魔法が使えないけど古代魔術で這い上がる
90 鬼ごっこ(高鬼)
何か得体の知れないものが蠢くような。とてつもない何かが迫りくるかのような。
そんな心の底にこべりつくような恐怖を感じさせる鼓動。
その音はどうやら兵士達にも聞こえていたようだ。
まるで金縛りにあったかのように等しく体を硬直させる彼ら。
その彼らをすり抜けるように駆け抜ける一陣の風。
ロイド、グラン、シエルだ。
ロイドはすでに身体強化魔術を発動しており、グランとシエルも身体強化を施している。
高い魔力の保有者である彼らは兵士が我に返るよりも先に城壁と帝城の間にある敷地を駆け抜けていく。
「もうっ!もっと隠密行動で動きたかったのにっ!」
珍しく口調を崩して叫ぶシエル。
あまりに不穏な気配があったとは言え、隠密行動をとる為に3人という少人数に絞ったにも関わらず強行突破をしている現状に嘆いていた。
「リーダー、気持ちは分かるけどなんか急いだ方が良い気がするぜ?」
これまた珍しく的確な意見を言うグラン。
普段からどこか抜けた所があり、年相応とも言える彼だが、だからこそだろうか。
純粋に感じた危険に対して的確な言動をしていた。
「すんません、でも今は急がせてもらいます」
そしてロイドも珍しく緊迫した表情をしていた。
涼の頃からだが、あまり負の感情を表情に出さない彼。
しかし今は眉間に皺を寄せて鋭い目付きで前を見据えていた。
「分かってるわよ。いい?グランは帝城に入ったら土魔法で入り口を塞いで。その間に私とロイドくんでグランを守るわ」
「分かった!」
「了解です」
頷く彼らを見てシエルは言葉を続ける。
「そしてその後は第一王子の部屋を目指すわ。リーダーによれば最上階に部屋があるらしいから、とにかく上を目指す。途中の戦闘は極力避けるか切り抜けるようにして最速で向かうわよ。いいわね。」
「分かった!登ればいいんだな!」
「了解です。足を止めずに斬ればいいんですね」
なんとも微妙に理解したか不安になる返事だが、もう帝城の入り口も近い。
シエルはどうにか不安を飲み込む。
「大丈夫よね…?まぁいいわ、いくわよ」
シエルの作戦通り帝城の大きく開いた扉から入ってすぐ。
広いスペースに豪華絢爛な調度品などが端々にある部屋に。
「え…?!」
「やばくねぇかこれ?!」
まるで待ち構えていたかのように大量の兵士が構えていた。
「……!」
「来たぞ!皆の者、そいつらを捕えろ!」
「「おおぉ!!」」
目を瞠るロイドに兵士が一斉に襲い掛かる。
とてもではないが扉を閉めて塞ぐなんて真似が出来る状況ではない。
そう判断したロイドはすぐに口を開く。
「2人とも!外に出るぞ!」
「えっ?」
「分かった!」
その声にグランは即座に頷く。
素直さ故の柔軟性だろう。
対してシエルは一瞬戸惑うも、素早く切り返して来た道を戻る2人を追うように駆け出した。
「でも、外にも兵士達が!」
「中で袋叩きされるよりゃマシだ!」
シエルの言葉にロイドは余裕がない為か敬語を忘れて叩きつけるように返す。
すぐに外の敷地に出ると、追いかけてきていた兵士達も迫ってきていた。
「出てきたぞ!あいつらだ!」
「どけぇえ!」
叫ぶ兵士の声を掻き消すように吠えるロイド。
発動させた風魔術をもって爆風を生み出し、兵士達を押し戻す。
「うおぁっ!?」
「ぐぁあっ!」
魔力量にものを言わせた暴風は兵士達を吹き飛ばしていく。
しかしどんどん集まってくる兵士に加え、城内に居た兵士達も集まってきていた。
このままではジリ貧だと判断したロイドはグランに叫ぶ。
「グラン、俺を上まで押し上げてくれ!」
「あぁ?!上って……なるほど了解ぃ!」
一瞬訳が分からないといった反応を見せるも、すぐに気付いて頷くグラン。
シエルが何をするのかと聞く前に即座に行動に移す。
「『上へ参りまーす』!」
技名と呼ぶにはおこがましい、ネーミングセンスの無さを大声で叫びながら魔法を発動させるグラン。
するとロイドの足元の土が一気に跳ね上がるように盛り上がっていく。
「あざーす!シエルさん、あとは作戦Cで頼んます!」
ロイドはそれに乗って上昇していきながらシエルへと叫ぶ。
ちなみに作戦名はロイドが適当につけたものだ。
こちらはひねりも何もないなんとも適当なネーミングである。
「もうっ!あなた達は…!分かったわ!無理はしないでね!」
シエルは好き勝手する2人に文句を言いかけるも、ぐっと堪えて了承した。 それを聞いたロイドははーいと良い返事。シエルは力の抜ける返事に頭を抑える。
グランの土魔法により最上階近くまで伸びた地面は、しかしあと少し届かない。
だがここまで来れば十分すぎた。
「待ってろよ如月!」
ロイドは風魔術を手頃な窓に叩きつけて入り口を作る。
そして風を纏う事で高くジャンプして城内へと飛び込んでいった。
そんな心の底にこべりつくような恐怖を感じさせる鼓動。
その音はどうやら兵士達にも聞こえていたようだ。
まるで金縛りにあったかのように等しく体を硬直させる彼ら。
その彼らをすり抜けるように駆け抜ける一陣の風。
ロイド、グラン、シエルだ。
ロイドはすでに身体強化魔術を発動しており、グランとシエルも身体強化を施している。
高い魔力の保有者である彼らは兵士が我に返るよりも先に城壁と帝城の間にある敷地を駆け抜けていく。
「もうっ!もっと隠密行動で動きたかったのにっ!」
珍しく口調を崩して叫ぶシエル。
あまりに不穏な気配があったとは言え、隠密行動をとる為に3人という少人数に絞ったにも関わらず強行突破をしている現状に嘆いていた。
「リーダー、気持ちは分かるけどなんか急いだ方が良い気がするぜ?」
これまた珍しく的確な意見を言うグラン。
普段からどこか抜けた所があり、年相応とも言える彼だが、だからこそだろうか。
純粋に感じた危険に対して的確な言動をしていた。
「すんません、でも今は急がせてもらいます」
そしてロイドも珍しく緊迫した表情をしていた。
涼の頃からだが、あまり負の感情を表情に出さない彼。
しかし今は眉間に皺を寄せて鋭い目付きで前を見据えていた。
「分かってるわよ。いい?グランは帝城に入ったら土魔法で入り口を塞いで。その間に私とロイドくんでグランを守るわ」
「分かった!」
「了解です」
頷く彼らを見てシエルは言葉を続ける。
「そしてその後は第一王子の部屋を目指すわ。リーダーによれば最上階に部屋があるらしいから、とにかく上を目指す。途中の戦闘は極力避けるか切り抜けるようにして最速で向かうわよ。いいわね。」
「分かった!登ればいいんだな!」
「了解です。足を止めずに斬ればいいんですね」
なんとも微妙に理解したか不安になる返事だが、もう帝城の入り口も近い。
シエルはどうにか不安を飲み込む。
「大丈夫よね…?まぁいいわ、いくわよ」
シエルの作戦通り帝城の大きく開いた扉から入ってすぐ。
広いスペースに豪華絢爛な調度品などが端々にある部屋に。
「え…?!」
「やばくねぇかこれ?!」
まるで待ち構えていたかのように大量の兵士が構えていた。
「……!」
「来たぞ!皆の者、そいつらを捕えろ!」
「「おおぉ!!」」
目を瞠るロイドに兵士が一斉に襲い掛かる。
とてもではないが扉を閉めて塞ぐなんて真似が出来る状況ではない。
そう判断したロイドはすぐに口を開く。
「2人とも!外に出るぞ!」
「えっ?」
「分かった!」
その声にグランは即座に頷く。
素直さ故の柔軟性だろう。
対してシエルは一瞬戸惑うも、素早く切り返して来た道を戻る2人を追うように駆け出した。
「でも、外にも兵士達が!」
「中で袋叩きされるよりゃマシだ!」
シエルの言葉にロイドは余裕がない為か敬語を忘れて叩きつけるように返す。
すぐに外の敷地に出ると、追いかけてきていた兵士達も迫ってきていた。
「出てきたぞ!あいつらだ!」
「どけぇえ!」
叫ぶ兵士の声を掻き消すように吠えるロイド。
発動させた風魔術をもって爆風を生み出し、兵士達を押し戻す。
「うおぁっ!?」
「ぐぁあっ!」
魔力量にものを言わせた暴風は兵士達を吹き飛ばしていく。
しかしどんどん集まってくる兵士に加え、城内に居た兵士達も集まってきていた。
このままではジリ貧だと判断したロイドはグランに叫ぶ。
「グラン、俺を上まで押し上げてくれ!」
「あぁ?!上って……なるほど了解ぃ!」
一瞬訳が分からないといった反応を見せるも、すぐに気付いて頷くグラン。
シエルが何をするのかと聞く前に即座に行動に移す。
「『上へ参りまーす』!」
技名と呼ぶにはおこがましい、ネーミングセンスの無さを大声で叫びながら魔法を発動させるグラン。
するとロイドの足元の土が一気に跳ね上がるように盛り上がっていく。
「あざーす!シエルさん、あとは作戦Cで頼んます!」
ロイドはそれに乗って上昇していきながらシエルへと叫ぶ。
ちなみに作戦名はロイドが適当につけたものだ。
こちらはひねりも何もないなんとも適当なネーミングである。
「もうっ!あなた達は…!分かったわ!無理はしないでね!」
シエルは好き勝手する2人に文句を言いかけるも、ぐっと堪えて了承した。 それを聞いたロイドははーいと良い返事。シエルは力の抜ける返事に頭を抑える。
グランの土魔法により最上階近くまで伸びた地面は、しかしあと少し届かない。
だがここまで来れば十分すぎた。
「待ってろよ如月!」
ロイドは風魔術を手頃な窓に叩きつけて入り口を作る。
そして風を纏う事で高くジャンプして城内へと飛び込んでいった。
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