欠陥品のリベリオン

夜月祐斗

第九話 貴族と下民

 「地下遊戯大会?」

 「俺はそこのやつに優勝した金で暮らしてんの。」

 「ユウトまさかレイスちゃんも連れて行くわけじゃないでしょうね!」

 なんかミユキさんが怖い。

 「危ないところなんですか?」

 「そうよ、あんな所に子供を連れてくなんて何考えてるの!」

 「あの、私高校……。」

 ミユキさんはレイスの言葉が聞こえないくらい怒ってた。

 「だいたい私は、ユウトにもあそこには言ってほしくないって言ってるでしょ!」

 「いや、でも……。」

 「でもじゃない! あんただけならまだしも、まだこんなに小さい子を連れて行くなんて!」

 「あの! 私高校生です!」

 大声で叫んだレイスをみんなが見た。

 「え!? 高校生!?」

 ついに言っちゃったよ。高校生って言ったら貴族の事バレるって言ったのに。

 「てことは貴方、貴族!?」

 ミユキさんはレイスを睨みつけていった。

 「ちょっと待ってくれ! 彼女は貴族だけどみんなが知ってるような奴じゃない!」

 俺はレイスを後ろに隠しながら言った。

 「ユウト、貴族が今まで私達にしてきた事が分かった上で言ってるの!」

 「俺だって、今まで貴族にされた事は覚えてる。」

 「ならどうして!? まさかその子がユウナの変わりとでも!?」

 「違う! レイスはユウナじゃない!」

 そのままレイスを連れて出ていこうとする。

 「行くぞレイス!」

 「ユウトさん、いいんですか!?」

 「いいんだよ!」

 ミユキさんは何も言わなかった。

 「ユウトさん、このままでいいんですか!」

 外に出てしばらくしてからレイスが言った。

 「悪かったな、こんな事になって。」

 「私は、ずっとユウトさんを信じてますから!」

 突然の言葉だったが、それでもレイスは真剣だった。

 「そんなこと考えなくていいから、魔法の使い方覚えろよ。」

 そう言って彼女の頭を撫でてやった。

 「今はとりあえず地下遊戯大会ってのに行くんですよね?」

 「それなんだよな、レイスはミユキさんに預けるつもりだったんだよ。」

 「そんなに危険なんですか?」

 「危険というかあそこでは人は人じゃなくなる。」

 端切れが悪く話しているが、ここまで来たら言わないわけにはいかない。

 「あそこは貴族の遊び場なんだ。」

 「貴族がなんでここに?」

 「あそこは貴族が作った奴隷施設なんだ。」

 「奴隷ってまさか!」

 そう言った彼女の言葉は震えていた。

 「奴隷は下民だ、それも奴隷にした奴は互いに殺し合いをさせられている。」

 「そんなとこに行って大丈夫なんですか!?」

 「今日はその奴隷を含め近くの下民たちも参加する。」

 「なんでわざわざそんなとこに……。」

 彼女には貴族の現状を伝えなければ、

 「下民は暮らすことすら難しい、だからたまに来る貴族には頭を下げてでも、恥をかいてでもしないと生活できないんだ。」

 「だからユウトさんも行くんですか。」

 「そうしないとみんな生きていけないからな。」

 彼女は王族だと言ってもまだ子供だ、国がこんな事になっていることなんか知らなかったのだ。

 「ごめんなさい……。」

 「レイス、これを言えば君が思い詰めることは分かってた。」

 許しを得ようとする彼女を優しく抱き寄せた。

 「でもな、お前は何もしてないだろ。」

 「でも、私は王族なのに何もできなくて。」

 「子供が何言ってんだ、まだろくに体も成長してないくせに。」

 「なっ!?」

 赤くなった顔で睨んでくる彼女の頭にそっと手を置いた。

 「今はそれでいい、いつか立派な王族になれ。」

 「……はい……。」

 レイスが泣き止むのを待ってから再び歩き出した。

 「ユウトさん、立派な王族になったら胸も大きくなりますか?」

 「今言うことじゃないよな!」

 レイスの一言で、せっかくいいこと言った俺が馬鹿みたいじゃないか。

 よっぽどガキ共に言われたことがショックだったんだな。

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