聖玉と巫女の物語
書庫③
書庫は思っていたより狭かった。部屋の中には、天井いっぱいまでの高さの棚がびっしり並んでいた。真ん中の棚だけ、二つの棚がくっついて並んでいた。
机もなく、通路も狭く、窓もないので圧迫感を感じた。入った扉とは反対側にも別の扉があることにウェルギンは気付いた。
(あれが、城側通路への扉か)
「前にも何回か来たことがあるんだけど」
フリンツは棚の本に目を走らせながらしゃべり出した。
「地下のわりには湿気があまりないよね。何か工夫してあるのかな」
「そうですね」
ウェルギンはフリンツの言葉を聞きながら、書棚の本の背表紙を眺めていた。ざっと見るかぎり、医書や薬についての書物などのほか、天文書や歴史書、建築などの専門書や呪学の本まであった。
呪学の本をパラパラとめくってみた。中には、夢見の解釈や占い全般、結界の張り方や護符の使い方などが記されていた。
城下町にもシュノス街とウバル街の間にあるランダーク通りは商店街であり、そこに本屋もあるが、実用書と娯楽本が主で、神殿書庫にあるような専門書はなかった。
「これ、ゾイタル長官が巫女候補たちの講義に使ってた、魔族についての説明の本だ」
フリンツが手にとっていた、大きなわりと薄い本をウェルギンは受け取った。
〈記録によると、魔族狩りが始まったのは……よって先の三代までの巫女は単に祭祀を司るのが役目であった〉
「城砦の中にいたら、一生本物を見ることはないかもね」
巫女候補たちは、魔族について絵で教わっていた。近隣の村や町を行き来することのある大人の男たちは、時に魔族に遭遇することもあったが、魔族の数が減ってきてからは、主に城砦の中で暮らしている人たちが見ることは稀であった。
先の本には、あまり詳しいことが書いておらず、また魔王について記述している本はなかなか見つからなかった。
ふと、城の建築についての歴史書が目にとまったウェルギンは、あることを思い出し、それを手にとった。
「そういえば、カニスン村の近くにある古い時代の城跡……もちろん王族の城ですよね?」
「さぁ、どうだろ。僕は知らないな。古い時代には蛮族もいたんだろ」
ウェルギンが手にした本にも、その城についての記述はなかった。
「何か気になることでも?」
「あの、その城跡を捜索した時のことなんですが、砕かれて床に散らばっている破へんの中に、イラクサの紋の一部と思われる物があったので」
「そうかぁ。それなら、その城の文献もどこかにあって良さそうなのに」
「それに……。いや、何でもないです」
ウェルギンが気になったのは、その砕かれ方だった。
廃墟として残っていた部分も、何者かによって破壊されたような跡があった。
時の権力者への恨みだろうか。
机もなく、通路も狭く、窓もないので圧迫感を感じた。入った扉とは反対側にも別の扉があることにウェルギンは気付いた。
(あれが、城側通路への扉か)
「前にも何回か来たことがあるんだけど」
フリンツは棚の本に目を走らせながらしゃべり出した。
「地下のわりには湿気があまりないよね。何か工夫してあるのかな」
「そうですね」
ウェルギンはフリンツの言葉を聞きながら、書棚の本の背表紙を眺めていた。ざっと見るかぎり、医書や薬についての書物などのほか、天文書や歴史書、建築などの専門書や呪学の本まであった。
呪学の本をパラパラとめくってみた。中には、夢見の解釈や占い全般、結界の張り方や護符の使い方などが記されていた。
城下町にもシュノス街とウバル街の間にあるランダーク通りは商店街であり、そこに本屋もあるが、実用書と娯楽本が主で、神殿書庫にあるような専門書はなかった。
「これ、ゾイタル長官が巫女候補たちの講義に使ってた、魔族についての説明の本だ」
フリンツが手にとっていた、大きなわりと薄い本をウェルギンは受け取った。
〈記録によると、魔族狩りが始まったのは……よって先の三代までの巫女は単に祭祀を司るのが役目であった〉
「城砦の中にいたら、一生本物を見ることはないかもね」
巫女候補たちは、魔族について絵で教わっていた。近隣の村や町を行き来することのある大人の男たちは、時に魔族に遭遇することもあったが、魔族の数が減ってきてからは、主に城砦の中で暮らしている人たちが見ることは稀であった。
先の本には、あまり詳しいことが書いておらず、また魔王について記述している本はなかなか見つからなかった。
ふと、城の建築についての歴史書が目にとまったウェルギンは、あることを思い出し、それを手にとった。
「そういえば、カニスン村の近くにある古い時代の城跡……もちろん王族の城ですよね?」
「さぁ、どうだろ。僕は知らないな。古い時代には蛮族もいたんだろ」
ウェルギンが手にした本にも、その城についての記述はなかった。
「何か気になることでも?」
「あの、その城跡を捜索した時のことなんですが、砕かれて床に散らばっている破へんの中に、イラクサの紋の一部と思われる物があったので」
「そうかぁ。それなら、その城の文献もどこかにあって良さそうなのに」
「それに……。いや、何でもないです」
ウェルギンが気になったのは、その砕かれ方だった。
廃墟として残っていた部分も、何者かによって破壊されたような跡があった。
時の権力者への恨みだろうか。
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