聖玉と巫女の物語

ともるん77

帰還

「平気だと言ったのに」
 神殿へ馬で戻るファルサとエリクに、ヘイワードが同行していた。


「城砦に入るのを見届けたら、北の森に引き返す」
 ヘイワードは自分が一人同行するので、見張りの騎士をすべて北の森のはずれに待機させてきた。


「北の森では魔族を見かけなかった。なのに、ファルサの前には現れた」
 二人は馬を並べて話をしていた。それを少し離れた距離を保ってエリクが後を行く。
「ゴヴィだけよ」
「ゴヴィが北の森を出てまで何をしにきたんだ? ファルサまでさらわれたら」


 会話がときどきエリクにも聞こえた。
 出発前、エリクはヘイワードに確かめたいことがあった。そこで、彼はファルサが天幕に入っている時に、ヘイワードに話しかけていた。


「その、ファルサ前巫女とは親しいのか?」
 ヘイワードは顔色一つ変えずに答えた。
「気を遣わなくていいですよ。ただの幼馴染です」
「幼馴染?」
「ええ。私の家は貧乏で兄弟が多かったから、幼い時に養子に出されたんです。養父母に育てられました。それがファルサの両親です。彼女は二つ違いの姉みたいなもんです」
 いったんは納得したものの、やはりエリクは気になった。
「もしかして、それで騎士に志願したのですか?」
「……それもあるかもしれませんね。恩義を感じてますから」
 それだけだろうか。エリクはそれ以上詮索するのをやめた。


 ファルサはもう、巫女ではない。万が一、アシュリータが見つからず、新しい巫女も選ばれなかった場合、ファルサがまたその地位に着く可能性はあった。だから、今、彼女が誰かと結ばれることは望ましいことではなかった。


 昼を少しまわって、北門が見えてきた。城郭への出入りは基本的に王族以外は、神殿発行の通行証が必要だった。カインデルの国の者なら近隣の村や町の者も、村長や町長発行の通行証があれば出入りができた。


 ヘイワードが北門の兵に挨拶すると、彼は驚いた顔をした。
「そんな……」
「どうした? 伝令は来ていないのか?」
「来ましたが……あの……」


 不審に思ったヘイワードが問いただすと、彼はとんでもないことを口走った。
「ファルサ様は先ほど、エリク神官と二人で帰還されたはず」
「……!」
 三人はお互いの顔を見合わせた。

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