犯人は国木田
ー問題編ー
犯人は国木田
ー問題編ー
<a href="//21813.mitemin.net/i256119/" target="_blank"><img src="//21813.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i256119/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「犯人は国木田で決まりですね」
静まり返った夕方の捜査一課、小早川がドヤ顔で言ったが、特に大した推理がある訳では無い。被害者が書き残したダイイングメッセージにそう書いてあるからだ。
『犯人は国木田』
誰がどう読んでも、そう書いてあるとしか読めない。
画家の左門虎家 無希が殺され、赤い絵の具でダイイングメッセージが書き記されていたのだ。
容疑者は三人。
国木田 闊歩。
木口 三歩。
玉木 十八番。
三人とも左門虎家の弟子で、三人とも充分、被害者を殺す動機があった。
こんな簡単な事件があってもいいのかと思えるくらい明快だ。犯人の国木田には悪いが、さっさと逮捕状を請求して、今日は早く帰ってモニタリングでも観よう。
と、思った矢先、同僚の件田が鑑識からの報告書を持って、息を切らして走ってきて捜査一課のドアを勢いよく開けた。
「犯人は国木田じゃない!」
どうした、事件は会議室で起きてるんじゃない!みたいなテンションで叫んで。
「あのダイイングメッセージは偽装された形跡が残っていたんだ! これを見てくれ」
そう奴が取り出した資料には、ダイイングメッセージに使われた絵の具の成分やら酸化したあれやこれやが小難しい言葉で書き連ねてあった。
「で、要約すると?」
ギロリ、とこちらを一瞥して、件田は続きを話す。
「ダイイングメッセージに使われていた絵の具は、酸化の具合から見て、ある程度時間が経っていることがわかった。つまり、『国木田』の文字がそれぞれのパーツ毎に、事件が起こった時間、それから1時間後、2時間後に書き加えられていたんだ」
ほうほう。で?
「被害者は検死の結果、即死だった。つまり、被害者が書いたとされる始まりの文字も犯人による偽装だ。この資料が、書き加えられていた文字の部分だ。確認しろ」
ダイイングメッセージ偽装(図1)
<a href="//21813.mitemin.net/i256120/" target="_blank"><img src="//21813.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i256120/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「3段階、書き加えられているということか」
「…どれどれ。最後の『国木田』という文字は、容疑者の国木田が自分の名前を書くはずがないから、玉木か木口が書いたんだろうな」
俺は資料にメモする。
「それから1段階前の『玉木』の文字ですけど、玉木本人が書き加えるはずがありませんよね。なら、この偽装は木口か国木田が書いたんじゃないでしょうか」
小早川が資料にメモした。
「なら、最初に犯人が書き記したこの『ミホ』。木口三歩本人が『ミホ』と書くはずがないから、木口に疑いをかけるために書いたのは、国木田か玉木だろうな」
件田が資料に犯人の可能性のある名前を書いた。
おい小早川。お前だけ青いペンで書くな。
「こうなると、可能性が2パターンあるな」
時系列で考えるとこうだ。
①、犯人である国木田か玉木が、自分以外の誰かに疑いをかけるために、現場に『ミホ』と書く。
②、現場を通りかかった木口か国木田が、自分以外の誰かに疑いをかけるために、現場に『玉木』となるように書き加える。
③、現場を通りかかった玉木か木口が、自分以外の誰かに疑いをかけるために、現場に『国木田』となるように書き加える。
<a href="//21813.mitemin.net/i256127/" target="_blank"><img src="//21813.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i256127/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「ふむう、なんだか頭がこんがらがってくるな……」
「でも! 可能性は2パターンッスよ! これから証拠固めをすれば必ず……え。あ、はい。今行きます!」
小早川の携帯が突然鳴り響き、どこかにダッシュしたかと思えば、すぐに戻ってきて捜査一課のドアを勢いよく開けた。
「事件は会議室で起きてるんじゃない! ダイイングメッセージは誰かに捏造された可能性があるんだ!!」
それ聞いたよ。さっき。
「俺は、事件は〜云々は言ってないぞ!」
そうだったっけか。
「いきなりどうした小早川。犯人は国木田か玉木なんだぞ」
「いいえ! 先ほど、鑑識の冴樹さんから、新たな情報をもらってきました!」
「なんだと! 彼女に会ったというのか!!」
ん? ちょっと待てよ?
「というか、彼女の電話番号を知ってるのか! 
 この! 教えろこの!」
「ちょ! 先輩! やめ! 事件、事件が!」
するとどこからか文鎮が飛んできて、俺の背中の頚椎に刺さった。
「のおおおぅ!!」
咄嗟に受け身を取ったので九死に一生を得たが、その文鎮には『冴樹』と書いてあった。彼女の私物か。
俺は文鎮を戦利品としてカバンにねじ込んでから、落ち着いて小早川の持ってきた資料に目を通した。
小早川が取り出した資料には、ダイイングメッセージに使われた絵の具に含まれる微生物やら発酵したあれやこれやが小難しい言葉で書き連ねてあった。
「で、要約すると?」
ギロリ、とこちらを一瞥して、小早川は続きを話そうとしたが、その前に俺は小早川の頭をはたいた。
「だ、ダイイングメッセージ……、ダイイングメッセージって長いので、これからはDMっていうことにしますね。DMに使われていた絵の具は、微生物の死骸の発酵の具合から見て、ある程度時間が経っていることがわかったんス。つまり、『国木田』の部分がそれぞれのパーツ毎に、事件が起こった時間、それから1時間後、2時間後に書き加えられていたんスよ」
ほうほう。さっき聞いたぞ?
「被害者は検死の結果、即死だった。つまり、被害者が書いたとされる始まりの文字も犯人による偽装なんス。この資料が、書き加えられていた文字の部分です。確認してください」
ダイイングメッセージ偽装2(図2)
<a href="//21813.mitemin.net/i256121/" target="_blank"><img src="//21813.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i256121/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「おい、さっきの資料と違うじゃないか」
「色んな可能性があるんスね」
可能性って便利な言葉だな。
「冴樹くんが調べた結果なら間違いはないだろう。どれ、先ほどと同じように可能性を考えるぞ」
お前が仕切るな、件田。
「……また3段階、書き加えられているということか」
「どれどれ。最後の『国木田』という文字は、容疑者の国木田が自分の名前を書くはずがないから、玉木か木口が書いたんだろうな」
俺は資料にメモする。
「それから1段階前の『木口』の文字ですけど、木口本人が書き加えるはずがありませんよね。なら、この偽装は玉木か国木田が書いたんじゃないでしょうか」
小早川が資料にメモした。
「なら、最初に犯人が書き記したこの『ハコ』。玉木十八番本人が『ハコ』と書くはずがないから、玉木に疑いをかけるために書いたのは、国木田か木口だろうな」
件田が資料に犯人の可能性のある名前を書いた。
「こうなると、可能性が2パターンあるな」
時系列で考えるとこうだ。
①、犯人である国木田か木口が、自分以外の誰かに疑いをかけるために、現場に『ハコ』と書く。
②、現場を通りかかった玉木か国木田が、自分以外の誰かに疑いをかけるために、現場に『木口』となるように書き加える。
③、現場を通りかかった玉木か木口が、自分以外の誰かに疑いをかけるために、現場に『国木田』となるように書き加える。
<a href="//21813.mitemin.net/i256128/" target="_blank"><img src="//21813.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i256128/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「ふむう、なんだか頭がこんがらがってくるな……」
というか、件田の奴字が汚いぞ。
木口が杏みたいになってるじゃないか!
なにはともあれ、さっきの可能性と合わせると、4パターンもあるのか。
犯人は一体誰なんだ??
《解決編に続く》
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