと差し出し、付け加えるように一言。

 「何なりとご命令を」

 『あっ、もしかして握手かな?』とか考えて、こちらも右手を差し出す。そうして握手すると、Padがブルブルと震えるとと同時に、通知音が。右腕で握手をしつつ、左腕でそれを見てみると、画面には『認証を完了。これより“第一次部隊”は、貴方との行動を開始します』と表示されていた。ということは……

 「……これから直属として働くのかな?」

 それを質問と勘違いしてか、目の前の男は『そうです』と答える。『単なる独り言だったんだけど……』と心の中でボソッと言う。
 『そもそも今まで独り言を言ってきた自分もヤバイよなぁ』としみじみ実感しつつ、独り言なんて聞かれちゃ流石に恥ずかしいので今後は気をつけようねと心に刻んだ。

 「……ところで、ですが」

 繋の前に立つその男は、周囲を見渡しながら繋にあることを訪ねる。

 「この状況は……一体?」

 もちろん彼がそんなことを訪ねる理由なんて、一つしかなく。それ即ち、繋がつい先ほど調子に乗って焼け野原にした周囲一帯のことだ。

 「あっ、これは……えっと」

 なんと言うか色々後ろめたいことはあるので伏せる——が、そんなこと言わずともその男は瞬時に心の内で理解。

 「……この状況が原因で我々を《実体化》した……それで間違い無いありませんか?」

 繋はあっうんそうだよと言いたげな表情で焦りを交えつつ、勢い良く顔を縦に振った。
 するとその男は、『詳しいことは知りませんが』と言って、続ける。

 「わかりました。では、貴殿が我々に何を求めるか……それをお教え頂きたい」

 要するに『命令よこせ』と言うことなのだろう。
 うーん、そんなこと言われても、どう言えばいいんだろう……。だって、ねぇ?ろくな防御施設も無しに戦車で防衛しろ、なんて言うのもあれだけど……物は試しだね!

 「今から兵器を《実体化》するから、それを使って……そうだな。ここ周辺に警戒網を作って欲しいんだ」

 そんな“命令”をするのだが、一方のその男は何やら不思議な顔をする。

 「警戒網……ですか」

 「そうそう」

 ウンウンと頷くが、一方の男は何やら不思議な顔だ。

 「私たちは、貴殿の決定権に反する権限はありません」

 『ですが』と言い、続ける。

 「流石にその判断は……軽率では?」

 「ウ”ッ!!!」

 なかなか痛いところを突いて来るね……君?

 「い、いや……でも、ほら。ロマンが……」

 そんな説得力のない言い訳に、男は無下に切り返す。

 「貴殿に《実体化》された以上、我々も大なり小なり『ロマン兵器を愛する心』があります。
 ですが、ロマン兵器とて無敵ではありません。ともなれば……」

 一旦貯めたかと思えば、次の瞬間彼の口からとんでも無い言葉が超音速で飛び出した。

 「まずは“陸上戦艦”を配備しましょう! そうすれば警戒網なんてものは作る必要はありませんよ!」

 「……えぇ、えぇ!?」

 何を思ったかトチ狂ったように放ったその言葉に、先ほどの雰囲気とのギャップで思わず驚く。

 「い、いや……今話してるのは」

 「分かっています、警戒線の策定、ですよね! ですから——」

 そこで繋は、彼のトチ狂ったかのような『陸上戦艦運用論』が何を意味するか理解する。

 「それそのものが基地、かつ警備線……!?」

 「そうですよ! それに、何の抵抗力もない敵軍が呆気なくやられる姿が……ゲフンゲフン」

 あれ、なんか漏れてない?なんて言う隙もなく。

 「貴殿の要望にもピッタリ! みんなのニーズにもピッタリ! これぞまさに世界平和!!! ラブアンドピース!!!」

 フム……。中々ええやん、その案? 言ってることとやろうとしてることは完璧に矛盾してるけど。でもね……

 「まだそこまで運用できる人員は……ナオキです」

 「あっ……アッアッアッ……」

 繋のその一言で、その男は泣き崩れる。いや泣いてないけど。

 「じゃぁ……じゃぁですよ!? どうしたら運用出来るって言うんですか!!! 陸上戦艦を!!!」

 「それはね……」

 泣き崩れたその男の耳元に近寄り、静かに囁く。

 「ここに警戒線を作って、拠点を作って……そして敵を虐殺ジェノサイドすれば、出来るよ♡」

 「——ッ!!!」

 それを聞いてか彼の目にやる気の炎が宿り、勢い良く立ち上がる。

 「……本当ですね?」

 「うん!!!」

 『……わかりました』。渋々納得したかのような口調でそう言うと、その男は素早く後ろへと振り返った。そこには、20余名のつい先ほど《実体化》した兵士達が。

 「総員、我々の任務は『拠点の構築』だ!」

 その男がそんな掛け声を上げると、兵士たちが皆一様に『FXで有り金全部溶かしたわ』みたいな顔をする。いや君たちもこの男と同類なのね?

 「あぁ——もちろん、諸君らの失望の念は重々理解している! 私もその一人だ……」

 『だが』と、威勢良く切り返す。

 「これは全て、我々の夢たる『陸上戦艦』の為だ!!!」

 その声を聞いた兵士たちが、ハッとした顔をする。

 「全ての陸上兵器を粉砕せしめる、我らが理想……それを叶える為の、第一歩だと考え、それぞれの任に取りかかれッ!!!」

 『『了解ッ!!!』』

 その掛け声と共に、Padに通知。更にそれと同時に発生する、幾重もの閃光。短期間に色々起きすぎて、脳がパンクしかける。

 「あ、あれ……あれ!?」

 目を開けてみれば、そこには大量の『そこに無いはずの物資』達。
 『そういえばさっきPadになんか通知来てたな?』なんて考えてPadを見てみれば、『野戦築城・及び拠点構築の為、以下の道具を『第一次部隊』を対象に《実体化》します』とのメッセージ。それの下には、テントや各種工作機械の名前が表示されていた。スコップにブルドーザー、大量に積まれたヘスコ防壁や土嚢袋と言ったものから、有刺鉄線。そう言った物がこれでもかと通知に書かれていて、眼前にはそれを示すかのように、所狭しに置かれた大量の物資。
 驚きの表情でそれを見ていると、男がケロッとした声で、一言。

 「我らが任を遂行する為、これより“拠点の構築”に取り掛からせて頂きます」

 『では』と申し訳程度に付け加えると、その男自身も深みどり色のヘルメットを装着。スコップ片手に、兵士たちと共に作業を開始するのだった。

 ——どうしてこうなった。

 そんな思考が幾度となく、繋の脳みそをぐるぐる回り続けるのだった。



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