聖玉と巫女の物語
同じ場所で
会えるかどうかわからなかった。
フリンツの許可を得て、城砦を出て、兄ウェルギンの付き添いで古城近くに来ていた。
「お兄様、ここで待っていて」
アシュリータは並んで立つ二つの木々のそばまで歩いて行った。
ウェルギンは、事の真相を知らされていたが、やはり少し不安であった。
「父の木と母の木……」
アシュリータはそれぞれの木に触れて心で念じた。
(お願い。あの人に伝えて。会いたいと)
時間の感覚がなくなるくらい、アシュリータは一心不乱に念じていた。
アルマンと過ごした日々が走馬灯のように脳裏に浮かんだ。
すると、その時、一陣の風が吹いた。
視界がぼやけて、一瞬、あの草原が見えたような気がした。
気付くと、目の前にあの時のように木に手をかけて立っているアルマンがいた。
彼は優しく微笑んでいた。
「根負けしたと言ってる」
アシュリータは彼の言葉の意味がわからなかったが、嬉しさで胸がいっぱいになった。
ほんの少し離れた場所で見ていたウェルギンは驚いていた。
しかし、妖魔は普通の若者のように見えた。
風の中で黒い翼のようなものが見えた気がしたが、はっきりとした姿になった時には、普通の人間だった。
それよりも、アシュリータが、いや、妹が普通の女性に見えた。あんな笑顔はいつぶりだろう。
アシュリータは何から話せばいいのか迷っていた。
「魔族狩りは終わったわ。フリンツ王子は、眷族たちのことも、人間に危害は与えないことをわかってくれたの」
「そう……」
「私の役目も終わったわ」
「……」
アルマンは穏やかな様子でアシュリータを見つめていた。
(何を言えばいいんだろう。何を言えば、彼ともっと……)
「僕はゴヴィやフェネルたちを守りたいんだ。でも、人間との共存は難しいと思う。容姿が違いすぎるから気味悪がる人たちもいるだろう。それで傷つけられるかもしれない」
(アルマンはまた私を遠ざけようとしてる)
アシュリータは心が引き裂かれそうな想いを感じた。
「私を……」
「?」
アルマンがアシュリータの方に身をかがめたとき。
「私を一緒に連れて行って!」
アシュリータは自ら、彼の懐に飛び込んだ。
見ていたウェルギンは信じられなかった。
「お願い。私にも手伝わせて」
アルマンは自分にすがりつくアシュリータを見て心を動かされたようだった。
「私は、あなたの傍にいたいの」
アルマンは今まで見た事のない表情を浮かべた。
「そう言ってくれると、すごく嬉しい。でも……」
彼は少し離れたところで見守っているウェルギンの方を向いた。
「君を必要としてる人たちがたくさんいる」
アシュリータも兄の方に顔を向けた。
ウェルギンは心配そうにこちらを見ていた。
「後悔しないかい?」
アルマンの言葉に、アシュリータはしばらく黙ったままだったが、意を決したように言った。
「あなたと離れたら一生後悔するわ」
「……」
アルマンは彼に触れているアシュリータの手が震えているのがわかった。
「わかった。でも、会いたくなったらいつでもこっちの世界に帰ればいい。僕の住む世界に来るなら、その時に預かってる聖玉は君に返すよ」
二人は後日改めて、同じ場所で再会を約束した。
フリンツの許可を得て、城砦を出て、兄ウェルギンの付き添いで古城近くに来ていた。
「お兄様、ここで待っていて」
アシュリータは並んで立つ二つの木々のそばまで歩いて行った。
ウェルギンは、事の真相を知らされていたが、やはり少し不安であった。
「父の木と母の木……」
アシュリータはそれぞれの木に触れて心で念じた。
(お願い。あの人に伝えて。会いたいと)
時間の感覚がなくなるくらい、アシュリータは一心不乱に念じていた。
アルマンと過ごした日々が走馬灯のように脳裏に浮かんだ。
すると、その時、一陣の風が吹いた。
視界がぼやけて、一瞬、あの草原が見えたような気がした。
気付くと、目の前にあの時のように木に手をかけて立っているアルマンがいた。
彼は優しく微笑んでいた。
「根負けしたと言ってる」
アシュリータは彼の言葉の意味がわからなかったが、嬉しさで胸がいっぱいになった。
ほんの少し離れた場所で見ていたウェルギンは驚いていた。
しかし、妖魔は普通の若者のように見えた。
風の中で黒い翼のようなものが見えた気がしたが、はっきりとした姿になった時には、普通の人間だった。
それよりも、アシュリータが、いや、妹が普通の女性に見えた。あんな笑顔はいつぶりだろう。
アシュリータは何から話せばいいのか迷っていた。
「魔族狩りは終わったわ。フリンツ王子は、眷族たちのことも、人間に危害は与えないことをわかってくれたの」
「そう……」
「私の役目も終わったわ」
「……」
アルマンは穏やかな様子でアシュリータを見つめていた。
(何を言えばいいんだろう。何を言えば、彼ともっと……)
「僕はゴヴィやフェネルたちを守りたいんだ。でも、人間との共存は難しいと思う。容姿が違いすぎるから気味悪がる人たちもいるだろう。それで傷つけられるかもしれない」
(アルマンはまた私を遠ざけようとしてる)
アシュリータは心が引き裂かれそうな想いを感じた。
「私を……」
「?」
アルマンがアシュリータの方に身をかがめたとき。
「私を一緒に連れて行って!」
アシュリータは自ら、彼の懐に飛び込んだ。
見ていたウェルギンは信じられなかった。
「お願い。私にも手伝わせて」
アルマンは自分にすがりつくアシュリータを見て心を動かされたようだった。
「私は、あなたの傍にいたいの」
アルマンは今まで見た事のない表情を浮かべた。
「そう言ってくれると、すごく嬉しい。でも……」
彼は少し離れたところで見守っているウェルギンの方を向いた。
「君を必要としてる人たちがたくさんいる」
アシュリータも兄の方に顔を向けた。
ウェルギンは心配そうにこちらを見ていた。
「後悔しないかい?」
アルマンの言葉に、アシュリータはしばらく黙ったままだったが、意を決したように言った。
「あなたと離れたら一生後悔するわ」
「……」
アルマンは彼に触れているアシュリータの手が震えているのがわかった。
「わかった。でも、会いたくなったらいつでもこっちの世界に帰ればいい。僕の住む世界に来るなら、その時に預かってる聖玉は君に返すよ」
二人は後日改めて、同じ場所で再会を約束した。
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