魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
39 雑談と襲来予告
「ブロズ皇帝、お久しぶりです」
「クレア。久しぶり」
翌日、講義を見て回ったブロズは最後にと屋上へ来ていた。
勿論、そういう建前で最後に話をしようというものだが、そこにはロイド、グラン、エミリー、ラピス、カインもいた。
「昨日は話す時間がなかったからね。わがままを言ってすまない」
「いや俺らもクレア達を呼ぶの忘れて盛り上がっちまったしなぁ」
「だなー。いやーうっかりうっかり」
そんな会話をしつつ、ブロズはエミリーとラピスへと目線を向ける。
「えっと、エミリーさんとラピスさん、でいいかな?」
「呼び捨てで構いません、ブロズ皇帝」
「あっはい、えっと、私も呼び捨てで大丈夫です!」
「ふふ、分かったよ。でもそう固くならないで欲しいな。今は他に誰もいないんだし」
優雅な礼をするエミリーとカチコチに固まったラピスにブロズは笑顔を浮かべる。
そんな会話を聞きつつロイドはカインに目を向ける。
「他に誰も、だって。カインドンマイ!」
「あぁ?俺もブロズとは昨日王城で話してんだよ。だからどうこう言わねぇよ」
「へー、何の話したん?」
「……まぁ大体お前の話だったかもな」
ロイドは帝国の革命における立役者、そしてこの学園でもカインと戦った事もある。
2人の共通の会話としてはロイドに白羽の矢が立つのは自然な流れだろう。
「いやー恥ずかしいわー。そんな褒め称えてたん?」
「バカか。鈍感クソヤローって話をしてたんだよ」
「……今の俺には刺さるわぁ…」
昨晩まさにその会話をしていたロイドには地味にダメージが入る罵倒。
が、それでもスルーされると思ったカインは目を丸くする。
「お?やっとそこらへんの意識が出てきたか?」
「いやそーじゃねーけど、ちょっと考えてみよーかなとは思っ……た…?」
「あん?…ってぅおっ?!」
並んで話していたロイドが前を見て言葉を詰まらせる様子に、カインも視線を追う。
そこにはいつの間にか会話を中断してこちらをじぃっと見てくる女性陣が。
恐らくは余計な事を言うな、といった視線だろうか。たまらずびびるカイン。
「…………」
「……いや、無言はやめろ」
そのまま何も言わずこちらを見る女性陣に、カインは絞り出すように言う。
「ふふ、カイン、気をつけてね」
「おせぇよ!早く言えよ!」
「び、びびった…」
「はっはっは、ウケる!」
「いやグランてめぇ、他人事だと思って…!」
「………」
笑う帝国組と怒る王国組と、無言の女性陣。
収集のつかない状態だが、ふと発せられた言葉で空気が変わった。
「ん?そーいや、グランは好きなやつとかいねーの?」
「……は?」
「……ふむ、言われてみれば僕もその手の話は聞いた事がないね」
「はっはーん?さてはうまく隠してやがんな?」
ロイドの言葉にブロズとカインがニヤリと笑う。
この流れはまずい、とグランは内心慌ててる。
が、ここで慌てては火に油、と表情に出さないように慎重に口を開く。
「いや、いねぇよ。あんな生活しててそんなん考える暇あると思うか?」
「いや今はのんびり学生してるだろー?」
「そうだな。どうなんだよ?いつも関係ありませんみたいな立ち位置にいやがってよ」
「だって関係ねぇし」
ロイドとカインの口撃にも冷静に対応するグラン。
よし、いける、逃げ切れる!と思った矢先。
「ふむ、この妙に冷静な態度。……これは居るね」
(てめぇぇえええブロズぅぅう!!余計な事をぉお!!)
分析したブロズの言葉に内心叫ぶ。
それを口には出さなかったのは良かったのだが、顔には出ていた。
それに気付いてはっとして振り返ると、それはもうニンマリと笑ったロイドとカインが。
「へぇぇえええええ?」
「ほぉぉおおおおお?」
「……なんだよ?」
「いやー、なんでもー?」
「なぁ?別に何もぉ?」
「だぁぁあああ!なんか腹立つぅうう!!」
ニヤニヤする2人に頭を掻き乱して叫ぶグラン。
すると、ピクリと反応したラピスにロイドが気付く。
(ふーん……ま、上手くいくといいな)
その様子にロイドは小さく微笑む。
だがここでそれを追求するのは無粋だと思い、何も言わずにすぐにラピスから目線を切った。
そして、さらにそのロイドを見ていたカインとブロズは溜息をひとつ。
((なんで他人には鋭いんだこいつ……))
そんな呆れたように内心呟く王族2人を他所に、エミリーやクレアも混じってグランをからかっていた。
「うるせぇぇえ!もういいだろ、話す事があんだろブロズぅ?!」
「あーはいはい、そうだね」
「なんだその雑なリアクション…!」
睨むグランを無視するブロズは、そろそろ可哀想かなと話を変えるべく口を開く。
「実は、旧帝国騎士団長フェレスの目撃情報が入ってきたんだ」
「フェレス?」
そんな奴いたっけ?と首を傾げるロイドに、溜息をつくグラン。
「おいおい、忘れんなよな。お前がぶっ壊した帝城から死体が出てこなった奴だよ。その後も見つからんから行方不明って形にしといだんだけど…」
「それがここ王都フレアに出入りがあるという話を耳にしてね。昨日の王城でも話はしたけど、一応君達にも伝えておこうと思って」
「それはどのような者なのでしょうか?」
エミリーの問いにブロズは顎に手を当てて少し考えるように時間を置く。
「……大柄の茶色の髪と瞳、大剣を使う。身体強化を主に使う接近戦を得意として、スキルを所有している。って事くらいしか僕も知らないかな」
「そうですか……そのスキルはどのような?」
「すまない、分からない。今は亡き父ゴルドと兄ジルバくらいしか知らないと聞いた事がある」
「……そうですか」
エミリーは聞いた話を忘れないよう反芻するように黙り込んだ。
「おそらくじきに王城からも兵士が動くはずだ。そう慌てる必要はない」
「そっか。なら安心かな」
カインの言葉にロイドは笑って言うが、その目は笑ってはいなかった。
フェレス。面識はないが、もし旧帝国軍の復讐として動いているならば狙われるのは革命に関わった人類。
となれば、今王都に居る者の中で言えばロイドと、クレア、グランである。あとは滞在時間は少ないが、時期皇帝となったブロズか。
もしそうであれば、気を抜いて良いはずがない。
帝国の騎士において最強とされたフェレス。
そんな相手が見えない所て動いているのだから。
「……まぁ、何かあれば言え」
「……あれですね、カイン皇太子ってツンデレだよね」
「ん?あー確かになー」
「あぁ?つんでれ…?なんだそれ?てゆうかなんか腹立つなその顔…!」
目だけは鋭いままのロイドにぶっきらぼうに言うカインに、クレアとロイドは口元を押さえながらカインを見てひそひそとーー聞こえるくらいの音量でーー話している。
それに青筋を浮かべるカインをさらっと無視してロイドはブロズへと顔を向ける。
「ま、気をつけるわ」
「うん、まぁ心配はしてないよ」
「ひどいなおい」
「いや、まぁロイドなら大丈夫だろうってのもあるんだけど、もうひとつ理由があってね」
「え?」
微笑むブロズに何故か嫌な予感を覚えるロイド。
しかし、無情にもブロズは次の言葉を悪気もなく発する。
「ウィンディア時期当主にして『神童』フィンク・ウィンディアが一定期間だけど学園の警備に来る予定になってるんだよ」
「「………!!」」
その言葉に、目を瞠って言葉を失うロイドとエミリー。
喜ぶかと思いきやその予想と大きく違う反応に、ブロズはあれっ?と首を傾げたのであった。
「クレア。久しぶり」
翌日、講義を見て回ったブロズは最後にと屋上へ来ていた。
勿論、そういう建前で最後に話をしようというものだが、そこにはロイド、グラン、エミリー、ラピス、カインもいた。
「昨日は話す時間がなかったからね。わがままを言ってすまない」
「いや俺らもクレア達を呼ぶの忘れて盛り上がっちまったしなぁ」
「だなー。いやーうっかりうっかり」
そんな会話をしつつ、ブロズはエミリーとラピスへと目線を向ける。
「えっと、エミリーさんとラピスさん、でいいかな?」
「呼び捨てで構いません、ブロズ皇帝」
「あっはい、えっと、私も呼び捨てで大丈夫です!」
「ふふ、分かったよ。でもそう固くならないで欲しいな。今は他に誰もいないんだし」
優雅な礼をするエミリーとカチコチに固まったラピスにブロズは笑顔を浮かべる。
そんな会話を聞きつつロイドはカインに目を向ける。
「他に誰も、だって。カインドンマイ!」
「あぁ?俺もブロズとは昨日王城で話してんだよ。だからどうこう言わねぇよ」
「へー、何の話したん?」
「……まぁ大体お前の話だったかもな」
ロイドは帝国の革命における立役者、そしてこの学園でもカインと戦った事もある。
2人の共通の会話としてはロイドに白羽の矢が立つのは自然な流れだろう。
「いやー恥ずかしいわー。そんな褒め称えてたん?」
「バカか。鈍感クソヤローって話をしてたんだよ」
「……今の俺には刺さるわぁ…」
昨晩まさにその会話をしていたロイドには地味にダメージが入る罵倒。
が、それでもスルーされると思ったカインは目を丸くする。
「お?やっとそこらへんの意識が出てきたか?」
「いやそーじゃねーけど、ちょっと考えてみよーかなとは思っ……た…?」
「あん?…ってぅおっ?!」
並んで話していたロイドが前を見て言葉を詰まらせる様子に、カインも視線を追う。
そこにはいつの間にか会話を中断してこちらをじぃっと見てくる女性陣が。
恐らくは余計な事を言うな、といった視線だろうか。たまらずびびるカイン。
「…………」
「……いや、無言はやめろ」
そのまま何も言わずこちらを見る女性陣に、カインは絞り出すように言う。
「ふふ、カイン、気をつけてね」
「おせぇよ!早く言えよ!」
「び、びびった…」
「はっはっは、ウケる!」
「いやグランてめぇ、他人事だと思って…!」
「………」
笑う帝国組と怒る王国組と、無言の女性陣。
収集のつかない状態だが、ふと発せられた言葉で空気が変わった。
「ん?そーいや、グランは好きなやつとかいねーの?」
「……は?」
「……ふむ、言われてみれば僕もその手の話は聞いた事がないね」
「はっはーん?さてはうまく隠してやがんな?」
ロイドの言葉にブロズとカインがニヤリと笑う。
この流れはまずい、とグランは内心慌ててる。
が、ここで慌てては火に油、と表情に出さないように慎重に口を開く。
「いや、いねぇよ。あんな生活しててそんなん考える暇あると思うか?」
「いや今はのんびり学生してるだろー?」
「そうだな。どうなんだよ?いつも関係ありませんみたいな立ち位置にいやがってよ」
「だって関係ねぇし」
ロイドとカインの口撃にも冷静に対応するグラン。
よし、いける、逃げ切れる!と思った矢先。
「ふむ、この妙に冷静な態度。……これは居るね」
(てめぇぇえええブロズぅぅう!!余計な事をぉお!!)
分析したブロズの言葉に内心叫ぶ。
それを口には出さなかったのは良かったのだが、顔には出ていた。
それに気付いてはっとして振り返ると、それはもうニンマリと笑ったロイドとカインが。
「へぇぇえええええ?」
「ほぉぉおおおおお?」
「……なんだよ?」
「いやー、なんでもー?」
「なぁ?別に何もぉ?」
「だぁぁあああ!なんか腹立つぅうう!!」
ニヤニヤする2人に頭を掻き乱して叫ぶグラン。
すると、ピクリと反応したラピスにロイドが気付く。
(ふーん……ま、上手くいくといいな)
その様子にロイドは小さく微笑む。
だがここでそれを追求するのは無粋だと思い、何も言わずにすぐにラピスから目線を切った。
そして、さらにそのロイドを見ていたカインとブロズは溜息をひとつ。
((なんで他人には鋭いんだこいつ……))
そんな呆れたように内心呟く王族2人を他所に、エミリーやクレアも混じってグランをからかっていた。
「うるせぇぇえ!もういいだろ、話す事があんだろブロズぅ?!」
「あーはいはい、そうだね」
「なんだその雑なリアクション…!」
睨むグランを無視するブロズは、そろそろ可哀想かなと話を変えるべく口を開く。
「実は、旧帝国騎士団長フェレスの目撃情報が入ってきたんだ」
「フェレス?」
そんな奴いたっけ?と首を傾げるロイドに、溜息をつくグラン。
「おいおい、忘れんなよな。お前がぶっ壊した帝城から死体が出てこなった奴だよ。その後も見つからんから行方不明って形にしといだんだけど…」
「それがここ王都フレアに出入りがあるという話を耳にしてね。昨日の王城でも話はしたけど、一応君達にも伝えておこうと思って」
「それはどのような者なのでしょうか?」
エミリーの問いにブロズは顎に手を当てて少し考えるように時間を置く。
「……大柄の茶色の髪と瞳、大剣を使う。身体強化を主に使う接近戦を得意として、スキルを所有している。って事くらいしか僕も知らないかな」
「そうですか……そのスキルはどのような?」
「すまない、分からない。今は亡き父ゴルドと兄ジルバくらいしか知らないと聞いた事がある」
「……そうですか」
エミリーは聞いた話を忘れないよう反芻するように黙り込んだ。
「おそらくじきに王城からも兵士が動くはずだ。そう慌てる必要はない」
「そっか。なら安心かな」
カインの言葉にロイドは笑って言うが、その目は笑ってはいなかった。
フェレス。面識はないが、もし旧帝国軍の復讐として動いているならば狙われるのは革命に関わった人類。
となれば、今王都に居る者の中で言えばロイドと、クレア、グランである。あとは滞在時間は少ないが、時期皇帝となったブロズか。
もしそうであれば、気を抜いて良いはずがない。
帝国の騎士において最強とされたフェレス。
そんな相手が見えない所て動いているのだから。
「……まぁ、何かあれば言え」
「……あれですね、カイン皇太子ってツンデレだよね」
「ん?あー確かになー」
「あぁ?つんでれ…?なんだそれ?てゆうかなんか腹立つなその顔…!」
目だけは鋭いままのロイドにぶっきらぼうに言うカインに、クレアとロイドは口元を押さえながらカインを見てひそひそとーー聞こえるくらいの音量でーー話している。
それに青筋を浮かべるカインをさらっと無視してロイドはブロズへと顔を向ける。
「ま、気をつけるわ」
「うん、まぁ心配はしてないよ」
「ひどいなおい」
「いや、まぁロイドなら大丈夫だろうってのもあるんだけど、もうひとつ理由があってね」
「え?」
微笑むブロズに何故か嫌な予感を覚えるロイド。
しかし、無情にもブロズは次の言葉を悪気もなく発する。
「ウィンディア時期当主にして『神童』フィンク・ウィンディアが一定期間だけど学園の警備に来る予定になってるんだよ」
「「………!!」」
その言葉に、目を瞠って言葉を失うロイドとエミリー。
喜ぶかと思いきやその予想と大きく違う反応に、ブロズはあれっ?と首を傾げたのであった。
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