魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
12 友人再会
「それじゃ、そろそろあの子達を助けてくるわね」
「おー、了解」
そっぽを向いたままエミリーはクレアとラピスが埋もれた人混みへと向かう。
それを見届けて、ロイドは少し考える。
(自由恋愛ねぇ……てかやっぱ貴族って政略結婚とかあるんだな)
正直この世界に転生してから結婚の事など考えもしなかったロイド。
お気楽な性格による所もあるが、何やりウィンディアとしての責務を果たす力を求めるばかりでそこまで考えが回らなかったのが大きい。
が、まさかの学園に来て結婚の話が出てきた。
エイルリア王国においての成人は16歳。
ロイドはもうすぐ13歳になる歳なのでまだ先の話ではあるが、兄フィンクはすでに成人している。
あの兄がどんな結婚相手を選ぶのかと思うと少し楽しみではあるが、しかし周りの生徒達を見ている限りはロイドとてあまり他人事でいる訳にはいかないように思えてくる。
(まぁ、まだいーや。そん時考えよ)
だがやはりというべきか思考をあっさり放棄。
そもそも前世から恋愛に対する執着は弱かったロイドは、この手の話を深く追求する事はなかった。
だが、ロイド自身はそうでもあの3人はどうなのだろうか。
そう考えたロイドは今の現状を踏まえつつ考える。
(考えてみりゃあの自由恋愛万歳なやつらからすれば、俺なんかが狙い目の3人とずっと一緒に居るんだもんな。……そりゃあんな目で見られてもしゃーないか)
今もエミリーが散らしていく人集りの男子生徒から、呪詛さえ込められてそうな視線を叩きつけられている。
どうやら『恥さらし』という事ばかりが嫌われている要因だけではないようだ、とロイドはいっそ納得していた。
(まぁ俺への悪評は目的を達成してから適当に対策をとるとして……あの3人だよなー)
ロイドは人集りが散る事でやっと見えてきたクレアとラピス、そしてエミリーを見つつ顎に手をやる。
(クレアとラピスなんかは一応は平民にあたる訳だし、ここの貴族とかと結婚した方が色々嬉しいんじゃ?……姉さんは家の事もあるし、あとまぁ自分で決めないと気が済まんタイプとは思うけど)
そう思えば、あまり自分がずっと居るのも邪魔になりそうだと思い至る。
クレアとラピスはここが暗黙の了解として、社交界を兼ねているという話を知らないだろうし、ちゃんと説明して別行動をとる方が良いかも知れない。
ロイドの目的はこの学園にある魔術遺跡の探索で、3人も手伝ってくれると一緒に入学してくれた。
だが、本来は自分1人でやるつもりだった事だし、3人が別の目的を見つけたとなれば無理に手伝ってもらうのも申し訳ない。
(とりあえずそこらへんは後で話しとかんといかんかな……っ?!)
ロイドはそう結論付け、やっと合流した様子の女性陣達を見ていると。
不意に気配を感じてばっと振り返りつつ短剣を振るう。
その短剣は正確にロイドの後方から飛来した石を叩き落としていた。
「おー!さすがロイド!相変わらずすげぇな!」
「なんだいきなり……ってグラン?!」
その犯人に目を向けると、嬉しそうに手を振るグランが居た。
予想外の人物にロイドは目を瞠る。
「あれ?なんで居んの?」
「おいおい、つれねぇ事言うなよ!俺もここの生徒になったんだぜ!」
「マジ?え?でもディンバーの人でも入れるん?」
「あれ?知らねぇのかよ!?今年からエイルリアとの親交って事で留学枠が出来たんだよ!んで、それの第一号が俺ってワケだ!」
グラン。彼はエイルリア王国の隣国ディンバー帝国の人間である。
ロイドがディンバー帝国でいざこざがあった際の仲間であり、ロイドと同い年という若さにして帝国の革命軍の一角を担った実力者だ。
「へぇ、マジか!楽しくなりそーだな!」
「おうよ!あれからすんげぇ鍛えたからな!もうロイドにゃ負けねぇぜ!」
「ははっ、言うたなー?んじゃ今度勝負するか!俺も結構鍛えたつもりだしなー」
今では良い友人であるグランの入学に、ロイドは珍しくテンションが上がる。
笑顔をこぼして笑い合う2人は年相応の少年にしか見えなかった。
「丁度ここって実践戦闘とかいう講義のスペースだろ!いっちょやるか?!」
「いいねぇ、ここなら思い切りやってもいーんだろーしな!」
「ちょっ!ダメですって!この中庭壊す気ですか?!」
だが、その実力は年不相応だ。
そんな彼らが軽いノリでガチな勝負でもしようものなら、周囲への被害は笑えないものになる。
それを理解しているクレアが慌てて止めに入る。
「お!クレアだ!久しぶりだな!」
「お久しぶりです。久々の再会からとばしてくれますねグランは…」
ディンバー帝国での件にはクレアも居た為、グランとクレアも友人である。
もっとも、エミリーとラピスは居なかった為、
「ちょっとロイド、紹介しなさい?」
「ん?あーすまん、こいつはグラン。ディンバー帝国の元革命軍幹部」
「よろしくな!今じゃ帝国騎士団の副団長をやってるモンだ!」
エミリーにグランの紹介を催促される。
ロイドは簡単な紹介をすると、グランは気さくな笑顔を浮かべて自己紹介をした。
「よろしく。私はエミリー・ウィンディア。ロイドの姉にあたるわ」
「よ、よろしくお願いします!ラピス・ジュエラです!」
「ちなみにラピスは俺らと同い年な」
それに応じるようにエミリーとラピスも自己紹介をする。
それからはエミリーやラピスがグランにディンバー帝国でのいざこざーーロイド含む革命軍で革命を起こした話などを聞いたりとしばし話が盛り上がる。
グランの人当たりの良さーー人懐っこさとも言えるだろう性格もあり、あっという間に打ち解けていた。
「あ、そーいやロイド。実はあいつも来るぜ?」
「あいつ?」
「ブロズだよ!」
「はぁ?!え、マジで?」
「ブロズ…?え?ブロズ皇帝?」
その会話の中でグランが告げた言葉にエミリーが目を瞠って確認すると、グランはおうよ!と元気よく頷く。
そしてこれまた珍しく驚きで言葉が出ないロイドを見て、悪戯が成功した悪ガキのような表情を浮かべていた。
「ははっ!驚いたろ!本当はブロズが来た時にいきなり登場させようと思ったんだけどよ!さすがにそれまでには情報が回りそうだから先に言っちまったぜ!」
「……いやー、マジでびっくりだわ。え、あいつ何しにくんの?」
「……それよりグランが自国の皇帝を呼び捨てにしてるのはいいのかしら…」
「……ロイドくんもあいつ呼ばわりだよぉ…」
「はは…まぁ、公式の場以外はずっとこんな感じだったんで…」
ケラケラと笑うグランと驚きつつも笑顔なロイドに、エミリーとラピスが頭を押さえて呟いていた。
ブロズとロイド、グランの仲の良さを知ってるクレアは、苦笑いを浮かべつつエミリー達を宥める。
「大枠は俺が来た件と一緒だな。親交を深める上で一度エイルリア国王に挨拶に来るんだ!帝国も一息ついたしな!それでついでに寄る予定らしいぜ」
「おいおいついでかよ。まぁいいや、もし時間あるなら飯でも食おーで」
「おう、いいな!時間はどうにか作らせようぜ!」
「そーだな。最近ディンバーがどーなっとかも気になるし」
「あん?それなら俺が話せるぜ?」
「いやぁ、グランじゃ不安というか…」
「ってひでぇな!」
ケラケラと笑いながら盛り上がる男2人のあまりに皇帝に対する無礼さに、エミリー達は深い溜息をつくのであった。
「おー、了解」
そっぽを向いたままエミリーはクレアとラピスが埋もれた人混みへと向かう。
それを見届けて、ロイドは少し考える。
(自由恋愛ねぇ……てかやっぱ貴族って政略結婚とかあるんだな)
正直この世界に転生してから結婚の事など考えもしなかったロイド。
お気楽な性格による所もあるが、何やりウィンディアとしての責務を果たす力を求めるばかりでそこまで考えが回らなかったのが大きい。
が、まさかの学園に来て結婚の話が出てきた。
エイルリア王国においての成人は16歳。
ロイドはもうすぐ13歳になる歳なのでまだ先の話ではあるが、兄フィンクはすでに成人している。
あの兄がどんな結婚相手を選ぶのかと思うと少し楽しみではあるが、しかし周りの生徒達を見ている限りはロイドとてあまり他人事でいる訳にはいかないように思えてくる。
(まぁ、まだいーや。そん時考えよ)
だがやはりというべきか思考をあっさり放棄。
そもそも前世から恋愛に対する執着は弱かったロイドは、この手の話を深く追求する事はなかった。
だが、ロイド自身はそうでもあの3人はどうなのだろうか。
そう考えたロイドは今の現状を踏まえつつ考える。
(考えてみりゃあの自由恋愛万歳なやつらからすれば、俺なんかが狙い目の3人とずっと一緒に居るんだもんな。……そりゃあんな目で見られてもしゃーないか)
今もエミリーが散らしていく人集りの男子生徒から、呪詛さえ込められてそうな視線を叩きつけられている。
どうやら『恥さらし』という事ばかりが嫌われている要因だけではないようだ、とロイドはいっそ納得していた。
(まぁ俺への悪評は目的を達成してから適当に対策をとるとして……あの3人だよなー)
ロイドは人集りが散る事でやっと見えてきたクレアとラピス、そしてエミリーを見つつ顎に手をやる。
(クレアとラピスなんかは一応は平民にあたる訳だし、ここの貴族とかと結婚した方が色々嬉しいんじゃ?……姉さんは家の事もあるし、あとまぁ自分で決めないと気が済まんタイプとは思うけど)
そう思えば、あまり自分がずっと居るのも邪魔になりそうだと思い至る。
クレアとラピスはここが暗黙の了解として、社交界を兼ねているという話を知らないだろうし、ちゃんと説明して別行動をとる方が良いかも知れない。
ロイドの目的はこの学園にある魔術遺跡の探索で、3人も手伝ってくれると一緒に入学してくれた。
だが、本来は自分1人でやるつもりだった事だし、3人が別の目的を見つけたとなれば無理に手伝ってもらうのも申し訳ない。
(とりあえずそこらへんは後で話しとかんといかんかな……っ?!)
ロイドはそう結論付け、やっと合流した様子の女性陣達を見ていると。
不意に気配を感じてばっと振り返りつつ短剣を振るう。
その短剣は正確にロイドの後方から飛来した石を叩き落としていた。
「おー!さすがロイド!相変わらずすげぇな!」
「なんだいきなり……ってグラン?!」
その犯人に目を向けると、嬉しそうに手を振るグランが居た。
予想外の人物にロイドは目を瞠る。
「あれ?なんで居んの?」
「おいおい、つれねぇ事言うなよ!俺もここの生徒になったんだぜ!」
「マジ?え?でもディンバーの人でも入れるん?」
「あれ?知らねぇのかよ!?今年からエイルリアとの親交って事で留学枠が出来たんだよ!んで、それの第一号が俺ってワケだ!」
グラン。彼はエイルリア王国の隣国ディンバー帝国の人間である。
ロイドがディンバー帝国でいざこざがあった際の仲間であり、ロイドと同い年という若さにして帝国の革命軍の一角を担った実力者だ。
「へぇ、マジか!楽しくなりそーだな!」
「おうよ!あれからすんげぇ鍛えたからな!もうロイドにゃ負けねぇぜ!」
「ははっ、言うたなー?んじゃ今度勝負するか!俺も結構鍛えたつもりだしなー」
今では良い友人であるグランの入学に、ロイドは珍しくテンションが上がる。
笑顔をこぼして笑い合う2人は年相応の少年にしか見えなかった。
「丁度ここって実践戦闘とかいう講義のスペースだろ!いっちょやるか?!」
「いいねぇ、ここなら思い切りやってもいーんだろーしな!」
「ちょっ!ダメですって!この中庭壊す気ですか?!」
だが、その実力は年不相応だ。
そんな彼らが軽いノリでガチな勝負でもしようものなら、周囲への被害は笑えないものになる。
それを理解しているクレアが慌てて止めに入る。
「お!クレアだ!久しぶりだな!」
「お久しぶりです。久々の再会からとばしてくれますねグランは…」
ディンバー帝国での件にはクレアも居た為、グランとクレアも友人である。
もっとも、エミリーとラピスは居なかった為、
「ちょっとロイド、紹介しなさい?」
「ん?あーすまん、こいつはグラン。ディンバー帝国の元革命軍幹部」
「よろしくな!今じゃ帝国騎士団の副団長をやってるモンだ!」
エミリーにグランの紹介を催促される。
ロイドは簡単な紹介をすると、グランは気さくな笑顔を浮かべて自己紹介をした。
「よろしく。私はエミリー・ウィンディア。ロイドの姉にあたるわ」
「よ、よろしくお願いします!ラピス・ジュエラです!」
「ちなみにラピスは俺らと同い年な」
それに応じるようにエミリーとラピスも自己紹介をする。
それからはエミリーやラピスがグランにディンバー帝国でのいざこざーーロイド含む革命軍で革命を起こした話などを聞いたりとしばし話が盛り上がる。
グランの人当たりの良さーー人懐っこさとも言えるだろう性格もあり、あっという間に打ち解けていた。
「あ、そーいやロイド。実はあいつも来るぜ?」
「あいつ?」
「ブロズだよ!」
「はぁ?!え、マジで?」
「ブロズ…?え?ブロズ皇帝?」
その会話の中でグランが告げた言葉にエミリーが目を瞠って確認すると、グランはおうよ!と元気よく頷く。
そしてこれまた珍しく驚きで言葉が出ないロイドを見て、悪戯が成功した悪ガキのような表情を浮かべていた。
「ははっ!驚いたろ!本当はブロズが来た時にいきなり登場させようと思ったんだけどよ!さすがにそれまでには情報が回りそうだから先に言っちまったぜ!」
「……いやー、マジでびっくりだわ。え、あいつ何しにくんの?」
「……それよりグランが自国の皇帝を呼び捨てにしてるのはいいのかしら…」
「……ロイドくんもあいつ呼ばわりだよぉ…」
「はは…まぁ、公式の場以外はずっとこんな感じだったんで…」
ケラケラと笑うグランと驚きつつも笑顔なロイドに、エミリーとラピスが頭を押さえて呟いていた。
ブロズとロイド、グランの仲の良さを知ってるクレアは、苦笑いを浮かべつつエミリー達を宥める。
「大枠は俺が来た件と一緒だな。親交を深める上で一度エイルリア国王に挨拶に来るんだ!帝国も一息ついたしな!それでついでに寄る予定らしいぜ」
「おいおいついでかよ。まぁいいや、もし時間あるなら飯でも食おーで」
「おう、いいな!時間はどうにか作らせようぜ!」
「そーだな。最近ディンバーがどーなっとかも気になるし」
「あん?それなら俺が話せるぜ?」
「いやぁ、グランじゃ不安というか…」
「ってひでぇな!」
ケラケラと笑いながら盛り上がる男2人のあまりに皇帝に対する無礼さに、エミリー達は深い溜息をつくのであった。
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