聖玉と巫女の物語
地下への扉
城からの使いが戻ると、カイサル神官長は顔色が変わった。
「そうか。ホルティス王は書庫には来ていないのだな」
「書庫、ですか?」
思わず漏らした神官長の言葉にフリンツは食いついた。
カイサルは、王に対面した時に、少しめまいを起こし、ボーッとした感じがしたことを思い出した。疲れているのだと思っていた。
(しかし、あの先は強い結界が張ってあるのに、なぜ……)
「とりあえず書庫に行ってみましょう」
フリンツは先頭をきって、書庫へみんなを誘導した。カイサルも後に続いたが、彼は何事かを考えているようだった。
その頃には応援の隊も到着していた。武装解除した十人は神殿内に、残りは神殿の外に武装させたまま待機するよう伝えていた。
「これは……」
書庫管理室で係の神官が倒れていた。
ヘイワードが近寄って息を確かめた。
「大丈夫。気絶してるみたいだ。先を急ごう」
一行は地下通路を通り、書庫の扉を開けた。
フリンツ、ウェルギン、ヘイワード、エリク、ファルサはそれぞれ書庫内をくまなく探した。しかし、何も、誰もそこにはいなかった。カイサル神官長だけが、気難しい顔をして扉の近くに立っていた。
ちょうど真ん中の辺りだった。ウェルギンが何か違和感を覚えた。
何だろうと周囲を見渡してみた。
そこへエリク神官とファルサがやってきた。先ほど、ファルサが気付いたことをエリクに知らせるために。
「見て下さい。この辺りにくると玉が……」
ファルサはそう言って、エリクに手のひらの玉を見せた。
それは薄紫色の光を放っていた。
「ここに、何かひきずった跡がある」
ウェルギンが床を指さした。
そこにいた全員が、真ん中にある二つの書棚が動かされたことを確信した。
「カイサル神官長、あなたは何か知っているんですよね?」
フリンツが神官長に詰め寄った。
「この先に行かせてください!」
ウェルギンが叫んだ。
「そうして下さい、カイサル神官長」
フリンツは、隠し持っていた短剣を自分に向けた。
「王子!」
「隠さずに教えて下さい。僕は本気です」
有無を言わせないフリンツ王子の気迫に、カイサル神官長はついに決心した。
「何が起きるかわかりません。本当に、ホルティス王でなかったら……」
「いいから、早く!」
フリンツに促されて、カイサルは持っていた鍵で入ってきた扉の鍵を内側から閉めた。するとどこかで、カチッという音がした。
「……!」
そして、次の瞬間、ギギギギッというすごい音とともに、真ん中のくっついていた書棚が動き始めた。みんなは固唾を呑んで見守っていた。エリクは今まで来たことのある書庫にこんな仕掛けがあるとは思いもしなかった。
それらは二つに分かれて開き、もともと本棚があった場所にぽっかりと穴が開いていた。中は真っ暗だった。
カイサルは書庫内にあるランプの一つを手に持ち、自分からその穴に入っていった。
「そうか。ホルティス王は書庫には来ていないのだな」
「書庫、ですか?」
思わず漏らした神官長の言葉にフリンツは食いついた。
カイサルは、王に対面した時に、少しめまいを起こし、ボーッとした感じがしたことを思い出した。疲れているのだと思っていた。
(しかし、あの先は強い結界が張ってあるのに、なぜ……)
「とりあえず書庫に行ってみましょう」
フリンツは先頭をきって、書庫へみんなを誘導した。カイサルも後に続いたが、彼は何事かを考えているようだった。
その頃には応援の隊も到着していた。武装解除した十人は神殿内に、残りは神殿の外に武装させたまま待機するよう伝えていた。
「これは……」
書庫管理室で係の神官が倒れていた。
ヘイワードが近寄って息を確かめた。
「大丈夫。気絶してるみたいだ。先を急ごう」
一行は地下通路を通り、書庫の扉を開けた。
フリンツ、ウェルギン、ヘイワード、エリク、ファルサはそれぞれ書庫内をくまなく探した。しかし、何も、誰もそこにはいなかった。カイサル神官長だけが、気難しい顔をして扉の近くに立っていた。
ちょうど真ん中の辺りだった。ウェルギンが何か違和感を覚えた。
何だろうと周囲を見渡してみた。
そこへエリク神官とファルサがやってきた。先ほど、ファルサが気付いたことをエリクに知らせるために。
「見て下さい。この辺りにくると玉が……」
ファルサはそう言って、エリクに手のひらの玉を見せた。
それは薄紫色の光を放っていた。
「ここに、何かひきずった跡がある」
ウェルギンが床を指さした。
そこにいた全員が、真ん中にある二つの書棚が動かされたことを確信した。
「カイサル神官長、あなたは何か知っているんですよね?」
フリンツが神官長に詰め寄った。
「この先に行かせてください!」
ウェルギンが叫んだ。
「そうして下さい、カイサル神官長」
フリンツは、隠し持っていた短剣を自分に向けた。
「王子!」
「隠さずに教えて下さい。僕は本気です」
有無を言わせないフリンツ王子の気迫に、カイサル神官長はついに決心した。
「何が起きるかわかりません。本当に、ホルティス王でなかったら……」
「いいから、早く!」
フリンツに促されて、カイサルは持っていた鍵で入ってきた扉の鍵を内側から閉めた。するとどこかで、カチッという音がした。
「……!」
そして、次の瞬間、ギギギギッというすごい音とともに、真ん中のくっついていた書棚が動き始めた。みんなは固唾を呑んで見守っていた。エリクは今まで来たことのある書庫にこんな仕掛けがあるとは思いもしなかった。
それらは二つに分かれて開き、もともと本棚があった場所にぽっかりと穴が開いていた。中は真っ暗だった。
カイサルは書庫内にあるランプの一つを手に持ち、自分からその穴に入っていった。
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